代表派遣会議出席報告

会議概要

1 名 称   第33回国際美術史学会(CIHA)ニュルンベルク大会・総会
        (33me Congres du Comite International d’Histoire de l’art(CIHA), Nuremberg Congress (with General Assembly and CIHA board meetings))

2 会 期 平成24年7月15日~20日(6日間)

3 会議出席者名 小佐野 重利(博物館・美術館等の組織運営に関する分科会委員)

4 会議開催地 ニュルンベルク (ドイツ)

5 参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)
         参加国 46か国 (香港などを旧CIHA加盟国区分どおり1カ国とする)
         約1000人 (うち日本人 13人)

6 会議内容

・日程及び会議の主な議題
2012年7月15日―7月20日
第33回国際美術史学会(CIHA)ニュルンベルク大会・総会
 総テーマ The Callenge of the Object(ものの挑戦)

7月15日(日)  Nuremberg, Germanisches Nationalmueum
14:00-16:00 第1回理事会 (理事会メンバーのみ)
 主な議題:パリ理事会(2012年2月)議事録承認
 メルボルン大会以後の過去4年間(2008-12)のCIHA(国際美術史学会)の活動報告および会計報告、CIHA規約改正の検討(特に従来の公用言語である欧米語からアジアにまで拡張する提案)
 ニュルンベルク大会についての報告ほか
16:00-17:30 第1回総会(理事会メンバー、加盟国代表委員および代理委員)
 主な議題:ヨハネスバーグ(南アフリカ)総会議事録承認
 過去4年間(2008-12)のCIHA(国際美術史学会)の活動報告および会計報告、 ニュルンベルク大会について説明、2012-2016年の学術活動の展望、総会メンバーおよび理事会メンバー候補者提案、CIHAの規約および組織に関する提案(公用言語のアジアへの拡張、2013年マルセーユでのコロキウムおよび総会にアルジェリア国内委員会とチュニジア国内委員会が招聘されること)など
18:30-  Welcome Cocktails

7月18日(水) Nuremberg, Germanisches Nationalmueum
14:00-16:00 第2回理事会 (理事会メンバーのみ)
 主な議題:CIHAの組織、LaoZhu教授による2016年北京大会開催紹介(テーマはTerms)、報告者による2013年鳴門コロキウム準備状況説明(テーマはBetween East and West: Reproductions in Art)、学術事務局長Thierry Dufeneによる2014年マルセーユのコロキウムおよび総会開催提案、イタリア国内委員会による2020年フィレンツェでのCIHA大会提案(テーマはEye, hand and mind)についての説明など。
16:00-17:30 第2回総会(理事会メンバー、加盟国代表委員および代理委員)
 主な議題:新理事会メンバ―候補者、加盟国代表委員および代理委員の交代による新メンバー候補者に対する票決。LaoZhu教授による2016年北京大会開催紹介(テーマはTerms)、報告者による2013年鳴門コロキウム準備状況説明(テーマはBetween East and West: Reproductions in Art)、学術事務局長Thierry Dufeneによる2014年マルセーユのコロキウムおよび総会開催提案、イタリア国内委員会による2020年フィレンツェでのCIHA大会提案(テーマはEye, hand and mind)についての説明、ほかコロキウムやコンフェランス提案。

7月16日(月), 17日(火) Nuremberg Convention Center 9:00-17:30
 11セクションの発表およびポスターセッション展示
 16日(月)18:30 - オープニング・セレモニー
 19:30 レセプション

7月19日(木), 20(金) Nuremberg Convention Center 9:00-17:30
 10セッションの研究発表およびポスターセッション展示

・会議における審議内容・成果

 第1回と第2回の理事会及び総会へ提出された決議案も提案も、概ね承認された。ただし第1回理事会および総会に提案されたCIHA公用言語の拡充については、さまざまな意見がだされ、検討は先送りされた。

・会議において日本が果たした役割
 各2回の理事会および総会には報告者が副会長の一人として出席し、2013年1月のCIHA鳴門コロキウムについての説明(パワーポイント使用)を行ない、また総会には特に第二回総会からもう一人の日本の新代表委員として中村俊春(京都大学教授)も議事に参加し、票決に加わった。

