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2009年IEEEロボティクス・オートメーション国際会議
1 開催概要
(1)会 議 名 : (和文)2009年IEEEロボティクス・オートメーション国際会議
          (英文)2009 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA2009)
(2)報 告 者 : 2009年IEEEロボティクス・オートメーション国際会議実行委員会委員長 小菅 一弘
(3)主   催 : 社団法人日本ロボット学会、社団法人計測自動制御学会、社団法人日本機械学会、日本学術会議
(4)開催期間 : 平成21年5月12日(火)~5月17日(日)(6日間)
(5)開催場所 : 神戸国際会議場、神戸ポートピアホテル(兵庫県神戸市)
(6)参加状況 : 41ヵ国・1,319人(国外914人、国内405人)

2 会議結果概要
(1)会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:

 2009年IEEEロボティクス・オートメーション国際会議は、米国電気電子工学協会(Institute of Electrical and Electronics Engineers:IEEE)内にあるロボティクス・オートメーション学会が母体機関となって毎年開催されるロボティクス・オートメーション分野における世界最大の会議である。1984年アメリカ合衆国で第1回国際会議が開催され、アジア地域では、1995年に初めて日本(名古屋市)で開催されており、日本での開催は2度目となる。当国際会議は、サービスロボット等、新分野における次世代ロボットの開発が盛んな日本で再度本会議を開催し、次世代のロボティクス・オートメーション研究開発の方向性を議論することに対する気運が高まったことに伴い、2003年9月のIEEEロボティクス・オートメーション学会理事会で正式に開催が認められた。その後、社団法人日本ロボット学会、社団法人計測自動制御学会、社団法人日本機械学会が中心となり、2009年IEEEロボティクス・オートメーション国際会議組織委員会を正式に発足し、2006年11月25日東京にて第1回委員会を開催した。
(2)会議開催の意義・成果:
 ロボティクスやオートメーションに関する学問は、それ自体、工学分野の横断的総合工学として位置付けられ、機械工学、電気工学、電子工学、制御工学、情報工学、計算機工学の従来の工学の枠だけでなく、理学、医学、農学等の分野への基礎と応用にも寄与し、また、法律、社会科学の分野へも大きな影響を与え始めている。したがって、当該学術分野は、高度化ロボットのハードウェアやソフトウェア、ヒューマン・インターフェイス(心理的側面も含む)から、知的オートメーションの各種を含み、その取り扱う範囲は広い。日本の次世代ロボティクス・オートメーション学問分野における水準は非常に高く、外国の研究者、技術者も、日本における当該分野の研究や技術開発に極めて興味を有している。この度、日本で当国際会議が開催されたことは、今後のロボティクス・オートメーション学問分野において日本のリーダシップを世界に示すとともに、当該分野の発展に大いに貢献するものである。
(3)当会議における主な議題(テーマ):
 この度のIEEEロボティクス・オートメーション国際会議では、「ロボティクスとIRTがもたらす豊かな社会の実現」をメインテーマに、医学(メディカル・ロボット、手術支援ロボット、リハビリテーションロボット、ホスピタルオートメーション等)、農業(農業用ロボット、農業用オートメーション機械等)、宇宙(宇宙ロボット、宇宙機械等)、レスキュー(レスキューロボット)、サービス(各種サービスロボットやそのオートメーション化)等を主要議題として議論された。
(4)当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
 この度のIEEEロボティクス・オートメーション国際会議では、論文投稿数1629件、ビデオ投稿数36件、ワークショップ・チュートリアル提案数46件であり、その中で、696件の論文、16件のビデオ、26件のワークショップ・チュートリアルが採択された。特に発表論文採択率は約43%となり、非常に高いレベルの研究が発表された。また、企業や大学等からの展示は27機関からの申し込みがあり、ロボットのデモンストレーションやポスターなどにて会議参加者へ研究や商品の紹介を行った。今回の会議は、テクニカルセッションやチュートリアル・ワークショップでの研究発表以外に、招待講演やインダストリアルフォーラム、サイエンスフォーラム、テクニカルツアーなども企画された。また関連行事として、競技会形式で宇宙探査チャレンジ、人間?ロボット対話チャレンジ、生産自動化チャレンジの3つのロボットチャレンジが行われた。さらに神戸市との共催で、ロボティクスおよび自動化技術を一般市民に親しみを持ってもらうための市民フォーラムも企画されたが、期間中に市内で発生した新型インフルエンザの影響のため、一部中止となった。
 本国際会議の運営は、日本の多くの研究者の協力によって行われた。特に、日本学術会議や各関連学会、神戸市等との連携により、世界最大級のロボット関連の会議を運営できたことは、今後のロボティクス・オートメーション学問分野において日本のリーダシップを世界に示すとともに、当該分野の発展に大いに貢献するものである。また、今回は新型インフルエンザの影響もあり、開催が危ぶまれる恐れもあったが、その対策に万全を期し、ほぼ予定通り会議を開催できたことは、世界中の研究者から高く評価された。

