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第12回ヒトプロテオーム機構国際会議 開催結果報告
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)第12回ヒトプロテオーム機構国際会議
         (英文)12th Human Proteome Organisation World Congress (HUPO World Congress)
(2)報 告 者 : 第12 回ヒトプロテオーム機構国際会議組織委員会委員長 平野 久
(3)主   催 : 日本プロテオーム学会、日本学術会議
(4)開催期間 : 2013年9月14日(土)~ 9月18日(水)
(5)開催場所 : パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
(6)参加状況 : 42ヵ国・地域、1,580人(国外649人、国内931人)


2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:
HUPO は、プロテオーム研究の発展、研究手法の標準化、人材育成などを目的として2001 年に結成された世界最大のプロテオミクスに関する国際組織である。HUPO は、毎年9 月に国際会議(世界大会)を開催しており、これまでに、北アメリカ地区で3 回、ヨーロッパで4 回、アジア・オセアニア地区で3 回開催されてきた。アジアでは、これまで中国と韓国で開催されているが、日本での開催はなく、HUPO からは日本での開催が望まれていた。また、HUPO の下部組織にアジア・オセアニアヒトプロテオーム機構(AOHUPO)があるが、ここでもHUPO 国際会議の日本開催に対して強い要望があった。 そこで、日本におけるHUPO の下部組織である日本ヒトプロテオーム機構(Japan Human Proteome Organisation:JHUPO)は、2013 年に横浜において開催することを2008 年に企画し、招致の意思を表明。それに基づき、2010 年のHUPO 理事会及び総会において第12 回HUPO 国際会議の日本開催が決定された。JHUPO は、同国際会議に対応するため、2009 年にJHUPO を日本プロテオーム学会に学会化した。学会化前のJHUPO は会員約100 名であったが、日本プロテオーム学会は会員数が700名以上になり、HUPO 国際会議を開催できる支援組織に成長した。

(2) 会議開催の意義・成果:
本国際会議では、日本の多くの研究者が発表を行ったが、我が国の質量分析装置を中心とした分析技術や世界を先導するプロテオーム研究の成果を全世界の研究者に大きくアピールする機会になった。また、本会議では、日本の研究者と世界の研究者とが直接交流でき、論文だけからでは得られない多くの情報を入手することができ、日本のプロテオミクスに関する研究を一層発展させる契機となった。さらに本会議は、日本の研究者、特に若手研究者の国際化を促進するうえで大きな役割を果たした。

(3) 当会議における主な議題(テーマ):
「プロテオミクス解析技術の進化(The Evolution of Technology in Proteomics)」をメインテーマに、HUPO が主導するヒトプロテオームプロジェクトの他、診断マーカーのプロテオミクス、がんのプロテオミクス、腎臓・尿のプロテオミクス、神経プロテオミクス、肝細胞プロテオミクス、循環器病プロテオミクス、感染症・免疫プロテオミクス、グライコプロテオミクス、リン酸化及び情報伝達、キノミクス及び情報伝達、翻訳後修飾の質量分析、相互作用及びネットワーク、システム生物学、膜プロテオミクス及びオルガネラプロテオミクス、細胞表面のプロテオミクス、定量的質量分析、プロテインアレー、顕微質量分析、抗体プロテオミクス、構造生物学、バイオインフォーマティクス・データベース等についての研究発表と活発な議論が行われた。

(4) 当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
今回の会議では、プロテオミクスの解析技術を中心にして、ヒトプロテオームプロジェクト、疾患プロジェクト、組織・細胞プロテオミクス、グライコプロテオミクスやリン酸化プロテオミクスのような翻訳後修飾プロテオミクス、インタラクトミクス、システム生物学、膜プロテオミクス、オルガネラプロテオミクス、抗体プロテオミクス、バイオインフォーマティクス等の研究領域に関して研究成果の発表と討論が行われた。第一線の研究者が一堂に会して議論する場を提供することによって世界のプロテオミクスの発展に貢献することができた。また、組織委員会の公平な講演者の選定、参加者が交流しやすい環境の設定に対して多くの参加者から高い評価を得た。一方、本会議ではプロテオミクス関連分野で実績のある企業が大会運営に協力した。協賛企業は98 社、展示企業は56 社であった。機器や試薬のメーカーからは、展示会、ランチョンセミナー、イブニングセミナーなどで新しい分析機器や試薬に関して照会があった。参加者にとっては技術情報収集に、また協賛企業にとっては機器や試薬の情報提供に役立った。

(5) 次回会議への動き:
次回第13 回ヒトプロテオーム機構国際会議は2014 年にスペインのマドリッドで、また第14 回ヒトプロテオーム機構国際会議はカナダのバンクーバーで、第15 回は台湾の台北で開催されることが決まった。

(6) 当会議開催中の模様:
今回の会議は海外からの参加者が多かった。全体の参加者の約40%が海外からの参加者であった。また、海外からの講演者も多く、本会議ではプロテオミクスの第一線で活躍する195 名の研究者が講演を行ったが、そのうち158 名が海外からの講演者であった。特別招待講演数は11、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一フェローの講演やノーベル生理学医学賞を受賞した山中伸弥教授の講演などがあった。また、ポスター発表は900 演題を超えた。

(7) その他特筆すべき事項:
今回の国際会議では、プレコングレスイベントとして9 月11 日(水)~14 日(土)の4 日間、横浜市立大学先端医科学研究センターにてプロテオミクスに関するトレーニングコースを(注:14 日はパシフィコ横浜にて実施)、また9 月14 日(土)には教育講演会と臨床プロテ オミクス講演会をパシフィコ横浜にて実施した。また、横浜情報文化センターでは一般市民を対象とした市民講座を開催した。 また、今回のHUPO2013 では参加者にとって交流しやすい環境の整備に努めた。歓迎祝宴、 指揮者山田和樹氏とハンガリーのヴァイオリニスト サンドール・ヤボルカイ氏を招いた横浜シンフォニエッタのコングレスコンサート、バンケット、招待講演者夕食会、イブニングセミナーなど多くの交流の場を提供した。

(開会式) (開会宣言を行う平野久組織委員長) (主催挨拶を行う春日文子日本学術会議副会長)
(開会式) (開会宣言を行う平野久組織委員長) (主催挨拶を行う春日文子日本学術会議副会長)
(メインホール) (展示ホールでのポスター発表風景) (バンケット)
(メインホール) (展示ホールでのポスター発表風景) (バンケット)
(プレコングレストレーニングコース風景)
(プレコングレストレーニングコース風景)

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:2014 年9 月14 日(土) 13:00~16:00
(2)開催場所:横浜市情報文化センター 情文ホール
(3)主なテーマ:たんぱく質と病気
(4)参加者数、参加者の構成:一般市民 113 名
(5)開催の意義:一般市民にも、たんぱく質のことやプロテオーム解析による人の健康と病気の国際研究(ヒトプロテオームプロジェクト)の一端を理解いただくことを主眼として企画・実施。ヒトの体のさまざまな部分を構成し、また、体のさまざまな働きを担う最も大切な分子と言えるタンパク質は体の維持、成長など健康に欠かせないものである一方、病気とも密接に関係し、たんぱく質の増減や働きの抑制、亢進が病気の発症、進行関与していることが近年の研究で明らかになっており、たんぱく質を制御することで病気の治療や予防を行うための研究について紹介した。
(市民公開講座)
(市民公開講座)


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