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第5回国際デザイン学会連合国際会議開催結果報告
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)第5回国際デザイン学会連合国際会議
         (英文)International Conference of International Association of Societies of Design Research 2013 (略称:IASDR Conferene 2013)
(2)報 告 者 : 第5回国際デザイン学会連合国際会議組織運営委員会委員長 杉山 和雄
(3)主   催 : 日本デザイン学会、日本感性工学会、日本学術会議
(4)開催期間 : 2013年8月26日(月)~ 8月30日(金)
(5)開催場所 : 芝浦工業大学豊洲キャンパス(東京都江東区)
(6)参加状況 : 40ヵ国/1地域・800人(国外550人、国内250人)


2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:
日本デザイン学会は、1996年にアジア初のデザイン学の国際会議として中国・北京でアジアデザイン国際会議第1回大会を開催した。1999年には新潟県長岡市で第4回大会を、2003年には日本感性工学会・日本学術会議共同主催のもとに第6回アジアデザイン国際会議として茨城県つくば市において秋篠宮文仁親王御夫妻の御臨席を賜り、世界29ヵ国から450件の研究発表、800名の登録参加者によって開催した。この大会において、将来に向けてさらに幅広い国際デザイン学研究の推進について共同宣言が採択され、2005年に日本・韓国・台湾のデザイン学会、英国を拠点とするデザイン研究学会によってInternaitonal Association of Societies of Design Research (IASDR) を設立した。IASDRは第1回の雲林(台湾、2005)以降、2007年に香港、2009年にソウル、2011年には第4回大会をデルフト工科大学(オランダ)で実施した。2009年のIASDR理事会で2013年の大会を日本で開催することが決定し、日本デザイン学会はデザインと産業力を繋ぐ「知の統合」を目指して日本感性工学会との共同主催を計画した。日本での開催は、前身の第6回アジアデザイン国際会議以来10年ぶり3回目,IASDRとしては初の日本開催となる。今回は、特に工学分野におけるデザインの取り組みやサービスデザインなどもテーマに取り入れ、感性・サービスなど諸科学における知を統合し、デザイン学研究の発展と応用展開を図ることを目的とした。
(2) 会議開催の意義・成果:
デザイン学は、製品・環境・サービスなど、生活に関わるあらゆる要素と人を繋ぐ要素を研究課題とし、歴史、哲学、心理、生理、情報、設計など多くの科学・工学的研究を統合して問題解決に当たる、まさに知の横断的融合をもって構成される学問体系である。特に現在では、感性工学やサービス工学、認知科学、人間工学、生活科学などの複合的学問分野と相互に関係しながら研究が遂行されている。ユニヴァーサルデザイン、インタラクションデザイン、キッズデザインといった、複合的かつ多様な人々のQOLに寄与するモノづくりに貢献しており、特に、近年我が国では感性価値創造を国家の主要課題として取り上げる機運があるが、その中核的価値創造の実践研究として注目されている。 今回開催したIASDR2013は、製品・環境・サービスを創造するための基盤的技術である設計工学、感性工学との統合を強く意識し、横断的研究分野としてのデザイン研究の位置づけを世界に向けて発信する場を形成するという意味において画期的な研究集会として開催された。
(3) 当会議における主な議題(テーマ):
大会では、「Consilience and Innovation in Design:知の統合と革新」をメインテーマに掲げ、感性価値創造技術、サービスデザインの理論と実践、デザインマネジメント、デザイン哲学、デザインの歴史と文化、生理学・心理学・物理化学などの基礎科学とデザイン・感性工学の統合等を主要題目として研究発表と討論が行われた。その成果はデザイン学・感性工学と設計工学の関係の重要性の理解が深まった。
(4) 当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
本会議の日本開催は、デザイン学における世界トップレベルの研究者と日本の研究者、および感性工学と設計工学の研究者、加えて、Design of Excellence や学術会議連携プログラムに参画したデザイン実務者が直接意見を交わす絶好の機会となった。本会議は、世界40ヵ国1地域におよび多数の国々から、800名の参加者、573件の研究発表があった。参加国数、参加者数ともに、過去4回の大会を超える数字であり、主催団体の努力がデザイン研究の一層の活性化に大きく貢献したと言える。 日本学術会議との連携プログラム[知の統合としてのデザイン科学と新パラダイム「タイムアクシス・デザイン」]においては、「デザイン科学(Design Science)」を世界各国の研究者、教育者へ発信することを目的として、2部構成により開催し、デザイン研究におけるデザイン科学の位置付けを示した。このプログラムにより、デザイン領域における本活動が他の学術領域に対する「知の統合」のひとつの参考事例となったと考えられる。 また、市民公開プログラム[安全・安心なコミュニティのデザイン]においては、より安全でかつ安心した生活を提供するためにユニヴァーサルデザイン、キッズデザイン、ロボット工学の役割について、学術展示とも連携して分かりやすく一般市民に説明することができた。
(5) 次回会議への動き:
本会議は、東洋と西洋の交互開催を原則としており、次回の2015年はオーストラリアのブリスベーンに於いて開催されることとなった。
(6) 当会議開催中の模様:
開会式前日の8月26日には、博士課程学生の研究討議である Doctoral Colloquium,また2つのワークショップが行われ、多くの参加者が実践的な研究討議や新しいデザイン技術を学んだ。
8月27日は,10時から参加登録受け付けを開始し、参加者は開会式に先立って上映された、国際学生アニメーション大会(ICAF)のベストセレクションShowを堪能した。開会式会場はほぼ満席となり、引き続き行われた開会式には皇太子殿下の御臨席を賜り主催団体挨拶の後、英語でお言葉を頂いた。開会式の後皇太子殿下は キッズデザイン、ユニヴァーサルデザイン、グッドデザインなどに対する日本の取り組みの他、国際的なデザイン研究活動を紹介したDesign of Excellence 展示を巡覧された。
開会式の後から研究発表セッションが始まり、30日の閉会までに499件の口頭発表、74件のポスター発表が行われた。
日本学術会議との連携プログラムにおいては、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南アメリカ、オセアニアから約100名の研究者、教育者、および博士学生が参加し、知の統合としてのデザイン科学とその意義や枠組みに関する議論を進め、後半には、デザイン科学を応用する新パラダイム「タイムアクシス・デザイン」=人工物の継続的使用に伴う価値成長や人工物への愛着の深化などを実現し、ユーザや社会との新たな関係性の構築により、先述の社会的な諸課題に対応が可能なデザインの新たなパラダイムの提唱を行った。
また、市民公開プログラム[安全・安心なコミュニティのデザイン]は、Design of Excellenceと連携したユニヴァーサルデザイン、キッズデザインの成果である,デザイン賞受賞作品の展示も加え、一般市民にも分かりやすくデザインの果たすべき役割を伝えることができた。
また大会期間中に開催した国際デザイン学会連合理事会において、引き続き日本からの理事を選出することが決定し、日本側からの提案である本大会の成果も踏まえてデザイン学研究の国際的学術アーカイブを構築することを学会連合の目標の一つとして検討することとなった。
(7) その他特筆すべき事項:
本大会は2006年の学会連合理事会で方向性を見出し、2010年から本格的に計画を開始したが、その後2011年の東日本大震災を受けて激変した日本の環境での開催に対する不安もあったが、2011年秋の第4回大会では急速に復興する日本の状況を説明し、無事開催する事ができた。最終的な研究発表件数は573件であったが、アブストラクト投稿数は1160件を数えた。参加者の登録国数は40ヵ国1地域であったが、日本からは中南米・アフリカなどから多くの留学生が発表しており、実際の参加者の国数は50ヵ国ほどであり、まさにデザインの学術研究集会としては、世界最大規模のものとなった。

