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2013年京都国際地理学会議
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)2013年京都国際地理学会議
         (英文)International Geographical Union Kyoto Regional Conference
(2)報告者 : 2013年京都国際地理学会議組織委員会委員長 石川義孝
(2)主   催 : 国際地理学連合日本委員会、日本学術会議
(3)開催期間 : 2013年8月4日(月)~8月9日(金)
(4)開催場所 : 国立京都国際会館(京都府京都市)
(5)参加状況 : 60ヵ国/2地域・1,431人(国外743人、国内688人)


2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯: 本会議は、国際地理学連合(International Geographical Union, IGU)の国際地理学会議 (International Geographical Congress, RC) の一つであり、世界最大の地理学の国際会議である。日本でこのように大規模な地理学の国際会議が開催されるのは、1980年に東京で開催された第24回国際地理学会議(International Geographical Congress, IGC)以来33年ぶりである。この度の日本開催では、世界のトップレベルの研究者が一堂に会して、最新の研究成果について討論や発表が行われ、地理学の発展とその応用展開を図ることが目的とされた。この会議を2013年8月に日本で開催することは、2008年8月に開催されたIGUの総会において決定された。これを受け、IGU日本委員会は、日本開催準備のために、2013年京都国際地理学会議準備委員会を2008年に、次いで2013年京都国際地理学会議組織委員会を2010年に設置し、開催の準備を進めることとなった。

(2) 会議開催の意義・成果: この会議を日本で開催することは、わが国で組織化されつつある、人文社会科学を含む多岐にわたる地球環境研究への地理学の取組を、全世界の研究者に大きくアピールし、多くの研究者の参画を促す絶好の機会となるとともに、わが国のこの分野の科学者に、世界の多くの科学者と直接交流する機会を与えることとなり、わが国の地理学に関する研究を一層発展させる契機となる。また、市民公開講座をはじめとする市民や学生、生徒を対象とした関連事業を行うことにより、日本人科学者のもたらした研究成果を社会に還元し、科学に関する一般社会の興味を大いに高めることが期待された。

(3) 当会議における主な議題(テーマ):会議テーマ「地球の将来のための伝統智と近代知」

(4) 当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
・地理学は伝統的に、自然地理学と人文地理学に二分されており、これが従来、地理学がその統合的性格の有効性を発揮する妨げとなることも、ないわけではなかった。一方、近年では、地理学の持つ文理融合的な学問体系の中で、地球環境や災害・防災などの研究など、複数の異なるアプローチを動員することの重要性が指摘されている。これを踏まえ、プレナリー・セッションでは、分野横断的な研究者による「地球の将来のための伝統智と近代知」というテーマが設定された。さらに、IGUの重要なミッションである「国際地球理解年(International Year of Global Understanding、IYGU)」への取り組みの意義についても、当会議で確認された。こうした潮流を受け、当会議では、地理学の持つ複合的、統合的視角の重要性が再確認されるとともに、こうした視角からの具体的な事例研究への議論をおおいに深めることができた。
・かつては、4年に一度IGCが、その中間年にRCが開催されていたが、2010年から2016年までは、IGC/RCが毎年開催される。そのため、それぞれの(特に)RCは、前年のIGC/RCとの連携を念頭においた会議運営を考慮する必要がある。2012年のIGCケルン大会が、大きな成功を収めたため、当会議では、その優れた面をできるだけ参考にした。特に、会議で中心的な役割を果たすコミッション単位の議論の場を重視し、コミッション・セッションの設定と募集を行った。さらに、IGUの40のコミッションの境界境域やその他の分野をカバーするため、ジョイント・セッション、一般セッションなどのカテゴリーを設け、多くの領域にわたって日本人研究者が参加できるようにする運営方針を取った。さらに、次年度開催のクラコフRCの宣伝にも留意した。
・当会議では、若手研究者の支援にも力を入れた。具体的には、会議の参加登録料を、通常の参加者に比較し、<学生>資格での登録料を半額以下に抑えたほか、独自に、途上国から参加する<学生>に対し、旅費・滞在費の補助として、一人あたり10万円を支給する措置(カテゴリーA)や、登録料を免除する措置(カテゴリーB)もとった。さらに、<学生>のポスター発表者の中から、優秀発表者を選考し、閉会式で表彰を行った。以上のような若手支援策は、IGUの役員や、内外の参加者から高い評価を受けた。

(5) 次回会議への動き: 次回会議は、2014年8月18~22日に、ポーランドのクラコフ市で、「変化、挑戦、責任」を主会議テーマに、開催される予定である。

(6) 当会議開催中の模様: 開催プログラムは、以下の通り。

 会議日程 午前 午後 夜
 8月4日(日) 市民公開講座 参加受付開始、市民公開講座
 8月5日(月) 開会式 コミッション・セッション,一般セッション,ほか カクテルパーティー
 8月6日(火) コミッション・セッション,一般セッション,ポスター発表、ほか コミッション・セッション,一般セッション,ほか
 8月7日(水) コミッション・セッション,一般セッション,ポスター発表、ほか コミッション・セッション,一般セッション,ほか ガラ・ディナー
 8月8日(木) コミッション・セッション,一般セッション,ポスター発表、ほか コミッション・セッション,一般セッション,ほか
 8月9日(金) 閉会式

