日本学術会議 トップページ > 国際会議・シンポジウムの開催 > 国際会議結果等
 
 
第14回国際免疫学会議
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文) 第14回国際免疫学会議
         (英文) 14th International Congress of Immunology
(2)報 告 者 : 第14回国際免疫学会議組織委員会委員長 岸本忠三
(3)主   催 : 特定非営利活動法人日本免疫学会、日本学術会議
(4)開催期間 : 平成22年8月21日(土)~ 8月27日(金)
(5)開催場所 : 神戸ポートピアホテル、神戸国際会議場、神戸国際展示場(兵庫県神戸市)
(6)参加状況 : 74ヵ国/2地域・6,009人(国外3,414人、国内2,595人)

2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:
 国際免疫学会議は、国際免疫学会連合(International Union of Immunological Societies: IUIS)のイニシアチブのもとに3年ごとに開催される会議で、1971年の第1回から当会議で第14回を迎える。免疫学分野で最も歴史のある国際会議である。既に第5回会議が1983年京都で行われ、非常に高い評価を得た。その後、日本の免疫学の国際的な台頭が著しいことから、日本での開催を望む声が高まり、2004年7月モントリオールで開催された国際免疫学会連合の理事会および総会において、第14回国際免疫学会議を2010年8月に日本で開催することが決定された。これを受け、特定非営利活動法人日本免疫学会は、日本開催準備のために第14回国際免疫学会議組織委員会を2006年に設置した。本会議では、世界のトップレベルの研究者が一堂に会し、最新の研究成果について討論や発表が行われ、免疫学の発展とその応用展開を図ることができた。
(2)会議開催の意義:
 我が国および世界の免疫学の発展に寄与し、免疫学に関わる多様な問題に光をあて、感染症、癌、自己免疫疾患、アレルギー疾患などの撲滅を目指して免疫学研究を促進すること。
(3)当会議における主な議題(テーマ):
 本会議のメインテーマは「21世紀における免疫学の潮流:感染症、癌、自己免疫疾患、アレルギーの撲滅をめざして」である。取り扱う主要題目としては、自然免疫による病原体認識、細菌感染、ウイルス感染、原虫・寄生虫感染、樹状細胞、制御性T細胞、NK細胞、NKT細胞、T細胞活性化の分子機構、B細胞活性化の分子機構、免疫応答のイメージング、リンパ球分化、粘膜免疫、サイトカインと疾患、比較免疫:病原体認識受容体から抗原認識受容体、造血・リンパ器官形成、リンパ球・白血球遊走、移植免疫、癌免疫療法、臓器特異的自己免疫疾患、全身性自己免疫疾患の診断と治療法、アレルギー、ウイルス感染と獲得免疫・メモリー、炎症とメディエーター、免疫不全、内分泌・神経と免疫、システムバイオロジーと免疫、ワクチン開発の進歩、免疫とマイクロRNA、免疫と細胞生物学(オートファジー・膜輸送・ファゴサイトーシス)等、広く、基礎免疫学、臨床免疫学の両面にわたる。
(4)当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
 本会議を日本で開催することにより、我が国の世界一流の免疫学研究の最新状況を全世界の研究者にさらに大きくアピールすることができた。特に、日本がリードしているサイトカイン研究、自然免疫研究、T細胞研究などの分野ではこの状況が顕著であった。また、我が国の本分野の科学者に世界の多くの科学者と直接交流することにより、我が国の免疫学研究を一層発展させる契機となった。さらに、市民公開講座や日本の免疫学の歴史に関する陳列・展示を行うことにより、日本人科学者のもたらした成果について、社会に還元し、科学に関する一般社会の興味を高めることができた。
(5)次回会議への動き:
  次回の会議は2013年にローマで行われるが、今回の会議プログラムが非常によかったことから、今回のプログラムフォーマット(午前中に招待演者によるシンポジウム、お昼にはランチタイムセミナー、午後には一般演題から選択されたものをワークショップで扱うというもの)が、殆どそのままローマでも踏襲されることになった。また、今回の基礎免疫学のみならず臨床免疫学にも重点を置いたプログラムの組み方についても、ローマで引き継がれるとのことである。
(6)当会議開催中の模様:
 会議は初日から口蹄疫・インフルエンザに関する市民講座は満員、これに引き続き、翌日朝からの若手研究者・臨床医のための免疫学教育コースも満員、さらに、その後の会議の各セッションも大入りの状態で、会議の全期間を通して非常に活発な討論が行われた。なかでも、日本がリードする自然免疫、抑制性T細胞、サイトカインのセッションなどはいずれも立ち見が出る程の満員状態であった。また、これまでの会議プログラムは基礎免疫学に重きが置かれてきたが、今回はシンポジウムの3分の1が臨床免疫学関連のものであり、臨床医の参加も多く、免疫の疾患の診断、治療などについてもホットな知見の発表が多かった。また、癌免疫、抗体療法、細胞療法の3つについては臨床医向けの特別シンポジウムが行われ、ここでも多くの参加者を集めた。会議期間中の企業展示、ポスター発表にも多くの人が集まり、夕方には軽食、飲み物を出してポスター討論を行ったところ、非常に盛況で、肩と肩が触れ合いながら討論を行うという状態であった。これまでの国際免疫学会議とは異なり、閉会式にも多くの人が集まり、賑やかに会議が終了した。特に海外の参加者からは、これまでの国際免疫学会議の中でもっとも素晴らしいものだった、という声が多く聞かれた。
(7)その他特筆すべき事項:
 本会議の招致は1999年頃からその準備を開始した。その後、2001年にストックホルムで行われたIUIS理事会では2007年開催地として日本が決定されたが、その直後のIUIS評議員会では理事会決定が覆され、開催地はリオデジャネイロとなってしまった。そこで、再度、十分な招致活動を行い、2004年のモントリオールでのIUIS理事会および評議員会で招致演説を行い、決選投票の結果、神戸で開催されることが決定した。会議実施が2010年であったことから、都合、約10年の準備期間を経て、本会議を開催したことになる。このように、十分に時間をかけて準備を尽くしたことが本会議の成功につながった。また、会議実施の1年前にはAdvisory Board member全員を日本に招致し、会議の運営に関して十分な討議を行い、アドバイスを得たこともスムーズな会議運営に大いに役に立った。
 また、神戸市からの支援は非常に有効であった。なかでも、会議開催のための補助金の支出、会議参加者6,000名へのポートライナー無料乗車券提供、各種レストランなどの割引、神戸市目抜き通りへの当会議開催を知らせる幟の掲示など、神戸市からは有形、無形の支援を得ることができ、神戸市が会議開催地として参加者から非常に好印象として受け入れられたことは特記すべきことと思われる。