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:2013年8月28日(水) 14:00 ~ 16:30(展示は8月27日~30日)
(2)開催場所:芝浦工業大学 豊洲キャンパス 交流棟6階 大講義室(展示は,同テクノプラザ)
(3)主なテーマ、サブテーマ:「デザインから考える暮らしの『安心・安全』」
  1)生活支援ロボット技術の紹介
  2)安心・安全のためのユニヴァーサルデザイン
  3)子どものための安心・安全のデザイン
(4)参加者数、参加者の構成:講座への参加者は約70名,関連展示には大会参加者約700名が巡覧,参加者内訳:豊洲地区の一般市民50名、学生・学会参加者20名
(5)開催の意義: 東日本大震災以来、湾岸地区に生活する一般市民の多くは、生活の安心・安全に関して、非常に高い関心を持っている。特に今回の開催場所である芝浦工業大学豊洲キャンパスが、湾岸地区にあるので、より市民の関心の高い「安心・安全」というテーマをデザインの切り口で考えることの意義は高い。この意味でも今回の講座を通じて、広く一般市民の方々のデザインへの関心が高まることは、学術的にも、興味を持ってもらい機会として、大変重要な意義を持つと考えている。
(6)社会に対する還元効果とその成果:生活支援ロボット、安心・安全のためのユニヴァーサルデザインや子どもの為の安心・安全のデザインを具体的な事例をあげ、市民の方々と一緒に考えることは、日常生活で、こういった切り口で関心を持ってもらう重要なきっかけとなると思われるため、この公演をお聞きになって少しでも意識していただくことが、大変有意義であり社会還元の一つの形だと考えられる。
(7)その他:
  1)市民公開講座の開催時期の当日は、あいにく、豊洲地区周辺の学校の新学期と重なり、期待していた親子連れの参加は望めなかったが、関心の高い一般市民、特に主婦の方々の参加多くみられた。
  2)また、併設して実施した講演に関連する展示(ロボット及びキッズデザインの関連商品)には一般市民の方の関心が高く、講演開始の前後で展示にも興味を持っていただけた。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
日本学術会議と共同主催できたことで、開会式では皇太子殿下のご臨席を賜り、英語でご挨拶を賜ることができた。参加者からは、大変感銘をうけた光栄であるという感謝の声が多くきかれたと同時に、殿下にデザイン研究の広がりと感性工学・設計工学などの研究分野の役割について関心を強めていただくことができた。また、日本学術会議との連携プログラムにおいては、我が国における科学者の代表機関である日本学術会議が日本のアカデミーとしての立場から政策的な観点も踏まえ議論を進めたことによって、デザインの実践や歴史・理論、感性工学、設計工学、サービス工学、デザイン科学などを包含したデザイン学の発展に貢献できたと考えられる。また、会議全体として、日本学術会議との共同主催により国際的な広報活動も支援して頂くことができ、国内外の非常に広い分野の方に本会議を知って頂きくことができたことは、非常に多くの参加者数を得たことに繋がり、世界のデザイン学研究のさらなる発展につながると期待できる。

(開式の辞を述べる杉山和雄組織委員長) (主催者挨拶を述べる大西隆日本学術会議会長) (開会式でお言葉を述べられる皇太子殿下)
(開式の辞を述べる杉山和雄組織委員長) (主催者挨拶を述べる大西隆日本学術会議会長) (開会式でお言葉を述べられる皇太子殿下)

(来賓挨拶を述べる島尻安伊子内閣府大臣政務官) (展示物をご覧になる皇太子殿下) (開会式会場の様子)
(来賓挨拶を述べる島尻安伊子内閣府大臣政務官) (展示物をご覧になる皇太子殿下) (開会式会場の様子)

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