・その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)
 7月16日18時半からのオープニング・セレモニーでは、主催者のドイツ国立美術館長Ulrich Grossmann、ライプニッツ協会会長Karl Ulrich MayerおよびCIHA会長Jaynie Louise Andersonの挨拶のほかに、ドイツ連邦教育研究大臣Annette Schavanもスピーチを行い、その中で政府は国立の研究美術・博物館に対して毎年5%の予算増をすると明言され、日本の文化予算状況ではありえないため、驚いた。

7 会議の模様
 以下、研究発表セクションについて記す。美術史学Art Historyはドイツに最初に誕生した大学講座であり、その成立時から、哲学系の芸術学Kunstwissenschaftの隣接分野として、競合しつつ発展した経緯をもつ。しかしながら、近年美術史学に人類学などを包摂する研究の動きや、UNESCO及びその下部学術会議CIPSH (the Conseil International de la Philosophie et des Sciences Humaines)の所属学術機関として国際美術史学会(CIHA)が使命として担う美術史学自体のグロバリゼーション.の動きの中で、土着の芸術文化やサブカルチャーを含む視覚文化研究visual culture studiesにまで広がる方向にある。ドイツ国立博物館が主催機関となった本世界大会は、美術史がモノを研究対象とするという原点にたち返りながら、そのモノとしての美術品を今日の学問状況を踏まえて、どのように深く、広く研究しうるか、美術博物館の収蔵品という観点も含めて 新しい研究視座をたてうるかという課題に取り組んだものといえる。しかも、この世界大会開催にちなんで、ドイツ・ルネサンスの画家アルベレヒト・デューラーの初期活動に焦点を当てた特別展「初期のデューラー」(30年ぶりの大展覧会)を開催して、3年間の美術館の研究活動の成果を展覧会カタログおよびセクションでの発表を通じて公開したことは、美術館のモノに立脚した研究の重要性を大会参加各国の研究者および学生にアピールできたものと評価する。

 報告者は主に登録した3セクションを聴講したが、「ものの挑戦The Challenge of the Object」を総テーマしているところから、特に第2、第8セクションの美術博物館での研究成果の発表に優れた刺激的なものがあった。報告者は日本代表委員の立場で、二人の日本の中堅研究者の発表は聴講した。大会の発表言語は主に英語とドイツ語であったが、質疑になるとドイツ語使用になりがちで、公用言語の問題を含め、文科系国際学会の運営上の課題として残った。

 2013年1月15日-18日の鳴門市の大塚国際美術館で開催される鳴門CIHAコロキウムは、1991年の東京コロキウム(Japan and Europe in Art History)以来、CIHA日本委員会が正式に主催する初めてのコロキウムであり、テーマをBetween East and West : Reproductions in Art(洋の東西の美術における複製)として比較美術史もしくは交流史的な研究の展開を促進するという目的を持つ。2016年に控えている北京大会の準備動向等を踏まえて、国際美術史学会理事会からの要請により、内容について意見交換した上での企画である。主催は、CIHA日本委員会、大塚国際美術館および美術史学会であり、大塚美術財団と鹿島美術財団の援助によって全経費が賄われる。

 Reproductionsは英語の美術辞書にある狭義の意味ではなく、もっとも広く解釈してCopy, Replica, RemakeおよびFakeを含む。国際美術史学会主催のコロキウムや大会でこのテーマが包括的に取り上げられ論じられたことはない。また国際研究会で取り上げられても、専ら西洋美術史に限ったものであり、このように洋の東西美術、わけても東アジア・日本と西洋のあいだでのReproductionsに関する様々な問題を扱うことはなかった。この意味で国際美術史学会のコロキウムのテーマとして取り上げるのにふさわしい。

 Reproductionsの問題を論じることは、それと深く関連するオリジナリティや作品の真正性(Authenticity)についても論じることになる。この点はニュルンベルク大会の幾つかのセクションの発表を継承している。またデジタル時代の現代におけるReproductions、さらにはOriginalsの定義などを再検討し、美術制作および美術史研究におけるそれらの正当な意義を浮き彫りにできる。

 すでに発表公募は締切され、55篇の応募があったが、鳴門コロキウムでは基調講演3、招待発表4を含め、32篇の発表が予定されている。

 次回開催予定2016年月末(北京大会)

第33回国際美術史学会(CIHA)大会会場(Nuremberg Conference Center) 同大会オープニング・セレモニーでのドイツ連邦共和国教育研究大臣アンネット・シャヴァーン博士の演説
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