・8月5日の開会式では 秋篠宮同妃両殿下ご臨席のもと、組織委員会委員長の石川義孝、IGU日本委員会委員長の春山成子、日本学術会議会長の大西隆、IGU会長ウラジミール・コロソフの挨拶の後、秋篠宮殿下のお言葉をいただき、さらにその後、京都市副市長の塚本稔、文部科学大臣の下村博文(代読)、内閣総理大臣の安倍晋三(代読)の祝辞ののち、第10回 国際地理オリンピックの金メダル受賞者を表彰した。秋篠宮殿下のお言葉は、ご自身のこれまでのご関心を踏まえ、地理学の統合的視角の重要性を強調されたものとして、参加者に大きな感銘を与えた。
・8月5日午後から8日午後にかけて、各種セッションが開催され、プレナリー・セッション9件、コミッション・セッション780件、一般セッション254件、ジョイント・セッション76件、特別セッション8件、ポスター128件、その他1件、合計1,256件の活発な発表が行われた。
・8月9日午前の閉会式では、組織委員会委員長の石川義孝、IGU日本委員会委員長の春山成子、IGU会長ウラジミール・コロソフの挨拶の後、IGU Laureats d’Honneur(IGU桂冠賞)の表彰式、日本地理学会名誉会員の表彰式、優秀ポスター発表者の表彰式、IGU/KRCのグラント受賞者の表彰式、今後のRC/IGC開催国(ポーランド、ロシア、中国)の挨拶が行われた。
・参加者数は、当初予定を大きく上回り、IGUのRCとしては異例の多さとなった。ちなみに、今回の参加者数は、1980年のIGC東京大会の参加者数に匹敵している。

(7) その他特筆すべき事項:
・当会議に対し、内外の多くの参加者から、会議運営の素晴らしさについての賛辞が寄せられた(会議に対する高い評価は、公式ホームページから実施している会議参加者へのアンケート調査の結果にも、現れている)。これは、会議開催の経費をできるだけ押さえるため、組織委員会のメンバーが会議の企画や運営に独自の工夫をこらし、懸命の努力を重ねた結果である。
・当会議が成功した、という評価の重要な一要因として、京都議定書が誕生した京都国際会館を会場として、環境研究の重要性を真正面から訴えた点を挙げることができると思われる。
・当会議を円滑に運営し成果をあげるため、主催母体であるIGUの役員会とは大会の準備段階からIGU副会長の氷見山幸夫をリエゾンとして緊密に連携し、また大会開催の3日前から大会終了までの間、役員会専用の会議室を確保するなど、最大限の便宜をはらった。また、役員の方々に、大会のメインテーマ「地球の将来のための伝統智と近代知」を現地体験してもらうための巡検を、杉浦和子教授や野間晴雄教授が企画・実施し、大変好評であった。
・会議開始の前日に、わが国の地理関連学協会の連合体である地理学連携機構(碓井照子代表)主催による「2013年京都国際地理学会議のための交流の夕べ」を開催し、日本学術会議会長、IGU役員、国内地理学コミュニテイの代表者らの交流を深めた。また、それに先立ち、日本学術会議会長とIGU役員会との意見交換会を実施し、IYGU等について議論した。
・当会議の準備および運営にさいし、多数の院生や学生に、ホームページの更新や会場でのアシスタントをはじめとする多くの作業に関し、積極的にご協力いただいた。こうした協力なしでは、会議の成功はあり得なかったであろう。この点に関しても、ここで言及しておきたい。



(秋篠宮同妃両殿下御臨席のもと、開式の辞を述べる石川義孝組織委員長)

(主催者挨拶を行う大西隆日本学術会議会長)

(開会式でお言葉を述べられる秋篠宮殿下)

(地理オリンピック表彰式)

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:2013年8月4日(日)10:30~16:00
(2)開催場所:京都大学百周年時計台記念館大ホール
(3)主なテーマ、サブテーマ:午前の特別講演の演題は「地理環境と言葉」、午後の講演会は「ジオパークから学ぶ日本の自然と文化」。
(4)参加者数、参加者の構成:約130名。およそ6割以上は、40歳代以上。地理学にかかわりのある仕事についておられる方が、約3割。
(5)開催の意義:
  聴衆は、20代から60代以上の幅広い年齢層にわたり、職業、肩書きも学生から社会人、リタイアされた方まで多様であった。国際会議参加者でない関東からの参加者もいて、一般の方に興味をもっていただけるプログラムであったと思われる。講演の内容は、言語、文化の話から、自然環境の保全と活用と幅広い内容であったが、いずれの講演も地理学の考え方が通底して、地理学の持つ幅の広さとおもしろさを聴衆は感じることができたと思われる。今回の講演者陣は、多忙な方が多く、通常では一同に会して講演会をするのは困難であるが、今回は国際会議と関連した講演会であったため、今回のようなプログラムを組むことができた。この講演会の内容は、今後、地理学関連の市販の雑誌などに整理して掲載することが決まっている。今回の講演会は、地理学の学問のおもしろさを多角的に示すことができ、開催の意義がおおきかったと思われる。
(6)社会に対する還元効果とその成果:
  研究者が考える社会への情報発信は往々にして、一方的な研究成果の伝達のみを主目的としたものになりがちである。そうした講演会では、聴衆は新しい知識に触れることはできるものの、科学を身近なもの、あるいは自らの問題を解決するものとして感じることができない。この講演会では、生活や人生の中に地理学がどのようにかかわるのかということを、テーマとして、地理学科出身の作家の講演と、ジオパークについての講演という構成にしたため聴衆は、地理学の見方や考え方が、生きていく上で役にたつものだという生活者の視点での科学のおもしろさや必要性を、実感できたと思われる。


(市民公開講座「ジオパークから学ぶ日本の自然と文化」)

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
日本学術会議との共同主催となったことの意義は、はかりしれない。特に、わが国の学術コミュニティにこの会議を広くアピールし、関連する諸分野からの参加や協力が得られたこと、市民公開講座の開催等により、幅広い国民に関心をもってもらえたこと、国際的な認知度と評価を高めることができたこと、などの意味は大きい。また、会議の財政面、運営面でも多大の支援を得ることができ、会議の質を大いに高めることができた。


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