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第21回IUPAC化学熱力学国際会議
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)第21回IUPAC化学熱力学国際会議
         (英文)21st IUPAC International Conference on Chemical Thermodynamics (ICCT-2010)
(2)報 告 者 : 第21回IUPAC化学熱力学国際会議組織委員会委員長 阿竹 徹
(3)主   催 : 日本熱測定学会、(社)日本化学会、日本学術会議
(4)開催期間 : 平成22年7月31日(土)~ 8月6日(金)
(5)開催場所 : つくば国際会議場(茨城県つくば市)
(6)参加状況 : 36ヵ国/1地域・665人(国外233人、国内432人)

2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:
 IUPAC化学熱力学国際会議は、国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry: IUPAC)のスポンサーシップの下,国際化学熱力学連合(International Association of Chemical Thermodynamics: IACT)が2年ごとに開催する会議であり、1959年以来、当会議で26回を迎える化学熱力学分野で最も歴史のある国際会議である。日本での開催は、2005年4月に開催された国際化学熱力学連合(IACT)の幹事会において、第21回IUPAC化学熱力学国際会議(1969年の第1回会議以前に5回の国際会議が開かれたため実際の開催回数と数字に乖離がある)を2010年8月に日本で開催することが決定された。これを受け、日本熱測定学会は、日本開催準備のために、第21回IUPAC化学熱力学国際会議準備委員会を2005年に、組織委員会を2007年に設置し、開催の準備を進めることとなった。日本での開催は、第14回以来、14年振り、2回目の開催となった。
(2)会議開催の意義:
 本会議では、「21世紀における化学熱力学の役割」をメインテーマに、溶液熱力学、相平衡、生物熱力学、食品・医薬品、コロイド・界面、熱化学、材料科学、実験法、理論・シミュレーション、環境問題、熱力学教育、等を主要題目として、研究発表と討論が行われ、その成果は、化学熱力学の発展に大きく貢献した。
  この会議を日本で開催したことは、我が国の実験熱力学研究の高い水準を全世界の研究者に大きくアピールし、多くの研究者の参画を促す絶好の機会となるとともに、我が国のこの分野の科学者に世界の多くの科学者と直接交流する機会を与えることとなり、我が国の化学熱力学に関する研究を一層発展させる契機となった。また、公開講演会を行うことにより、最新の成果について、社会に還元し、科学に関する一般社会の興味を大いに高めることができた。
(3)当会議における主な議題(テーマ):
 21世紀における化学熱力学の役割
(4)当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
 本会議を日本で開催することにより、我が国のこの分野の科学者に世界の多くの科学者と直接交流する機会を与え、我が国の化学熱力学研究を一層発展させる契機となったと思われる。 とくに、熱力学教育など社会との関係を見据えた討論題目の設定は、今後の化学熱力学国際会議に影響を与えると考えられる。また、本国際会議を開催することにより、最新の成果について、社会に還元し、科学に関する一般社会の興味を大いに高めることができたと思われる。
(5)次回会議への動き:
  次回は2012年8月、ブラジルのブジオスで開催される。今回、議論されたテーマは発展的なものが多く、次回も、社会とのかかわりに留意した発展的なテーマ設定が為されることが予想される。なお、次々回は2014年に南アフリカで開催されることが、会期中に決定された。
(6)当会議開催中の模様:
 8月1日の開会式は、天皇皇后両陛下の御臨席を賜ったほか、川端達夫内閣府特命担当大臣(科学技術政策)から祝辞をいただくなど、盛大に執り行われた。また、両陛下には、その後、展示会場で開催されたウェルカムレセプションにも御臨席いただき、世界各国から集まった研究者との間で国際的な親睦が図られた。
  会議参加者は600名余で,毎日,plenary lectureの後,7会場に分かれ,全部で約550件の発表が行われ,非常に活発な議論がなされた。充実した学術・機器展示が行われ、展示会場でも活発な議論が交わされた。
 若手研究者間の交流と成長を目的とした「国際若手の会」も正規行事として開催され、交流が為された。今後への展開が期待される。
(7)その他特筆すべき事項:
 過去26回の開催地は欧米諸国に偏っており、アジアでの開催は1996年第14回の日本開催が初めてであった。日本の熱力学研究は質、量ともに世界のトップレベルにあることから、遅すぎた感があり、もっと早期に2度目の日本開催を図るべきであったが、2004年は同じアジアでも中国での開催となった。さらに次回2012年の開催地はブラジルであり、次々回2014年の開催地は南アフリカに決定された。世界の潮流の変化は大きく、グローバル化の進行は歴史的流れと考えられる。その中にあって、日本開催は一定の周期で実現されるべきであると考えられる。なお、日本開催での特筆すべきこととして、発展途上国からの参加者に対する渡航費の援助が挙げられる。日本が地理的に遠いことから今後も配慮すべきであり、資金獲得に努力が必要である。

