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第14回国際生物無機化学会議
1 開催概要
(1)会 議 名 : (和文)第14回国際生物無機化学会議
         (英文)14th International Conference on Biological Inorganic Chemistry (ICBIC14)
(2)報 告 者 : 第14回国際生物無機化学会議組織委員会委員長 渡辺 芳人
(3)主   催 : 社団法人日本化学会、錯体化学会、日本学術会議
(4)開催期間 : 平成21年7月25日(土)~ 7月30日(木)
(5)開催場所 : 名古屋国際会議場(愛知県名古屋市)
(6)参加状況 : 31ヵ国/1地域・718人(国外412人、国内306人)


                       (開会式の模様)
2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:
 本国際会議は、国際生物無機化学会(The Society of Biological Inorganic Chemistry (SBIC))が、2年ごとに世界各地において開催する生物無機化学に関する国際会議であり、1983年にイタリアのフィレンツェで開催された第一回国際生物無機化学会議以来、常に世界最高の生物無機化学研究の発表の場としての役割を果たして来た。近年ではその活動は年々活発になり、本国際会議には世界30~40カ国から600~1000名程度の参加者を集めるに至っている。生物無機化学という研究分野は、まさに本国際会議とともに生まれ育ってきた新興の学際的な研究領域である。フィレンツェ大学Ivano Bertini教授により第一回の会議が開催される以前においては、錯体化学の中の一分野として金属イオンを含むタンパク質、およびそれらのモデル化合物に関する研究が行われていたにすぎない。その後、生物科学、分子生物学等の急激な発展を背景に、化学に軸足を置きつつ、金属イオン等の無機分子と生物との関わりについて学際的な研究を進める「生物無機化学」が提唱され、新たな研究分野として大きな発展を遂げるに至った。このような発展は、本国際会議の存在を抜きにして語ることは出来ない。現在では、物理化学、無機化学、医学、薬学、生化学、生物学、構造生物学、分子生物学、錯体化学など様々な研究分野の研究者が本国際会議に出席し、互いに最新の研究成果を報告、討論するとともに、さらに新たな研究分野の展開を進めるべく活発な意見交換が行われている。  
 我が国では、1997年に日本学術会議と社団法人日本化学会の共催で第8回生物無機化学国際会議を横浜で開催し、大きな成功を収めた。最近の会議には、常に100名近い日本人研究者が参加している。また、日本人研究者により発表される研究の質的レベルも非常に高いものがあり、本国際会議に対する日本人研究者の貢献は非常に大きい。このような状況と、第8回生物無機化学国際会議以後の日本における生物無機化学の急激な発展に基づき、国内の生物無機化学研究者の間から、国際生物無機化学会議を再び日本に招致し、同分野における日本人研究者の成果を諸外国の研究者に紹介するとともに、我が国の研究レベルの一層の向上を図ることが切望されるに至った。これを受け、渡辺芳人教授(名古屋大学物質科学国際研究センター教授)が2005年にアメリカ合衆国アンアーバーで開催された第12回国際生物無機化学会議において、第14回国際生物無機化学会議を日本で開催することを提案するとともに、国際生物無機化学会の評議会において第14回国際生物無機化学会議開催地に関する討議が行われた。その結果、平成17年8月1日開催の国際生物無機化学会の評議会は、第14回生物無機化学国際会議を平成21年に日本で開催することを決定した。
(2)会議開催の意義:
 生物無機化学は、金属イオン等の無機分子が生物においてどのような役割を担っているかについて、化学を基盤として研究する学問であり、エネルギー代謝、物質代謝、情報伝達などに関与する金属タンパク質の構造と機能、生物による金属イオンの利用、金属錯体の薬理作用、金属酵素活性中心のモデル化合物に関する研究、等々、非常に多岐にわたる研究対象を包含した、学際的研究分野である。本国際会議では、物理化学、無機化学、医学、薬学、生化学、生物学、構造生物学、分子生物学、錯体化学など様々な研究分野の研究者が本国際会議に出席し、互いに最新の研究成果を報告、討論するとともに、さらに新たな研究分野の展開を進めるべく活発な意見交換が行われた。我が国の研究者も本分野の発展には大きな一翼を担ってきたが、本国際会議を日本で開催し、当該研究分野の最先端の状況を知るとともに、国内外の研究者間での意見交換、討論の機会を持てたことは、日本における生物無機化学研究のさらなる発展の契機となることが期待される。また、通常の国内学会では一堂に会する機会がない関連研究分野の研究者が本国際会議に同時に参加し、最先端の研究成果、研究分野の現状等について、情報交換ならびに討論の機会を持てたことは、関連する研究分野の発展に及ぼす影響も大きいものがある。また、本国際会議において発表された日本人研究者の研究の多くは、非常に高いレベルにあり、海外からの参加者からも高い評価を受け、本研究分野において、世界の中で我が国が主導的地位を確立するために大きく貢献することができたと考えている。
(3)当会議における主な議題(テーマ):
 今回の会議では、「生命活動における金属イオンの役割」をメインテーマとし、生物エネルギー代謝(呼吸・光合成・脱窒・電子移動)、細胞内金属イオンのセンシングならびに動態、小分子活性化、センサータンパク質、核酸と金属イオン、金属タンパク質の生合成、金属イオン輸送と細胞内ホメオスタシス、バイオナノ材料、生物有機金属化学、金属タンパク質の分子デザイン、生物無機医薬、生物無機化学の新潮流、などをサブテーマとしたセッションを開催した。
(4)当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
 世界31ヶ国/1地域から718名(うち海外から412名)の参加を得て、生物無機化学がカバーする広い研究対象に関して活発な討論がなされた。国内参加者を超える国外参加者があるという、日本で開催される国際会議としては珍しい参加状況は、生物無機化学における日本の研究レベルの高さを示している。
(5)次回会議への動き:
 次回の会議(ICBIC-15)は、2011年にカナダのバンクーバで開催予定である。次回の会議においても、基本的には今回の会議において討論された研究テーマを中心とした研究発表、討論が行われるものと考えられるが、詳細については次回会議の組織委員会において決定される予定である。
(6)当会議開催中の模様:
 7月25日の午後から受付を開始し、1日目の夕方にはウェルカムレセプションを実施した。2日目の朝に開会式を行い、開会式に引き続いて学術プログラムを実施した。学術プログラムとしては、会期中、午前中に1件、午後に1件の基調講演を実施した。(エクスカーション実施日(7月28日)は、午前中1件のみ。)基調講演の時間には、他の学術プログラムは実施せず、参加者全員が基調講演会場に集まる形式をとった。基調講演は全部で7件実施した。本国際会議の慣例として、基調講演では質疑応答の時間は設けられず、講演者の講演のみを実施した。
 口頭発表は、14のセッションテーマを設定し、5会場に分かれてパラレルセッション(同時開催)の形式で実施した。各講演の後には活発な質疑応答が行われた。
 ポスターセッションでは、すべてのポスターを会期中ずっと掲示し、参加者が随時ポスターを閲覧できるようにした。7月26日、27日、29日の午後5時30分から午後7時30分の間を、発表者による説明時間のコアタイムとして設定(ポスター番号の偶数・奇数で異なる日時に設定した)し、ポスター発表ならびに質疑・討議を行った。
(7)その他特筆すべき事項:
 当初、1999年の第9回国際生物無機化学会議の際に開催された国際生物無機化学会の評議会において、第11回会議の日本への誘致・立候補を表明した。しかしながら、第11回会議は、イスラエルのエルサレムで開催されることに決定し、日本に招致するには至らなかった。なお、中東情勢の問題により、第11回会議のイスラエルでの開催はキャンセルとなり、オーストラリアのケアンズにおいて第11回会議が開催された。その後も引き続き、本国際会議の日本への招致努力を続け、第14回会議の開催地として決定するに至った。  


