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日本学術会議会長コメント

日本学術会議会長コメント
平成17年3月23日
 日本学術会議は、第4部報告として平成17年3月23日に「先端的大型研究施設での全国共同利用のあり方について」を公表した。これはSPring-8(大型放射光施設)を例として述べているが、重要な点は、日本の先端的大型研究施設、大型プロジェクトのあり方の基本理念である。
 わが国には、現在、B-ファクトリー(電子・陽電子衝突施設)、SPring-8(大型放射光施設)、スーパーカミオカンデ、地球シミュレータ(超高速スーパーコンピュータ)、E-ディフェンス(大型3次元振動台)、すばる望遠鏡、国際宇宙ステーション日本実験棟(きぼう)、地球深部探査船(ちきゅう)など、世界のオンリーワンあるいはトップランナーとして活躍する先端的大型研究施設やプロジェクトがある。また、J-PARK(大強度陽子加速器施設)や RIビームファクトリーなども近く完成の予定である。これらの施設は、わが国が創造的研究や革新的技術開発を通して学術の発展と科学技術の進歩に貢献する重要拠点であり、人類の未来を支える科学技術を創造する役割と期待を負っている。  
 これらの大型の施設やプロジェクトは巨額の資金を必要とし、どこの国でもできるものではない。これらは世界の、そして人類の財産なのである。これらの大型科学研究プロジェクトを施設も含めて広く世界の研究者に開放することは、研究の推進、人材の交流のみならず、これらの施策を通してわが国が世界の科学研究フロンテイアの推進と世界の研究者の育成に確実に貢献することになる。この認識こそが重要なのである。先進国が世界人類の科学研究フロンテイアや、世界の研究者の育成に貢献することは、品格ある文化国家として当然なことであり、日本が果たすべき国際社会での当然の責任である。とくに、アジア諸国の研究者にこれらを広く開放し、アジアから世界に羽ばたく人材を育成し、これらの研究者がそれぞれの国で、そしてアジアで、そして世界で多くの成果を挙げ、未知の問題の解決に取り組むことが、わが国のアジアでの、そして国際社会での貢献であり、責任である。このような理念こそが、日本の科学技術政策、特に大型科学研究計画には必要なのである。経費の不足はあるが、近視眼的過ぎる。長期的な国家目標と、それによってもたされる利益を比べれば、これこそが「品格のある国、日本」の国益に適う科学技術政策というべきものなのである。
日本学術会議会長 黒川 清
【参考】
・日本学術会議ホームページ http://www.scj.go.jp
         
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