代表派遣会議出席報告

会議概要

1 名 称   学術団体国際人権ネットワーク第10回隔年総会
        (The International Human Rights Network of Academies and Scholarly Societies)

2 会 期 平成24年5月23日~25日(3日間)

3 会議出席者名 吾郷 眞一(法学分科会委員)

4 会議開催地 台北(台湾)

5 参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)
         参加国数 26  参加総数 35  日本人参加者 1

6 会議内容

・日程及び会議の主な議題

 5月23日に一般公開のシンポジウムで始まり、24日と25日に会員だけの個別討議が行われ、26日には追加的行事として学生対象のセミナーが開かれた。

 主な議題としてはネットワークの課題確認及び会員の認識共有、ネットワークが介入して解決した事例の紹介、ユネスコなど国際機関との協力、トルコにおける学術団体への政治介入問題、弁護士を対象とする救援活動、教育と人権に関する討議、多国籍企業と人権に関する討議、学術団体の地域別報告、財政問題、など。

・会議における審議内容・成果

 本ネットワークのコリロン事務局長による過去2年と最近のネットワークの活動説明、執行委員の補足説明、個別テーマについての報告、特別ゲストのタイ・チュラロンコン大学教授(Vitit Muntarbhorn)の講演などがあった。また人権侵害を受けた当事者(バーレン)および、兄が拷問の末に殺害された当事者(シリア)が招待されており、映像を用いながらの衝撃的な報告もあった。

・会議において日本が果たした役割

 多国籍企業と人権のかかわりについて私に簡単な説明をするよう要請がなされていたため、口頭で10分ほどの問題解説を行った。また、日本からの本会議正式参加はだいぶ長いこと中断していたため、昨今の日本の人権状況、日本学術会議の最近の活動、とりわけ新たに設置された人権委員会の役割について説明をした。

・その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)

 今回オランダからの代表が弁護士は学者とはいえないので、オランダ・アカデミーとしては救援声明等を発しないことを通告(私はその判断に同調、日本学術会議がネットワークによるアラートに反応する際は純粋にアカデミックであるかどうかについて判断していることを報告)したことに端を発し、そもそもネットワークはどこまで守備範囲を広げられるかということで大きい議論となった。しかし、本ネットワークは全米の医学と工学関係のアカデミーが中心に出発していることもあり、その憲章には「科学者、医療従事者、エンジニア、並びに学者 (scientists, medical professionals, engineers and scholars)が人権侵害をされた時に救援する」と書いていあって、少なくとも医者、エンジニアに関しては出発時点から定義に含みこまれていたことがわかる。ただ、弁護士その他の職業についている人々に関しては、ネットワークの目的に一致するかどうかについてはいろいろな意見があることが確認され、最終的には各国のアカデミーによる自主的判断に委ねられるということでまとめられた。

7 会議の模様

 会議は終日休憩時間に食い込む形でみっちり行われ、多くの国のアカデミーが人権侵害に対して連帯する強い意志があることが明らかになったこと、並びに保護する対象についてはそれぞれのアカデミーの裁量に委ねられていること、ネットワークとしてはアラートだけを発信するのではなく、特定の共通問題について協働して研究および啓蒙活動をしたらいいのではないかという提案がなされ、その方向で進むことが確認された。また隔年に総会を開催するか3年おきにするか、ということについても諮られ隔年開催ということが決められた。

 したがって次回総会開催は2014年ということになり、候補地としてはコスタリカが挙げられ、コスタリカ・アカデミー会長からの招聘メッセージが同国からの参加者によって読み上げられた。

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