代表派遣会議出席報告

会議概要

1 名 称   国際結晶学連合運営委員会
       (IUCr Administrative Meetings)

2 会 期 2012年8月7日~13日(7日間)
3 会議出席者名 小川 桂一郎(IUCr分科会)
4 会議開催地 ベルゲン市(ノルウェー)およびチェスター市(英国)
5 参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)
        14カ国,19名(うち日本人1名)

6 会議内容
・日程及び会議の主な議題
 今回の運営委員会は,以下の4つのテーマについて,別々の委員会として開催された。
 ●IUCr2014 構造化学部門国際プログラム委員について(8月7日,ベルゲン)
 ●国際結晶学連合ジャーナルの編集方針について(8月10日,ベルゲン)
 ●世界結晶学者名簿のあり方について(8月11日,ベルゲン)
 ●ジャーナルのプロモーションおよび世界結晶学者名簿編集方針の見直しについて(8月13日,チェスター)

IUCr構造化学部門会議
 2014年にモントリオール(カナダ)で開催されるIUCr会議の準備の一環として,国際科学プログラム委員の選定について話し合いが行われた.構造化学部門長のF. ラホス教授(スペイン)より,同会議における構造化学部門の重要性が強調され,前回会議(2011, マドリッド)と同様,同部門から3名の委員を推薦予定である旨が述べられた。
 プログラム委員決定後には,基調講演者の候補について相談したい旨も述べられた。

IUCrジャーナル編集会議
 IUCr理事会報告として, IUCrジャーナルの新総括編集長として,S. ハスネイン教授(英,Journal of Synchrotron Radiationの創始者で,前編集長)指名されたこと,および2014年よりすべてのIUCrジャーナルを電子版のみとすることが報告された。
 IUCr事務局(チェスター)より, Acta Crystallographica Section Dのインパクトファクターが大幅に上昇(2.26から6.33)したこと,およびActa Crystallographica Section Eが,Citation Indexから外れることが報告された。
 Acta Crystallographica Section Bの編集長であるズマーレン教授(ドイツ)より,本誌の改革の一環として,科学的に優れた内容の投稿論文であれば,構造データの質に対する要求水準を下げてもよいのではないかの考えが示された.これは,従来の編集方針の重大な変更を意味するものであり,活発な意見交換が行われ,引き続き検討することになった.また,ズマーレン教授より,本誌の対象とする分野を拡げるため,クリスタル・エンジニアリングの専門家を含む2,3名に新たな編集委員として加わってもらうことを検討中であることが述べられた。
 Acta Crystallographica Section Cの編集長であるリンデン教授(スイス)より,不慣れな著者からの投稿が多いのが問題なので,投稿がより簡単にできるように投稿案内を改訂する旨が述べられた。

世界結晶学者名簿(World Directory of Crystallographers)について
 筆者は,World Directory of Crystallographers (WDC)のアジア・オセアニア地区編集委員として,現在のWDCについて以下の問題点を指摘した.すなわち,WDCは完全web化されているものの,想定された利用目的が1996年まで続いていた冊子体の時代のものであるため,インターネットが普及した現代にはそぐわず,その結果,WDCの有用性の低下がみられること.このため,利用目的と機能の見直しが必要であること.筆者の指摘に対して,マクマホン博士(IUCr事務局)より,IUCr事務局で開発担当者を交えて,技術的な面も含めて詳細な検討を行うことが提案され,筆者の事務局訪問時に再度検討会をもつことになった。

ジャーナルのプロモーションとWDC編集方針の見直しについて
 国際結晶学連合のジャーナルの中で,筆者が編集委員を務めるActa Crystallographica Section Bは,投稿論文数が近年減少傾向にあり,日本からの投稿も減少していることが,ストリックランド氏(IUCr事務局,ジャーナル担当マネージャー)より指摘され,投稿を増やすための方策の実施を求められた.とくに日本は,Acta Crystallogaphica Section Bの重要な一分野であるクリスタル・エンジアニリングにおいてすぐれた研究が多くなされているにもかかわらず,そのような論文の本誌への投稿が少ないので,日本の研究者に向けての宣伝の強化を検討することとした.  WDCについては,マクマホン氏,ストリックランド氏,アマンダ氏らと協議.新規登録の際に何らかの方法で本人確認を行うこと,および必須入力項目を増やして本人が結晶学者であることが容易に確認できるように検討することが了解された。

7 会議の模様
 今回の一連の会議のうち,最初の3つについては,8月6日(月)から11日(土)までベルゲン(ノルウェー)で開催された第27回ヨーロッパ結晶学連合会議(ECM27)の会場であるグリーク・ホールで行われた.ECM27への参加者は約300名.ほとんどがヨーロッパ内からであったが,米国,日本,台湾,オーストラリア,ニュージーランドなど,非ヨーロッパ諸国からも少数の参加があった。
 ECM27終了後に訪問した国際結晶学連合事務局は,ローマ帝国時代からの歴史をもつチェスター市にあり,街の中心にある大聖堂脇の煉瓦つくりの建物に入っている.ヴィクトリア朝時代の邸宅を思わせる事務局の応接室で,デイコム事務局長と面会し,その後,他のスタッフの部屋で打ち合わせを行った.たいへん落ち着いた雰囲気の事務局は,学問の伝統を感じさせ,研究所のような雰囲気であった。

次回開催予定 2012年12月2日~5日 アデレイド市(オーストラリア)
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