代表派遣会議出席報告
会議概要
1 名 称 カブリ賞授賞式等(The Kavli Prize Week 2012)
2 会 期 2012年9月2日(日)~6日(木)
3 会議出席者名 春日文子(日本学術会議副会長)
4 会議開催地 ノルウェー(オスロ)
5 会議内容
(1)カヴリ賞について
カヴリ賞(The Kavli Prize)は、天体物理学、ナノ科学、神経科学の3分野における優れた科学研究に対して贈られる国際科学賞であり、ノルウェー系米国人フレッド・カヴリの提唱により、カヴリ財団とノルウェー教育研究省、およびノルウェー科学人文アカデミーの共同事業として設立された。科学者個人の業績を讃えると同時に、人類の未来のために重要な研究の成果を正しく評価することを目標としている。一方で、研究者間の国際協力を推進するとともに、研究の大切さを広く訴えることを目指している。同賞の授与は2008年から開始され、隔年で行われる。第1回の受賞者の内、ナノ科学部門で飯島澄男名城大学教授(日本学術会議 第20期~21期連携会員)が日本人受賞者となった。受賞賞金は各部門に100万米ドルである。第3回目となる本年は、2010年の第2回目に引き続き”The Kalvi Prize Week 2012”という、賞の対象部門に関連するシンポジウム、科学フォーラム、受賞式、受賞者による記念講演会を含める一連のイベントが行われた。
(2)2012カヴリ賞受賞者
《天文物理学》
受賞者(3名)
・David C. Jewitt, University of California, USA
・Jane X. Luu, Massachusetts Institute of Technology, Lincoln Laboratory, USA
・Michael E. Brown, California Institute of Technology, USA
受賞理由:「カイパーベルトとカイパーベルト天体の発見とその性質の解明による我々の惑星系の理解の発展」
《ナノ科学》
受賞者(1名)
・Mildred S. Dresselhaus, Massachusetts Institute of Technology, USA
受賞理由:「フォノン、フォノン-電子相互作用、ナノ構造での熱伝導の研究における先駆的な役割を果たしたこと」
《神経科学》
受賞者(3名)
・Cornelia Isabella Bargmann, Rockefeller University, USA
・Winfried Denk, Max Planck Institute for Medical Research, Germany
・Ann M. Graybiel, Massachusetts Institute of Technology, USA
受賞理由:「認知と行動における基本的なニューロンのメカニズムの解明」
9月4日の午後にオスロ・コンサートホールにて行われた授賞式では、ノルウェーのヘラルド国王から受賞者に賞が授与された。また、9月3日の午前には、受賞者による講演会が開かれた。
(3)科学フォーラム
9月3日の午後には”Science and Global Health: The Role of Basic Science”をテーマに科学フォーラムが開催され、黒川清東京大学名誉教授(日本学術会議第19期・20期会長)がパネリストの1人として登壇した。
(4)2012The Kavli Prize Week 2012一連行事に出席して
1、2回目のカヴリ賞受賞者は男性のみであったところ、今回は7人中4人が女性であり、かつかなり若手の研究者も含まれていたことが、祝辞の随所で触れられていた。ノルウェー政府とノルウェー科学人文アカデミーが力を入れている賞であり、受賞式典もレセプションも華やかであった。受賞者は同僚を10人ほど招待することができ、日本人研究者も含まれていた。初回受賞者の飯島先生も参列され、黒川元会長も科学フォーラムで雄弁を振るわれた。カヴリ財団による研究所は東京大学をはじめ各国に設立され、日本人研究者も最先端の研究を進め活躍されている。今回、大西会長の代理として受賞式典に参加する機会を得て、ご本人も科学者であるとともに基礎科学の推進に個人の資産を投じて支援するカヴリ氏とその財団の心意気に触れることができ、また世界で活躍する日本人研究者と交流できたことは、貴重な経験であった。なお、カヴリ財団のロバート・コン理事長が、近く大西会長を訪問される予定である。
![]() ナノ科学分野受賞者Dresselhaus氏による講演 |
![]() 科学フォーラムでは黒川元会長がパネリストとして登壇 |
![]() 受賞式典で挨拶を行うStensethノルウェー科学人文アカデミー会長 |