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北極科学サミット週間2015 開催結果報告
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)北極科学サミット週間2015
         (英文)Arctic Science Summit Week 2015 (ASSW2015)
(2)報 告 者 :北極科学サミット週間2015組織委員会委員長 白石 和行
(3)主   催 :国際北極科学委員会、共同主催:日本学術会議
(4)開催期間 :27年4月23日(木)~ 4月30日(木)
(5)開催場所 :富山国際会議場(富山県富山市)
(6)参加状況 :26の国と地域,708人(国外434人、国内274人)


2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:
北極科学サミット週間は、国際北極科学委員会(IASC)が中心となって毎年開催される会議の集合体であり、1999年にトロムソ(ノルウェー)で第1回ASSWが開催されてから当会議で17回目を迎え、世界の北極研究者や関連機関の代表者にとって最も重要な会合の一つとして位置づけられている。この会議の日本への招致は北極環境研究コンソーシアムが推奨し、日本学術会議国際対応分科会IASC小委員会が招致の提案をIASC評議員会へすることが承認され、2012年4月に行われたASSWにおいて決定された。通常、開催地の決定は2年前のASSW開催時であるが、今回は異例ともいえる開催3年前に決定するなど、我が国に対する期待の大きさがうかがえる。日本での開催は初めてである。

(2) 会議開催の意義・成果:
最近観測されている地球温暖化により、地球上で最も気温の上昇幅が大きい地域の一つとして、世界各国の科学者のみならず政策決定者も北極域の状況を注視している。特に北半球に位置する日本の気候は北極環境の変化の影響を受けやすいと考えられており、その注目度は高い。この会議を日本で開催することにより、我が国の研究成果を全世界へアピールすること、また多くの関係者へ交流の場を提供し、将来に向けて多様な議論を展開することができた。

(3) 当会議における主な議題(テーマ):
「有機金属化学の発展と使命」をテーマとして講演プログラムを作成した。有機金属化学の研究が広い分野で発展を遂げている現状で、最新の研究成果を集積することによって本国際会議の学術上の水準を高めることをめざした。一方では、材料、エネルギー、環境の人類が直面している問題の対策として重要な基礎学術、技術としての有機金属化学の役割が参加者に意識できるようにした。

(4) 当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
本会議を初めて日本で開催したことで、北極研究における日本のプレゼンスを世界に誇示する絶好の機会となった。また、今回は参加者数が事前予測を大きく上回り、過去最多となった。自然科学のみならず人文・社会科学といった研究者が集い、分野の垣根を越えた議論の場を提供することで、北極研究を一層発展させる契機となった。
4月27日の開会式では、本会議の名誉総裁にご就任いただいた高円宮妃殿下から北極研究への期待のお言葉を賜り、また安倍晋三内閣総理大臣からのメッセージも披露された。その後4日間にわたり、27の科学セッションを通じて自然科学のみならず人文・社会科学の研究発表や議論が活発に行なわれた。最終日の閉会式の共同声明では、今後の国際的な北極研究の方向性が示された。
―共同声明の内容―

  • 北極の変化は急速で、予測のための理解や適時な科学的知見の提供が十分にできていない。
  • 政策決定者や一般の人々は、北極の変化に対してより強い危機感を持つべきであり、地球全体に対して持つ重要性に気づくべきである。
  • 北極の変化に対応するには持続的な観測と、局所的・地域的・全球的なプロセスのより良い理解が欠かせない。
  • 北極の急速な変化についての研究活動においては、学問分野、空間スケールの違い、あるいは様々な知識体系を越えた連携に取り組まなければならない。
  • 北極の生態系、環境、社会の脆弱性および回復力を理解するには、非北極圏国からの参加を含む科学的な国際協力の強化が必要である。
  • 研究の優先順位の決定、あるいは研究計画のデザインや実行に北方の先住民コミュニティが参加する必要がある。
  • 教育と市民参加を通じ、先住民、科学者、政策決定者を含む北極の人々の間で観測・研究を長期的に支える仕組みを作り上げることが不可欠である。
  • 北極コミュニティの回復力を高め、持続可能な発展のためには、科学者、コミュニティ、政府、産業界を巻き込んだ共同アプローチが必要である。
4月26日には公開講演会「富山に北極がやって来た!」を開催し、富山県のみならず近隣県から約500名が参加した。北極研究者による講演と環境が変化している北極と富山の雪や氷を対比したパネルディスカッションが行われ、科学に関する一般社会の興味を大いに高めることにつながった。また、プレイベントとして富山県の小中学生を対象に実施した北極科学アイディアコンテスト及び、おもてなしキャッチコピーの表彰式を執り行った。これらのイベントを通じ、子供たちが北極科学に触れる機会を提供した。