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:平成22年7月31日 13:30~16:00
(2)開催場所:つくば国際会議場 中ホール300
(3)主なテーマ:環境問題と熱力学
(4)参加者数、参加者の構成:約100名(中学生から社会人,専門家まで,うち国際会議参加者は1/3程度)
(5)開催の意義:
 本公開講演会は環境問題と熱力学の関係に焦点を当て,カナダ・ダルハウジー大学のM.A. White氏に「温度、熱、そして私たちの生活-熱力学入門」(講演1、英語の講演、逐次訳あり)、東京工業大学の阿竹 徹氏(本国際会議組織委員長)に「地球環境と熱力学-地球の熱収支と水」(講演2)、と題する講演をして頂いた。講演1では身の回りの現象を素材に熱力学の基本を易しく解説し、講演2では講演1の内容を踏まえ,地球環境と熱力学のかかわり,なかでも熱収支について講演が行われた。講演者・逐次訳者のわかりやすい解説ぶりもあって、一般市民にも好評であり、大変意義のある講演会となった。
(6)社会に対する還元効果とその成果:
  いずれの講演の内容も、中学生、高校生ならびに一般の市民でも十分理解できるものであった。会場で集めたアンケートによれば,大変好評であり、ことに専門家が市民に直接語りかけることの重要性がうかがわれた。社会に対する還元効果は大きかったのではないかと思われる。開催に当たってはできるだけ多くの方に出席してもらう為に、チラシを作成し、茨城県教育委員会ならびにつくば市教育委員会の後援も得て,つくば市内の中学校と高等学校に配付した。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
(1) 天皇皇后両陛下の御臨席
 本国際会議において、出席者を最も感激させたのは、天皇皇后両陛下の御臨席である。開会式では、日本学術会議会長(金澤一郎氏)、(社)日本化学会会長(岩澤康裕氏)、IUPAC副会長(巽 和行氏)、IACT会長(A. Goodwin氏)、日本熱測定学会会長(吉田博久氏)など主催者代表をはじめ、来賓の川端達夫内閣府特命担当大臣、橋本 昌茨城県知事からの御挨拶も頂いた。開会式後には、ウェルカムレセプションが開催され、天皇皇后両陛下を囲んで会議参加者が和やかに歓談した。天皇皇后両陛下の御臨席と川端大臣の出席は、基礎科学を大事にする我が国の姿勢を強く印象づけることとなり、海外からの参加者に羨望の念を抱かせることとなった。
 今回の両陛下の御臨席は、日本学術会議をはじめ各関係機関の大きな支えによって初めて可能となったことである。本報告を借りて厚くお礼を申し上げる。
(2) つくば国際会議場での開催
 本国際会議開催に当たって、計画段階より規模、設備、交通の便等からつくば国際会議場が最適と考えられたが、本会議場において学術的な国際会議を開催するのは、資金面から、一般的には容易ではない。日本学術会議との共同主催となったことで初めて可能になった。一方、この会議場で開催できたことで、外国の参加者からは絶賛を浴びた。
(3) 公開講演会の開催
 日本学術会議との共同主催がきっかけとなって公開講演会を開催したが、いざ開催してみると、専門分野だけに閉じこもらず広く市民に研究成果を語りかけることの意義が確認できた。海外からの参加者もそのことを感じたようであり、今後の国際会議開催に当たって定着する可能性がある。研究者コミュニティーの自覚を高める上で大変有意義であった。


(天皇皇后両陛下の御臨席のもと主催者挨拶を行う金澤一郎日本学術会議会長)

(天皇皇后両陛下に感謝の言葉を申し上げる吉田博久日本熱測定学会会長)

(来賓挨拶を行う川端達夫内閣府特命担当大臣)

(ウェルカムレセプションで参加者と歓談される天皇皇后両陛下)

(一般セッション風景)

(公開講演会で講演する阿竹 徹 組織委員長)

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