代表派遣会議出席報告
会議概要
- 名 称
(和文)国際地理学連合(IGU)役員会及び第35回国際地理学会議(IGC)
(英文)35th International Geographical Congress (IGC) Dublin 2024 - 会 期
2024年8月22日から2024年8月30日まで(9日間) - 会議概要
- 会議の形式:総会、役員会、セッション、委員会
- 会議の開催周期:
国際地理学会議(IGC) は4年に1回、国際地理学会議(RC)はIGCの中間年(即ち4年に1回)。
従ってIGC(International Geographical Congress)とRC(IGU Regional Conference)は2年毎に交互に開催。 - 会議開催地、会議場:
会議場:アイルランド・ダブリン市、ダブリンシティ大学(DCU)
IGU役委員会:ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(UCD) - 会議開催母体機関:国際地理学連合 (International Geographical Union, IGU)
- 会議開催主催機関及びその性格:
第35回国際地理学会議 (IGC) 組織委員会(アイルランドの地理学コミュニティが組織したもの)
- 参加状況:
参加国名・数:英国、中国、インド、米国、ドイツ、アイルランド、日本ほか80か国。
参加者数:2,654人(うち日本から約60名)
日本人参加者:
氷見山幸夫(筆者:北海道教育大学名誉教授、日本学術会議より派遣)
鈴木康弘(名古屋大学教授)
春山成子(三重大学名誉教授)
小口高(東京大学空間情報科学研究所教授)
井田仁康(筑波大学名誉教授) - 次回会議予定(会期、開催地、主なテーマ):
会議名:IGU国際地理学会議(RC) 2026
会期・開催地:2026年8月17日~21日、トルコ・イスタンブール
準備組織:国際地理学連合 (IGU) 国際地理学会議(RC)イスタンブール2026組織委員会
主なテーマ:Exploring the Earth, Connecting Worlds(地球を探究し、多様な世界を繋ごう)
- 会議の学術的内容
- 日程と主な議題:
2024年第3回目のIGU役員会が8月22日~23日、ダブリン市のユニバーシティカレッジダブリン で開催された。主な議題は以下のとおり。
・ 2022年~2024年会計報告と各国分担金の基準価額の引き上げ
・ 2022年~2024年会計報告の内容を確認し、また財務小委員会からの基準価額引き上げ提案について審議し、総会に提案することとした。
・ 総会で実施する役員選挙(会長1名、副会長4名)についての最終確認と準備
・ 総会での会長報告と事務局長報告の最終確認と準備
・ IGUの主要イベントである2025年4月のカイロテーマ会議、2025年10月のサンタマルタ テーマ会議、2026年8月のイスタンブール国際地理学会議(RC)、2028年7月のメルボルン国際地理学会議 (IGC) の進捗状況の確認
・ ISC(国際学術会議)、EHC(地球人類連合)、GeoUnions(地球科学国際ユニオン会議)、CIPSH(哲学人文学国際評議会)、IDSSD(持続可能な開発のための国際科学の10年)、DRR(災害リスク軽減委員会)、UN-GGIM(国連グローバル地理空間情報管理専門家委員会)、CODATA(科学技術データ委員会)、WDS(世界データシステム)、UNESCO Geodiversity Day(地の多様性の日)等との連携、協働の推進。
また、第35回国際地理学会議(IGC)は2024年8月24日~30日、アイルランド・ダブリン市のダブリンシティ大学を主会場として開催された。会議のメインテーマは“Celebrating a World of Difference”(多様性に満ちた世界を祝す)。80余りの国々から約2,650人の研究者が参加し、6日半の日程で、開会式、総会、記念講演、ポスター研究発表、口頭研究発表、コミッション(研究委員会)会合、閉会式などが実施された。自然科学から社会人文科学の広い領域に及ぶ地理学のほとんどすべての分野をカバーする多くのセッションが、30の会場を使って同時進行で実施された。 - 提出論文:
記念講演の他、400余りのポスター発表、2,000件余りの口頭発表が行われた。日本からは約60名が参加し研究発表をした。従来の実績と照らせば100名前後の日本からの参加が期待された会議であるが、日本における教育研究環境の悪化や円安などが影響したように思われる。
- 学術的内容に関する事項:
学際的かつ総合的な地理学の特性から、IGUはFuture Earth、SDGs、ESD(持続可能な開発のための教育)などの地球環境研究や災害・防災研究および関連する教育の課題に力を入れており、今回の会議もそれを強く反映していた。会議で取り上げられた主なテーマは、地理データ分析、エネルギーの地理、都市・生活、運輸・モビリティ、低炭素経済、水・海域計画、健康・福祉、気候再生適応緩和、ジオハザード、リスク・レジリエンス、移住、生物多様性、第四紀環境、政治地理、観光地理、創造性・コミュニティ、ジェンダー、歴史遺産・文化、地理教育などである。
今後の国内的な重要課題は、IGU及びISC(国際学術会議)との連携を一層進め、日本からの発信力を強化することである。 - その他の特記事項:
・IGUには4種の賞があるが、そのうち2つの賞で次の通り日本から受賞者を出すことができた。これ は日本の地理学コミュニティの層の厚さと日本学術会議IGU分科会を中心とした活動の成果である。
海津正倫(名古屋大学名誉教授):IGU Distinguished Practice Award(地理学以外の分野との活動や社会貢献で傑出した実績)
春山成子(三重大学名誉教授):IGU Lauréat d'Honneur(IGUと世界の地理学の発展に多大の貢献)(写真添付)・IGUの次期(2024-2028)役員候補者およびSCメンバー構成案を提案した。
- 日程と主な議題:
所見
・第35回国際地理学会議(IGC)を2024年8月にダブリンで開催することは、2016年8月に北京で開かれた第33回国際地理学会議(IGC)総会で決定された。それを踏まえIGUは2019年5月にアイルランドのダブリンとゴールウェイで役員会を開催し、IGCの会場予定地と施設の視察、現地の地理学コミュニティとの交流・打合せを行った。当時IGU会長(第25代)だった筆者はそれらを統括、第35回国際地理学会議(IGC)組織委員会の会議準備活動はそれを機に本格化した。その後、コロナ禍やウクライナ情勢や中東情勢などの緊迫化があったが、大規模かつ充実した会議を成功裏に開催することができ安堵している。この会議を組織した国際地理学連合アイルランド国内委員会に大変感謝している。これはまた、IGUの息の長い地道な努力の成果でもあり、これまで12年間IGUの副会長、会長を務めてきたものとして喜んでいる。
・この国際地理学会議(IGC)の終了をもって筆者は、副会長(2010-2014、2014-2016)、会長(2016-20)、直前会長(2020-24)と14年間にわたって務めたIGUの役員職を終了した。その間の業績については、総会における会長報告の中でビデオ録画と共に紹介された。またIGUから記念品(写真添付)が贈呈された。筆者は今後もIGU前会長の一人としてIGUを支援していきたい。
・科学の世界で日本が継続的に然るべき地位を占めていくことは、日本の発展と国益のみならず、世界の科学の健全な発展にとって極めて重要である。日本政府としてもその認識を広く共有し、支援を一層強化していただくことを願っている。
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IGUから贈呈いただいた記念品 |
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IGU Lauréat d'Honneurを受賞した春山成子先生 |