(5) 次回会議への動き:
次回のASSW2016は、アメリカのフェアバンクスにおいて、2016年3月12日~18日の日程で開催予定である。

(6) 当会議開催中の模様:
4月23日(木)から8日間の会期中、幸いにも快晴に恵まれ、汗ばむほどの陽気となった。23日は8時半受付開始にもかかわらず早くから参加者が集まり、会の盛況ぶりを窺い知ることができた。参加者の中には既に東京といった大都市には滞在した経験のある方も少なくなく、富山での開催は好評であった。23日のレセプションでは、森雅志富山市長から歓迎の挨拶をいただいた。
4月26日(日)にはエクスカーションとして立山と五箇山へのバスツアーを企画したが、両コースとも予約の時点で満席となった。開通したばかりの北陸新幹線を利用し、近隣の県へ観光に行く参加者もいた。
4月27日(月)午前、富山国際会議場メインホールでASSW2015の名誉総裁に就任された高円宮妃殿下ご臨席のもと、科学シンポジウムISAR-4 / ICARPⅢの開会式が開催された。 主催者側から、白石和行ASSW2015組織委員長、Susan Barr IASC議長、大西隆日本学術会議会長が挨拶をし、その後、高円宮妃殿下からお言葉を賜り、来賓の藤井基之文部科学副大臣、宇都隆史外務大臣政務官、伊藤忠彦北極フロンティア議員連盟事務局次長、石井隆一富山県知事から御挨拶をいただいた後、内閣総理大臣メッセージが披露された。開会式に引き続いてChristopher Rapley教授(ロンドン大学)による特別講演“Bridging the Gap Connecting Arctic Science and Global Action”と、IASC設立25周年セレモニーとしてIASC運営の功績者らによる“IASC History Panel”が開催された。
4月29日(水)の夕刻には、会議場の近くのホテルでバンケットが行われ、約400名の参加者が、様々な料理と餅つき太鼓などのアトラクションを楽しんだ。
4月30日(木)に富山国際会議場メインホールで科学シンポジウム閉会式が行われた。Susan Barr IASC議長によるASSW2015の全体のまとめ、杉本敦子ISAR-4議長によるISAR-4のまとめの挨拶、David Hik ICARPⅢ議長による“TOYAMA CONFERENCE STATEMENT”及びポスター賞の発表があった。続いて白石和行ASSW2015組織委員長からLarry Hinzman ASSW2016組織委員長へASSW開催国の引継ぎを象徴する「たすき渡し」があり、Hinzman氏によるASSW2016の紹介が行われた。最後に白石委員長が運営に携わった事務局員や協力者を紹介して労をねぎらった後、閉会の宣言をした。

(7) その他特筆すべき事項:
今回は首都圏といった大都市ではなく、富山県での開催となり、当初は交通の利便性、集客率などが心配された。しかし、新幹線も開通し、交通に関しては問題がなかった。また、街はコンパクトで1週間程度滞在するにはちょうどよく、外国の参加者からも評価が高かった。何より、今回の成功は日本学術会議に加え、富山県・富山市・富山県教育委員会・富山大学などの地元の協力のたまものであった。


3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:平成27年4月26日(日)13:00~16:30
(2)開催場所:富山国際会議場 3階 メインホール
(3)主なテーマ:富山に北極がやって来た!
(4)参加者数、参加者の構成:富山県と近隣県から約500名
(5)開催の意義:氷河や社会的な注目度の高い海氷研究、北極の民俗や社会、人々の暮らしぶり、そして北極研究の意義や様子を広く伝える。
(6) 社会に対する還元効果とその成果: 公開講演会に先立って、富山県内の小中学生を対象に以下のプレイベントを実施した。
1:北極科学アイディアコンテスト。北極についての関心を深めていただくことを目的として、北極に行ったら何をしたいか、夢のある科学的アイディアを小学生を対象に募集。(募集期間2014年11月10日~2015年1月16日、応募総数264件、入賞48件。)
2:おもてなしキャッチコピー。富山県のみなさまに「ASSW2015」を知っていただくこと、そして、海外・県外から大勢、来県される北極研究者のみなさんを歓迎する気持ちを表していただくために小中学生を対象に募集した。大賞作品はポスター等に採用した。(募集期間2014年11月10日~12月19日、応募総数326件、入賞4件。)
公開講演会へプレイベントの受賞者とその家族を招待することで、年齢層の広い集客があった。また、次世代を担う子供たちの啓蒙活動に貢献した。
(7) その他:ポスターとチラシを県内の小中学校に配布、また北日本新聞社の後援を得、新聞にも掲載されたため、定員に達する申込みを得ることができた。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
同主催会議として位置づけられ、大西隆日本学術会議会長よりのご挨拶と、内閣総理大臣のメッセージをいただくことができたことにより、我が国の学官界をあげて北極研究に対応している姿勢が明確に打ち出され、『北極科学サミット週間』開催の学術的意義を日本国内のみならず世界的にも高めることができた。さらに、日本学術会議のお世話により開会式にご臨席賜った高円宮妃殿下のお言葉は、出席者に深い感銘を与えた。


(ポスターセッション)  (科学シンポジウムセッション) (公開講演会でのパネルディスカッション)




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