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:8月21日(土) 14:00~17:00
(2)開催場所:神戸国際会議場(3階 国際会議室)
(3)主なテーマと講演演題:「人類とウイルスの闘い:医学の挑戦」
 講演1:明石博臣(東大獣医)「口蹄疫-最も恐れられている動物の病気」
 講演2:喜田宏(北大獣医)「鳥、ブタ、そしてパンデミックインフルエンザ」
 講演3:森島恒雄(岡山大小児科)「新型インフルエンザと子どもたち」
(4)参加者数、参加者の構成:総参加者数211名、内訳:高校生75名、その他の学生15名、一般121名
(5)開催の意義:
 ヒトや家畜に感染するウイルスがどのようにして体内に侵入し生き延びて、大きな経済問題となるような病気を起こすのか?それを防ぐ手立てはあるのか?ウイルスに打ち勝つ免疫力とは?などの問題について、一般市民のためにわかりやすく解説する。これにより、生体防御、免疫学の新しい知識を社会に還元し、今後可能性のあるウイルスパンデミックへの備えとして一般市民の生体防御に対する知識の向上を図る。
(6)社会に対する還元効果とその成果:
 3名の演者が口蹄疫とインフルエンザに関して非常にわかりやすく説明を行った。このため、参加者と講演者との間で熱心な質疑応答が行われ、講座後に回収したアンケートでは、参加者から、わかりやすくて役に立ったという声が多かった。昨年から今年にかけて新型インフルエンザの蔓延、口蹄疫による経済的大損失のあった中、タイムリーな社会還元活動であったと思われる。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
 日本学術会議との共同主催となったことにより、8月22日の開会式では、内閣総理大臣メッセージとともに、日本学術会議・唐木副会長から御挨拶をいただき、日本政府が本会議に対して大きな支援をしていることを広く国内外へ示すことができた。さらに、会場借料の一部負担があったことにより、多くの参加者を得て、非常によい環境の下で会議を開催することができた。


          (開会式での主催者挨拶 左:岸本組織委員長、右:唐木副会長)

(シンポジウム)                       (デビッド・ボルティモア博士の講演)

(ポスターセッション)                    (ウェルカムレセプションでの鏡割り)

このページのトップへ
日本学術会議 Science Council of Japan

〒106-8555 東京都港区六本木7-22-34 電話番号 03-3403-3793(代表) © Science Council of Japan