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第14回国際内分泌学会議
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)第14回国際内分泌学会議
         (英文)14th International Congress of Endocrinology (ICE2010)
(2)報 告 者 : 第14回国際内分泌学会議組織委員会委員長 中尾 一和
(3)主   催 : 社団法人日本内分泌学会、日本学術会議
(4)開催期間 : 2010年3月26日(金)~ 3月30日(火)
(5)開催場所 : 国立京都国際会館(京都府京都市)
(6)参加状況 : 67カ国・地域、4,508人(国外2,102人、国内2,406人)

2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:
 (i) 第14回国際内分泌学会議は、世界の70カ国・地域の内分泌学会が加盟する国際内分泌学会(International Society of Endocrinology:略称ISE)が4年ごとに開催する(2008年からは2年ごと)学術会議であり、内分泌学の基礎研究の向上とその臨床的応用研究の推進、ひいては生命科学の知識の発展を目指すとともに、世界各国の研究者の交流、親睦を推進することを目的とした重要な会議である。日本での開催は、2004年の社団法人日本内分泌学会(The Japan Endocrine Society:略称JES)評議員会において、次回(2008年)開催が決定しているブラジル開催の後の次々回の開催の立候補を決め、第12回国際内分泌学会議の中央委員会において次々回の日本開催が圧倒的多数の賛成により承認された。その後4年毎に開催されていた国際内分泌学会が2年毎の開催に変更になり、2010年の開催が決定した。これを受け、社団法人日本内分泌学会は、日本開催準備のために、第14回国際内分泌学会議組織委員会を2007年に設置し、開催の準備を進めることとなった。日本においては1988年に京都で第8回国際内分泌学会議を開催して以来22年ぶりの開催となる。再びアジアにおいて開催されることは、世界の先進国のみならず開発途上国を多く有するアジア諸国への大きな刺激をあたえることでもあり、非常に有意義なことである。
 (ii) 内分泌学は、生体内の細胞間情報伝達シグナルであるホルモンの作用、情報伝達様式、その 破綻による病気について研究する学問であり、従来は下垂体や膵臓のランゲルハンス島のように特殊な臓器や組織が内分泌器官と考えられてきたが、近年心臓や血管、脂肪組織までが内分泌臓器であることが判明し、全身が内分泌臓器であると考えられるようになった。そのため、内分泌学は、臓器別の専門分化が進む医学領域の中で、全身を対象とする唯一の学問領域になりつつあり、内科学の一分野としてのみならず、外科、産婦人科、泌尿器科、脳外科など広範な領域の研究者や医師が参加している。こうした内分泌機能の破綻により生じる病態は、従来の内分泌学で考えられていた狭い領域の疾患群にとどまらず、生活習慣病に代表されるような肥満症、糖尿病、高血圧症、高脂血症が重積するメタボリック症候群につながり、多くの臓器障害をもたらすという事が明らかになりつつある。内分泌学の発展により最大の疾患リスクファクターであるメタボリック症候群進展の解明が可能になり、この成果は現代人が最も必要とする疾患予防に大いに貢献するものである。
(2)会議開催の意義・成果:
 当会議を日本で開催することは、最近当会議に多くの日本人研究者が特別講演、シンポジウム等に参加し、指導的役割を果たしていることからも当然のことと考えられるが、日本での開催は我が国の若い研究者に更に大きな刺激を与え、その視野を広げることに役立つのみでなく、我が国における内分泌学の一層の発展に寄与するところが大である。また、市民公開講座の開催を機に日本人研究者がもたらした成果について、社会に還元し、科学に関する一般社会の興味を大いに高めることが期待される。
(3)当会議における主な議題(テーマ):
 当会議では、「内分泌代謝学の新時代と国際連携」をメインテーマに、「ホルモンの概念」の提唱以来100年の研究成果を踏まえて新時代を迎える内分泌学の主要テーマに関する特別講演、研究発表、討論等が行われ、その成果は、医学の進歩のみならず、医療の発展のためにも必須であり、今後の極めて重要な医学の課題であると期待される。
(4)当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
 充実したプログラムを用意した結果、多くの日本の研究者が、ノーベル賞受賞者を含む世界の著名な研究者と同じ空間・時間を共有し、互いの研究成果を発表し、直に討論、考察することで、今後の医学の進歩、医療の発展のために極めて重要な生きた機会となった。また、多くの大学院生、学生にも参加の機会を与えることにより、我が国の若い研究者に更に大きな刺激を与え、その視野を広げることに役立つのみでなく、我が国における内分泌学の一層の発展に寄与することとなった。
 また、市民向けプログラムとして、市民公開講座を開催し、650名の参加者があった。日本人研究者がもたらした成果について、社会に還元し、科学に関する一般社会の興味を大いに高めることができた。
(5)次回会議への動き:
  次回の国際内分泌学会議は、2012年にイタリアのフィレンツェにて開催されることが決定した。
(6)当会議開催中の模様:
 第14回国際内分泌学会議(ICE2010)は、3月26日、桜と雪が舞う幻想的な光景の中、幕を開けた。開会式典およびその後の懇親会には天皇皇后両陛下、川端達夫 内閣府特命担当大臣・文部科学大臣に御臨席いただき、翌日から始まるプログラムへの期待を高めるものとなった。
 ICE2010は、新体制の国際内分泌学会の下で行われる、初めての国際会議である。日本内分泌学会はその最初の開催国として、学問と国際交流の両面から、この内分泌代謝学の国際会議がこれまでに無く魅力的なものになるよう準備を進めてきたと自負している。今回の会議では、「内分泌代謝学の新時代と国際連携」をメインテーマに、「ホルモンの概念」の提唱以来100 年の研究成果を踏まえて、新時代を迎える内分泌学の主要テーマに関する多くのセッションが企画された。ノーベル賞受賞者のMurad教授を含む11人のプレナリー講演者、JESMeister賞受賞講演、64題のMeet-the-Professorは全題で海外研究者と日本人研究者が講演した。シンポジウム415題、JES主催シンポジウム49題、一般演題も1,188題を数え、パネルディスカッション「臨床内分泌代謝学の針路」「基礎内分泌代謝学の針路」は、日本から世界に向けて内分泌代謝学の将来の針路について提案・発信した。
 また、市民講座は「ホルモンを活かす成長・健康・長寿」とし、特別ゲストの北京五輪400メートルリレー銅メダル受賞者の朝原宣冶氏に「ホルモンとスポーツ」について講演いただき大盛況のうちに終わった。

