代表派遣会議出席報告
会議概要
- 名 称
(和文)国際鉱物学連合(IMA)ビジネス会合及びヨーロッパ鉱物会議
(英文)International Mineralogical Association Business Meeting・European Mineralogical Conference (EMC) - 会 期
2024年8月18日から2024年8月23日まで(6日間) - 会議概要
- 会議の形式:総会、ハイブリッド
- 会議の開催周期:4年に1回 (EMC)、2年に1回(IMAビジネス会合)
- 会議開催地、会議場:アイルランド国・ダブリン市、トリニティカレッジ
- 会議開催母体機関:国際鉱物学連合(IMA)
- 会議開催主催機関及びその性格:イギリス・アイルランド鉱物科学会および国際鉱物学連合/学術研究機関
- 参加状況(参加国名・数、参加者数、日本人参加者の氏名・職名・派遣機関)
参加国名:アメリカ,カナダ,イギリス,ドイツ,フランス,ベルギー,スペイン,ポルトガル,スイス,オランダ,イタリア,デンマーク,オーストリア,チェコ共和国,ポーランド,ルーマニア,ノルウェー,スウェーデン,ロシア,イラン,エジプト,ボツワナ,南アフリカ,インド,日本,中国,韓国,タイ,シンガポール,インドネシア,オーストラリア,ニュージーランド,ブラジル,アルゼンチン他。
参加国数:36か国
参加者数:約600名
日本人参加者:3名
土屋 旬 教授・愛媛大学(日本学術会議)
大谷 栄治 名誉教授・東北大学
大藤 弘明 教授・東北大学 - 次回会議予定(会期、開催地、主なテーマ):
会期 :2026年8月下旬の5日間
開催地 :中華人民共和国 南京市
準備組織 :(主催機関)2026年国際鉱物学連合会議(IMA 2026)組織委員会
主なテーマ: 鉱物記載,鉱物進化,環境鉱物学、カーボンニュートラル、地球深部鉱物学など
- 会議の学術的内容
- 日程と主な議題:
ヨーロッパ鉱物会議(EMC2024)は8月18日から23日にかけて38のセッションにて学術発表が行われた。主なテーマは、鉱物の解析手法開発、応用鉱物学、生体鉱物学、マントル鉱物学、地球化学、結晶学、惑星鉱物学、鉱物学教育とアウトリーチに関するものであった。
8月19日には、ドイツ・バイロイト大学のMcCammon教授が地球深部の酸化状態に関する研究のレビューと実験技術革新について基調講演を行った。その後のセッションでは、Hazen教授らによる最近注目されているデータ科学と鉱物進化学に関連した一連の発表が行われた。
8月20日には、イタリア・フィレンツェ大学のBindi教授による準結晶発見の歴史と最新研究成果に関する基調講演があった。8月21日は会議主催者による北アイルランドの柱状節理や堆積岩のフィールド巡検が行われた。8月22日はIMAメダル受賞者のDove教授が炭酸塩鉱物に関する基調講演を行った。最終日である23日も多くのセッションが行われ、特に地球深部の揮発性元素に関するセッションでは、鉱物中の不純物水素に関する物理化学的性質について活発な議論が行われた。
IMAビジネス会合については、8月19日の第1回ビジネス会合では、2022年リヨン総会ビジネス会合の議事録確認、IMA会長、秘書、会計、広報担当幹事からの業務報告があった。また次回2026年に南京で行われるIMA総会の準備状況や、次々回のIMA総会の候補地選定状況も報告された。第2回ビジネス会合で行われる評議員投票についての説明、IMA新ウェブサイトの紹介も行われた。
8月22日夕方には第2回IMAビジネス会合が行われ、議事録の確認、評議員候補者の紹介、IMA会計監査の報告があった。評議員投票とIMA規約および細則の修正に関する投票も実施された。評議員投票はビジネス会合開始30時間前までは立候補を受け付ける決まりだが、新たな申し出はなく、事前に発表された候補者に対する信任投票が行われた。日本の持ち票4票は土屋が代理投票し、結果として候補者全員が信任された。
また、各IMA各コミッションのビジネス会合が8月20日に行われ、土屋が副委員長を務めるIMA鉱物物理委員会(CPM)では、10月21日にオンライン会合を行うこと、さらにその議題について話し合った。特に当委員会のサブコミッションを組織し、活動の分業化を図ること、またダイバーシティの観点から女性や南米・アフリカ諸国からの代表を受け入れる必要性について話し合われた。 - 提出論文:
EMC2024は欧州中心の学術会議で、日本人の現地参加者は3名のみであったが、各自が発表(口頭3件、ポスター1件)を行った。土屋はコンビーナーとして参加した鉱物物理の技術革新に関するセッションで座長を務め、大谷栄治氏による100万気圧条件下における金属鉄の非弾性X線散乱法による音波測定の発表が行われた。午後には同セッションのポスター発表があり、日本人1名がオンラインでポスター発表を行った。日本人以外の参加者により、基調講演は4名、口頭発表は292件、ポスター発表は75件行われた。会議自体は対面とオンラインのハイブリッド形式をとっていたが、オンラインでの口頭発表は10件程度で、コロナ禍以前の状態にほぼ戻っているという印象を受けた。
- 学術的内容に関する事項:
データ科学と鉱物進化学に関連したセッションの数および発表数が多いことが印象的だった。また、揮発性元素に関連するセッション数や参加者数も多く、活発な議論が行われていた。鉱物の物理化学的性質の測定・解析技術の向上により、その結果を用いた環境科学や地球物理学的現象への解釈など幅広い研究が行われていると感じた。
- 日程と主な議題:
所見
IMA関係ではビジネス会合前にIMA会長 Schertl教授と暫定秘書の大藤弘明氏が事前にビジネス会合の議事次第の確認を念入りに行い、円滑な運営を実現した。第1回ビジネス会合では、土屋がIMA会計監査任命され、第2回ビジネス会合で監査結果の報告を行った。第2回ビジネス会合で行われた評議員信任投票により、大藤弘明氏が秘書として正式に信任された。今回の投票を経て、2024年(本会議以降)から2026年のIMA執行部は大谷栄治氏が会長、大藤弘明氏が秘書となった。以上の様に、IMAの組織運営において日本人が重要な役割と貢献を果たしている。