提言「ゲノム編集技術のヒト胚等への臨床応用に対する法規制のあり方について」のポイント

1 現状及び問題点

・ヒト胚等へのゲノム編集は、出生する子どもへの予期せぬ副作用、遺伝的改変が世代を超えて継続すること、優生主義的な人間の選抜につながる恐れがあること等の理由で、実効性のある規制が求められている。
・一方日本にはヒト胚を用いた研究に関する一般的ルールを直接に定める法律がなく、法律によらない「指針」で規制を行っている。仮に一昨年中国で発生したゲノム編集児誕生の事案が仮に日本で起こっても、この行為を法律で罰することができない。
・日本も参画する世界保健機関(WHO)および米国・英国主導の学術的国際会議で、国際的規制に関する合意形成が急がれている。

2 提言等の内容

  • (1) ゲノム編集技術の臨床応用に関する法的規制の早期の実現
    • ・ゲノム編集技術のヒト胚等への臨床応用禁止の実効性を担保するために、法律による規制の早期実現が不可欠である。
    • ・規制の対象は、塩基配列を変更するゲノム編集だけでなく、遺伝子機能の発現に長期間影響を及ぼす操作全般を当面含めるのが妥当である。
  • (2) ゲノム編集技術の臨床応用に関する法的規制のあり方
    • ・法律による規制を設けるにあたっては、生命倫理に関する包括的な法律の制定が最終的な理想ではあるが、緊急性を考慮して以下の2つを選択肢として提案する。
    • ・①ヒト胚の語を含む唯一の法律であるクローン技術規制法(2000年制定)は「人の生命及び身体の安全」、「社会秩序」と並び「人の尊厳」を保護対象としている。ゲノム編集技術の登場に即して、「人の尊厳」が「人の生物学的多様性の維持」の観点を含むように同法を改正し、これを根拠法とする。または、
    • ・②「人の生物学的多様性の維持」を含む「人の尊厳」の観点から、ヒト胚ゲノム編集の臨床応用に焦点を絞ったコンパクトな法律を制定する。
    • ・①②のいずれの場合にも、法律で臨床応用を原則的に禁止するが、将来的に例外を許容する余地を排除しない形にすることが望ましい。
  • (3) 国内的・国際的なルールメーキングのあり方
    • ・WHOおよび学術コミュニティが主導する国際的活動に、我が国の代表者が参画し、国際的ルール作りに積極的にコミットすることが重要である。
    • ・政府においては、国際的議論を国内の規制、審査体制の構築に反映させることが求められる。




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