提言「原子力安全規制の課題とあるべき姿」のポイント
1 現状及び問題点
原子力規制委員会及びその事務局である原子力規制庁が、2012年9月12日に設置され、東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた新規制基準が策定されて、適合性の審査がおこなわれるに至っている。また、2016年1月にIAEA (国際原子力機関)によるIRRS (総合規制評価サービス)のミッションを受入れた結果、IRRS報告書では13件の勧告及び13件の提言がなされ、それに対応して2017年4月に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の再改正がなされた。新たな検査制度についても試行を経て、2020年4月より本格的な運用が開始された。しかしながら規制委員会及び規制庁からなる規制機関には、今後解決されるべき多くの課題が存在している。
2 提言の内容
(1) 規制機関と被規制者・事業者の関係と双方の取り組み姿勢
規制機関と事業者の両者が対等のコミュニケーションを図れる関係を構築し、原子力安全のための継続的改善及び自主的安全性向上への取り組みが互いにスパイラルアップできるようにすべきである。(2) リスク情報の活用
新たな新検査制度などの規制の取り組みにおいて、リスク情報に基づいた意志決定の活用と実践を進めるべきである。(3) 規制機関における優先順位と迅速性
リスクの大きい事象に対して安全向上のための規制を優先するとともに、短期的に対応すべきものから迅速に対策を実施した上で、さらに中長期的に継続的な改善を進めるべきである。(4) 安全対策機器の増設に伴う課題への対応
安全対策機器の増設に伴うリスク低減のメリットと人的過誤率の上昇の可能性等のデメリットを認識し、これらをできうるかぎり定量化し、システム全体としてのリスクを評価すべきである。(5) 規制機関における規制基準の体系的かつ継続的な改善
規制基準の性能規程化を進め、学協会で策定された規格・標準を活用することにより、最新知見を迅速に取り込んで規制に反映する仕組みを活用するなど、規制基準の体系的かつ継続的な改善に取り組むべきである(6) 規制機関における安全の目標について
安全の目標について、規制機関の基本的な考え方を明確化すべきである。(7) 組織文化と安全文化の課題
原子力安全がすべてに優先されるよう規制機関、事業者、さらには原子力安全に関連する全ての関係者がリーダーシップを発揮するとともに、マネジメントの重要性を認識すべきである。(8) 規制機関における安全研究、情報基盤の確立及び人材育成の統合的マネジメント
規制機関には高度な人材育成のマネジメントシステムと安全研究及び技術情報基盤を相互に効果的に運用することが求められる。危機管理能力を有し、総合的な意思決定に必要となる技術情報基盤を多様な運転経験に基づき継続的に収集、評価する能力を有した人材を育成するとともに、原子力安全に資する研究計画を立案・遂行し、その結果を有効に活用する体制を確立すべきである。
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