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:2010年3月28日(日)14:00~16:30
(2)開催場所:国立京都国際会館 Annex1
(3)主なテーマ:ホルモンと成長・健康・長寿
(4)参加者数、参加者の構成:650名(一般市民、学会参加者)
(5)開催の意義:
 「ホルモンの話は難しいから」と敬遠されがちの予想に反し、専門医による講演は大変好評を得た。内分泌への市民の関心の高さから市民公開講座を開催する意義を再確認した。
(6)社会に対する還元効果とその成果:
 第一部では、北京オリンピック銅メダリストの朝原宣治氏をゲストに迎え、トップアスリートとしての体調管理、自ら名づけた「ホルモントレーニング」の体験談を語ってもらった。又、第二部では、一般市民にとっては普段聞く機会のない専門医から、最新の研究事例にもとづく内容をデータを交えてわかりやすく講演して頂くなど、予定時間をオーバーしてプログラムは盛況のうちに終了した。
 近年では健康維持やアンチエイジングの観点からもホルモンへの関心は高まっており、今後も、日本内分泌学会の活動が期待されている。
(7)その他:
 京都新聞及び毎日新聞にて広告掲載、京都市民だけでなく、大阪、神戸からの参加者も目立った。


4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
 天皇皇后両陛下の御臨席を賜り、京都で、ICE2010を開催できたことは、誠に名誉なことであり、日本内分泌学会への期待の大きさを実感することができた。
 また、開会式後に開催された天皇皇后両陛下を囲んでの懇親会は、和やかな雰囲気の中、直にお言葉を交わすことができ、国内外の参加者にとって非常に光栄な機会となった。
 ITの発達で「世界中の内分泌学に関わる基礎研究者や臨床研究者の考え」を知ることはそれほど困難ではない時代である。しかしながら、「世界の研究者と同じ空間で時間を共有し、互いの研究成果を発表し、直接に討論し考察する機会」ほど将来につながる生きた機会はない。
 当会議を成功に導くにあたりご支援並びにご協力いただいた諸機関、諸団体の皆様に、この場を借りてお礼を申し上げたい。

  
(開会式の模様)                       (懇親会の模様)
  
(来賓挨拶を行う川端達夫内閣府特命担当大臣)   (主催者挨拶を行う金澤日本学術会議会長)

  
(シンポジウムの模様)                    (ウエルカムレセプションの模様)

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