提言「CT検査による画像診断情報の活用に向けた提言」ポイント

1 現状及び問題点

CT検査は全身の様々な異常を短時間で画像化することができ、医療において多大な貢献を果たしている。CT検査の実施後は放射線診断医が画像診断報告書を作成し、検査を依頼した医師に情報提供する。CT検査では様々な異常が検出されるため、検査依頼医の専門外の病変がみつかることはまれでなく、画像診断報告書が果たす役割が大きい。

最近、CT検査の画像診断報告書の確認不足により重大な疾患が見逃され、適切な診療が行われなかった事例が繰り返し報道されている。画像診断報告書の確認不足が生じる背景として、検査依頼医によっては画像診断報告書を確認する意識が低いこと、画像診断報告書の作成に時間がかかること、一人の患者の診療に複数の医師が関与して画像診断報告書を確認する責任の所在があいまいになることが挙げられる。また、CTの検査数や1検査で発生する画像枚数が増加しているのに対して放射線診断医が不足しており、検査依頼医から提供される臨床情報の不足も併せ、円滑な画像診断の妨げになっている。さらに、CTが利用しやすくなった結果として必要以上の検査が行われ、放射線被ばくを増やすと共に、放射線診断医の時間を圧迫して画像診断報告書作成に支障を来していることが懸念される。

2 提言の内容

  1. (1) 画像検査の適正利用の推進及び画像診断体制の改善

     医療機関は検査依頼医を対象とした画像診断情報の活用に関する研修を行い、画像検査の適正利用を推進し、検査依頼における臨床情報入力の重要性について啓発すべきである。専門医修練に関わる各学会は画像検査の適正利用指針を策定し、会員等に周知することが望まれる。医学生の試験で画像検査の適正利用について積極的に出題することも望まれる。

     政府は質の高い画像診断体制の構築を支援することが求められる。また、画像診断支援技術の開発を推進するため、全国レベルでのデータ集積を支援すべきである。

  2. (2) 検査依頼医による画像診断報告書確認の医療情報システムを用いた支援

     医療機関は検査依頼医が画像診断報告書について確認・対応する責任を持つことを周知すべきであり、画像診断報告書確認に関わる院内指針の策定が求められる。

     医療機関は画像診断報告書の発行を検査依頼医に通知し、未読報告書の一覧を表示する機能を医療情報システムに導入すべきである。緊急所見や重大所見の認識を助ける機能の導入も望まれる。関係学会には標準的な機能・設定のモデル作成が望まれる。

  3. (3) 人的システムによる画像診断情報伝達の補完

     医療機関は研修において医師間等の情報共有に関する意識を高めることが望まれる。緊急所見や重大所見の放射線診断医から検査依頼医への口頭連絡を推進するために院内指針を策定すべきであるが、口頭連絡への過度な依存を防ぐことにも留意する。また、検査依頼医による画像診断報告書の確認や対応の状況を管理し、必要時に介入する人的体制を構築すべきである。患者本人への画像検査結果説明の院内指針を定めるべきである。

  4. (4) 画像検査に関わる教育の充実

     医学部・医科大学は、実践的な画像診断教育を充実させ、画像所見を漏れなく抽出する能力をかん養することが望まれる。臨床研修施設は、画像診断能力のかん養に加え、検査適応の決定、適切な検査依頼入力、画像診断報告書活用に関わる能力を総合的かつ実践的に養成することが望まれる。医学部・医科大学は、文書による意思疎通能力を養成する教育を充実させることが望まれる。



     提言全文はこちら(PDF形式:569KB)PDF
このページのトップへ

日本学術会議 Science Council of Japan

〒106-8555 東京都港区六本木7-22-34 電話番号 03-3403-3793(代表) © Science Council of Japan