公開シンポジウム「生殖補助医療のこれからー社会の合意に至るために考えることー」

 生殖補助医療をどのような法的ルールに基づいて実施していくのか。これは、ドナーによる人工授精が普及し始めた1950年代から問われ続けてきた問題である。その後の生命科学技術の進展に伴い、精子・卵子提供、胚提供や代理懐胎などのように第三者が関わる場合、出生前診断などのように出産の継続を問いかける結果となる技術の場合、胚に対する研究の要請の場合など、問題は拡がりをみせている。これらは生命や親子関係に関わる重要な問題でありながら、従来の法制度では解決することが難しい。
 本分科会の前身である課題別委員会・生殖補助医療の在り方検討委員会は、厚生労働大臣及び法務大臣の審議依頼を受けて代理懐胎の是非及び代理懐胎による出生子の法的親子関係について検討を行い、平成20年1月31日に公開講演会「生殖補助医療のいま―社会的合意を求めて」を開催した。 併せて、同年4月8日に対外報告「代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題―社会的合意に向けて―」を公表し、同月16日には、両大臣にその骨子をまとめた「回答」を提出した。
 それから15年。「回答」の内容の一部は、令和2年成立の「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」に取り入れられ、さらなる立法も予定されている。しかし、未だ実現していないものも多い。社会の変化、技術の発達、国際的な動きが加速する中で、改めて、「回答」をふりかえり、今後の生殖補助医療とそれをとりまく立法の在り方について検討する。
 生殖補助医療をめぐる法律問題は、人類の歴史と未来に深く関わり、本来的に、アカデミアのみに委ねられるべき問題ではない。このような問題について、国民に、その検討の基礎となる正確な学問的情報を伝えることは、日本学術会議に課された使命の一つである。

イベント概要

開催日時 令和5年(2023年)8月26日(土)13:00~17:00
開催地 オンライン開催
対象 どなたでも参加いただけます
定員 500人
プログラム
総合司会:水野 紀子(日本学術会議第一部会員、白鷗大学法学部教授))
13:00~13:05 開会挨拶
水野 紀子(日本学術会議第一部会員、白鷗大学法学部教授)
13:05~13:45 第1セッション
「生殖補助医療、いま、何が問題か―生殖補助医療と日本学術会議」
司会:三宅 秀彦(日本学術会議連携会員、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授)
「生殖補助医療技術―不妊治療を超える現状」
久具 宏司(日本学術会議特任連携会員、国際医療福祉大学成田病院教授)
「生殖補助医療をめぐる法的問題」
西 希代子(日本学術会議連携会員、慶應義塾大学大学院法務研究科教授)
13:45~14:45 第2セッション
「生殖補助医療が問いかけるもの―人間の尊厳、人権、権利、そしてその先へ」
モデレーター:小浜 正子(日本学術会議連携会員、日本大学文理学部教授)
「生殖補助医療の法制化で問われる生命倫理、尊厳、自己決定権および生命権」
建石 真公子(日本学術会議連携会員、法政大学法学部教授)
「子の出自を知る権利とドナーの尊厳」
二宮 周平(日本学術会議連携会員、立命館大学名誉教授)
「生殖補助医療をめぐる人々―家族形成から見えてくる生殖補助医療を問う」
吉沢 豊予子(日本学術会議連携会員、関西国際大学保健医療学部教授)
15:00~16:00 第3セッション
「生殖補助医療と法―なにを、どのように、立法すべきか」
モデレーター:後藤 弘子(日本学術会議連携会員、千葉大学大学院社会科学研究院教授)
「生殖補助医療の法整備に関する我が国の状況」
窪田 充見(日本学術会議連携会員、神戸大学大学院法学研究科教授)
「生殖補助医療の規律に関する国際社会の動向」
早川 眞一郎(日本学術会議連携会員、専修大学法科大学院教授)
「遺伝学等の進歩と日本社会と法」
石井 哲也(日本学術会議連携会員、北海道大学安全衛生本部教授)
16:00~16:15 コメント
町野 朔(元課題別委員会「生殖補助医療の在り方検討委員会」副委員長、上智大学名誉教授)
16:15~16:45 質疑
16:45~17:00 閉会挨拶
水野紀子
 申込み 参加費無料・要事前申込
以下のリンク先申込フォームより、申し込み
申込フォームへのリンク ※申込み締め切り:2023年8月20日(日)
 問い合わせ 公開シンポジウム実行委員会連絡先
メールアドレス:seishokuhojyo(a)gmail.com ※(a)を@にしてお送りください。
備考 主催:日本学術会議法学委員会生殖補助医療と法分科会
共催:科学研究費(基礎研究(B))「包括的生殖補助医療の制定に向けて」(研究代表者:水野 紀子)