日本学術会議 トップページ > 代表派遣 > 代表派遣結果等
 
代表派遣会議出席報告
1 名 称   第46回国際純正応用化学連合総会(IUPAC)および第43回コングレス
        (46th International Union of Pure and Applied Chemistry (IUPAC) General Assembly and the 43nd Congress)
2 会 期  2011年 7月 27日~ 8月 5日( 10日間)
3 会議出席者名  長谷川 美貴(IUPAC分科会委員)
4 会議開催地  サンフアン(プエルトリコ)
5 参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)
  参加国数 約55カ国、参加者 300名、日本人参加者 約15名
6 会議内容

   ・日程及び会議の主な議題
     国際純正応用化学連合(IUPAC)総会は2年に1度行われ、化学物質に関わる基盤的・規約的部分の議論と、これらを学術的にも工業的にも世界共通の化学の言語としてどのように扱っていくかということについて議論を行う場である。コングレスと平行して行われた
    日程を含めて約10日間に、世界約55か国から約300名の化学者が代表として集まり議論を交わした。特に最終2日間は、さらに各国から代表が理事会に出席し、次期副会長および事務局の選挙が行われる。コングレスは基調講演に7名のノーベル化学賞受賞者が招
    待され、世界中から出席している研究者により、化学の全分野に関する学術的な発表と議論が行われる。

   ・会議における審議内容・成果
     無機化学ディヴィジョンにおいて、主に同位体存在に関わる新しい表記法と正しい理解への啓蒙的活動の提案が行われた。また、新しい元素113、114、115、116、117、118および122に関し、今後も引き続き命名に向けた種々の学術的データ解析を必要とす
    ることが課題として挙げられた。無機化学ディビジョンからは、世界化学年におけるGeneral Publicationを種々試みる提案がなされており、この年以降にも何らかの形でその結果を議論していく。また、国際的な基準やデータ整理のための特殊なプロジェクトについても
    その会計から企画等まで綿密に議論が行われた。
     理事会においては時期副会長ならびに事務局各職が選挙により選ばれた。

   ・会議において日本が果たした役割
     2012年1月から巽和行先生がIUPAC会長に就任する。さらに、物理化学・生物物理化学(Division I)のDivision President に山内薫先生が就任する。その他、Titular Memberに澤本光男先生(Division IV: Macromolecules, polymers)、酒井健先生(Division II, Inorganic
    Chemsitry)および鎌田正裕先生(Committee of Chemistry Education)をはじめとし、重要な立ち位置で議論を交わし、他国の代表と連携を図っていた。また、日本化学会から常務理事の川島信之博士が参加することで、マネージメントとしてどのように研究者が立ち振る
    舞うべきかという点等について担当され、他の学術的化学あるいは化学工業の分野と合わせ、バランスのとれた視野で全員参加ができたものと感じた。Young Observerは世界から20名程度しかおらず、そのほとんどがUSからの選出であり、日本から1名参加したことは非
    常に意義があったと感じた。

   ・その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)
     2011年が世界化学年であることから、どのディヴィジョンにおいてもその取り組みと今後へのマイルストーンが掲げられた。ラテンアメリカで初めのIUPAC総会およびコングレスであったため、Puerto Ricoの地方紙「Caribbean Economy」にIUPACコングレスが取り上げられ、
    10ページ程度の特集版として大きな反響を及ぼした。
     また、IUPACが世界化学年の企画としてDistinguished Women in Chemistryの授賞式が行われ、世界各国から23名の女性化学者が選ばれ集合した。そのうち1名の日本人研究者がおり、相馬芳枝先生が受賞された。授賞式には日本からのDelicatesが参列し、その後約
    20名でお祝いの夕食会で急遽集まることができた。これを機に、普段日本でIUPAC委員として顔を合わる機会が少ない互いの連携も取りやすくなった。

7 会議の模様
   私は、Young Observerとして12の会議等に出席した。
   ①28 July (13:00 - 15:30): The IUPAC inter divisional Subcommittee on Materials Chemistry :
    分野を超えた物質化学のIUPACにおける発展的融合分野の取り扱いについて議論した。主に物理化学・生物物理化学、無機化学および高分子化学のディヴィジョンメンバーが参加した。
   ②28 July (17:00 - 20:00): Young Observers Briefing and Reception:
    各国のYoung Observerが約20名集い、IUPACとは?といったことからIUPAC Projectの取り扱いなどについて、Secretary General Prof. Blackから講義があり、4名のYoung Observer出身の先生方からご自分の経験やYoung Observersへの期待する点などが紹介された。
   ③29 July (9:00 - 17:30) Division II Inorganic Chemistry Division Meeting - day 1
   ④30 July (9:00 - 17:30): Division II Meeting - day 2
    無機化学ディビジョン会議は2日間にわたって行われ、特に世界化学年において、同位体周期表の正式な発表および世界化学実験の取り組みが紹介され議論した。また、新しいプロジェクトの申請内容と現在遂行中のプロジェクトの現状報告があった。
   ⑤31 July (9:00 - 12:30): Committee Meeting of Chemistry Education (Abbreviation: CCE) - day1. :
    二日間にわたり、化学教育の会議が行われ50名程度が参加し、特に後進国における化学教育への補助的活動が報告された。
   ⑥31 July (14:00 - 17:00): Project Meeting of “Coordination Polymer (CP) and Metal-Organic-Framework (MOF) for the nomenclatures and terminologies”:
    無機化学ディビジョンのメンバーで主に構成されており、有機配位子と金属イオンとでくみ上げられた配位高分子や金属‐有機―フレームワークの命名法等とその定義について議論した。
   ⑦1 August (9:00 - 12:30): CCE - day 2. :
    ⑤と関連。
   ⑧1 August (14:00 - 17:30): Attended to IUPAC Congress:
    無機関連の学術セッションに参加し、関連分野の広い視野における発表および議論に参加した。
   ⑨2 August (9:00 - 17:30): World Chemistry Leadership Meeting
    -President’s address and several preliminary talks.:IUPAC会長からの開会の辞と共に、3名の有識者による世界規模での再生可能エネルギーについての視点と取組が紹介された。
    -Breakout meeting on “Energy Storage”:30名程度のワーキンググループによるブレインストーミングをへたのち、エネルギー貯蔵のあり方と化学の貢献についてとりまとめた。このほか、4種のワーキンググループが同時に行われていた。
    -Closing Session:先の5つのワーキンググループでの議論の成果を紹介し、それらからの課題の共通認識を行った。
   ⑩3 August (9:00 - 17:30): Council Meeting - day 1 and Council Reception:
    ①から⑨(あるいは私が参加できない時間に同時に行われていた他のディヴィジョンを含む)におよぶ各委員会からの報告事項と承認事項の紹介および議論を経た承認が行われた。
   ⑪4 August (9:00 - 12:00): Council Meeting - day 2:
    IUPACの次期副会長ならびに事務局各職について選挙の投票が行われた。
   ⑫5 August: Closing Ceremony of IUPAC Congress:
    閉会式が行われ、次回の紹介があった。

   次回開催予定 2013年 8月上旬にイスタンブール、トルコで行われる予定である。


    
会議開催会場(プエルトリコ コングレスセンター)          8月4日理事会 会場の様子

このページのトップへ
日本学術会議 Science Council of Japan

〒106-8555 東京都港区六本木7-22-34 電話番号 03-3403-3793(代表) © Science Council of Japan