(会議の模様:プレナリー講演)         (会議の模様 上:セッション講演 下:バンケット)
                           
3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:平成21年7月25日(土)午後2時~午後5時
(2)開催場所:名古屋国際会議場 224会議室
(3)主なテーマ:「生き物の中で働く金属」
  サブテーマ:杉浦幸雄「生体と金属 ―生体に不可欠な元素」
            桜井 弘「金属なしでは生きられない」
            田中良和「花の色の不思議 ―青いバラへの挑戦」
(4)参加者数、参加者の構成:128名(内訳:一般 96名、学生 32名)
(5)開催の意義:
 生物無機化学という研究分野は、一般市民には全くなじみがない研究分野である。しかしながら、生物無機化学が主な研究対象としている金属イオン、金属タンパク質は生物が生存していく上で必要不可欠な役割を担っている。また、生物無機化学は学際的研究分野として大きく発展している研究分野である。本市民公開講座は、このような、生物無機化学という研究分野の重要性を一般の方々に理解していただく、非常に良い機会となった。
(6)社会に対する還元効果とその成果:
 金属イオンは生物が生きて行く上で必要不可欠な役割を果たしているが、このことは、一般の方にはあまりなじみがない。そこで本市民公開講座では、一般の方に少しでも興味をもってもらうよう、身の回りにあるもので「生物と金属」に関わる事柄を対象とした講演を企画した。具体的には、糖尿病などの生活習慣病と金属イオンとの関わり、老化・健康・病気と金属との関わりに関する講演の他、「青いバラ、青いカーネーション」の作出に金属酵素が深く関与していることを、「青いカーネーション」の実物展示を合わせ、紹介した。
 少しでも多くの方に参加してもらうため、本市民公開講座の広報にあたっては、チラシ、ポスターを作成し、名古屋観光コンベンションビューローを通じて名古屋市内の図書館20カ所に配布した。また、名古屋観光コンベンションビューローの機関誌「コンベンションナゴヤ」7月号に市民公開講座の案内記事を掲載し、市民公開講座への参加を募った。さらに、名古屋大学が有している「名古屋大学講演会案内希望者」メーリングリスト、約1,200件にも本市民公開講座の開催案内を送信し、参加を募った。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
 開会式において、日本学術会議唐木英明副会長より主催者挨拶を頂くとともに、内閣総理大臣のメッセージーを頂くことができたことにより、日本政府ならびに日本の科学界が生物無機化学研究を重視しているとともに、本分野の研究に大きな関心を寄せているということを、海外からの参加者に強く印象づけることができた。多大なご支援をいただいた日本学術会議に厚く御礼申し上げる。


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