「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」Q&A

Q.この報告書は、現状維持が望ましいという結論で、改革する点はないのですか。

 わたしたちは、ナショナルアカデミーとして、(a)学術的に国を代表する機関としての地位、(b)そのための公的資格の付与、(c)国家財政支出による安定した財政基盤、(d)活動面での政府からの独立、(e)会員選考における自主性・独立性、の5つの要件を重視しています。この5要件を満たしている現在の設置形態を変更する積極的理由を見出すことは困難ですが、もしも仮に国の機関以外の設置形態を採用するとなれば、様々な法人形態のなかで特殊法人は考える余地がないわけではないと考えています。現時点では明確な結論が出ているわけではなく、さらに検討を深めていきます。
 その上で、活動については改革すべき点があると報告書には記しています。具体的には、①国際活動の強化、②日本学術会議の意思の表出と科学的助言機能の強化、③対話を通じた情報発信力の強化、④会員選考プロセスの透明性の向上、⑤事務局機能の強化の5つの項目が日本学術会議自身の改革課題と考えています。報告書では、この5項目それぞれについて、基本的認識、改革の方向性ととともに、具体的な取組まで記載しており、日本学術会議自ら、この内容を実現していきます。

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Q.退任する会員が同じ仲間の科学者を後任に選んでいるのではありませんか。

 現在の会員・連携会員が次の候補者を推薦する「コ・オプテーション方式」という方法で会員の選考を行っています。これは海外の多くのアカデミーで採用されている標準的な方法です。日本学術会議では、選挙による選考や、学協会による推薦といった方法も行ってきましたが、それぞれ弊害が生じたため、現在は「コ・オプテーション方式」を採用しています。
 第25期の選考では、105名の改選枠に対して、約1,300名の候補者の推薦があり、学協会などの情報提供も受けながら、候補者の専門分野や研究業績に基づいて選考委員会、幹事会、総会といった会議を経て決めているので、退任する会員の意向によって新しい会員を選んでいるわけではありません。

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Q.では、会員選考の方法は変えないのですか。

 コ・オプテーション方式は変えませんが、会員選考プロセスの透明性の向上を図ります。まず、次期に強化すべき審議課題と求める人材像を明確にし、選考方針を公表します。その際には、第三者から意見を聴くなどの方策も設けます。これまで重視してきた多様性をさらに強化するとともに、新しい分野の選考枠を拡大します。また、選考過程や、会員の選考理由・業績・抱負も公表することにしています。
 候補者のリストアップは、日本学術会議内だけでなく、協力学術研究団体、大学、産業界、NPO・NGOなど、日本学術会議外から情報提供いただく方策も検討して実現します。

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Q.国際的にはどのような活動をしているのですか。特定の国と学術研究事業を行っているのではないのですか。

 日本学術会議は、40以上の国際学術団体に加盟し、会員等がその役員を務め、運営や審議に参画しています。また、G7やG20参加各国のアカデミーが協力して、各国政府に対する科学的な政策提言を共同声明として取りまとめています。いずれも、日本学術会議が、日本の科学者の内外に対する代表機関であり、政府からの独立性を保障された組織であることにより実施しているもので、とても重要な活動です。
 今後、国際学術団体や各国アカデミーとの交流・連携を強化していきますが、日本学術会議は研究機関ではありませんので、特定の国との間で学術研究事業を行っているわけではありません。日本学術会議の国際的な活動についても知っていただけるよう、国際的な動向や成果について広報・発信を強化していきます。

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Q.たくさんの提言や報告を出していますが、審議会や学協会の活動と重なっているのではないですか。

 日本学術会議は、政府からの諮問への答申、政府への勧告、要望、声明、提言、報告、回答という「意思の表出」の権限を有しています。独立した立場からより広い視野に立った社会課題の発見や、中長期的に未来社会を展望した対応のあり方の提案が期待されており、政府の審議会や専門学術領域の学協会とは異なる日本学術会議固有の役割があると考えています。中長期的視点・俯瞰的視野・分野横断的な検討、の3点が担保されているかを常に自己点検していきます。
 そのため、委員会・分科会間の横断的な連携の仕組みを構築するとともに、中長期的な科学的助言を行うための分科会の設置など、日本学術会議内部での意思形成の仕組みを改革していきます。

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Q.提言や報告に関する議論や取りまとめは、日本学術会議の閉鎖的な環境で議論されて偏っているのではないですか。成果に結びついているのですか。

 日本学術会議の行う科学的助言に際しては、学術の側からの内発的な問題意識に加えて、政府や社会の関心も徴して課題設定を行うとともに、学協会、政策立案者、専門職団体、産業界、NGO・NPOや課題の当事者などとの意見交換・情報共有を図り、提言等の取りまとめに活かしています。
 このような意見交換の場などを通じて、提言等が政策立案者や社会にどのように受け止められ、どのような成果を生んだのか不断に点検・評価する活動を強めます。

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Q.会員選考、国際活動、意思の表出など、変えていくことがたくさんありますが、本当に実現できるのですか。

 この「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」は、2020年秋以降、会員との意見交換、会員・連携会員・学協会アンケート、学術フォーラムなどの議論を経て、2021年4月22日の総会で承認されたものです。不断の見直しを通じて、国民みなさまの幅広い理解や支持の下、ナショナルアカデミーとしての機能をより良く発揮できるよう、日本学術会議自身による改革をできることから進めておりますし、さらに進めていきます。

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