       
(セッションの模様)               (ロボットチャレンジの模様) 
(5)次回会議への動き:

 次回のICRA2010は2010年5月4日から8日の予定で米国アンカレッジで開催される。次回の会議では、本国際会議で取り扱った分野はもちろんのこと、それ以外のさまざまな分野へロボティクス・オートメーション技術を適用し、次回の会議の研究テーマであるRobotics in the Environmentに基づいて議論を行い、更に発展した研究成果の発表が期待される。
(6)当会議開催中の模様:
 5月12日には、11件のチュートリアル&ワークショップが開催され、多くの研究者が参加し、議論が行われた。また、会議参加者はもちろん一般の方も参加できる市民公開講座(インダストリアルフォーラム)を開催し、3件の招待講演者による講演が同時通訳付きで行われた。13日には、9件のチュートリアル&ワークショップが開催され、多くの研究者による議論が行われた。また、3人の招待講演者によるサイエンスフォーラムを行い、その後、開会式を経て、特別講演を行った。特別講演後はウエルカムレセプションを行った。14日から16日まではテクニカルセッションが開催され、合計696件の研究発表が行われた。14日と15日には特別講演を行い、15日には約1200名が参加したバンケットが行われた。16日には市民フォーラムが企画されていたが、新型インフルエンザの影響で、一般市民の参加によるフォーラムは中止となった。しかし、会議参加者が参加する講演会とし、3人の招待講演者により、講演およびロボットデモンストレーションが行われた。また、テクニカルセッション終了後にはフェアウェルレセプションが行われた。最終日の17日には6件のチュートリアル&ワークショップが開催され、最終日まで熱心な議論が行われた。12日、13日、17日にはテクニカルツアーが企画されていたが、17日のみ新型インフルエンザの影響で中止となった。
 
         (開会式での挨拶 左:原島組織委員会委員長、右:唐木副会長)
(7)その他特筆すべき事項:
 当初、本会議は2007年に開催したいと考えて提案したが、ローマでの開催提案との競争になり、委員会で投票を行い、2007年度のローマ開催が決定された。ローマ開催を提案したのは、当時のPresident-elecrt(Paolo Dario,イタリア人)であり、次期会長が自国での開催を提案するのは不公平だと抗議したが受け入れられず、ローマ開催が決定されてしまった。その抗議の甲斐もあり、2007年度ローマ開催に投票した委員会メンバーも、次は日本開催を支持すると表明してくれたので、それ以降に、米国外での開催が予定されている2009年に本会議を開催することを再提案し、ローマでの開催を支持していたメンバーの協力も得て2009年の開催を実現することができた。

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:平成21年5月12日(火)13:00~17:30
(2)開催場所:神戸国際会議場「国際会議室」
(3)主なテーマ、サブテーマ:インダストリアルフォーラム
(4)参加者数、参加者の構成:一般市民(企業対象):80名程度、会議参加者:70名程度
(5)開催の意義:
 企業の技術者・研究者向けに、海外のロボット研究者による講演を行うことにより、世界の最新のロボット研究に関する議論を行う。
(6)社会に対する還元効果とその成果:
 通常、研究者以外ではなかなか聞くことのできない世界各国の著名な研究者の講演を聴講することでき、特に企業の技術者・研究者にとっては技術の発展性を考える良い機会になったものと思う。特に、同時通訳もあり、研究に対するより深い理解ができたものと思われる。
(7)その他:
 平成21年5月16日(土)に企画していた市民フォーラムは新型インフルエンザの影響で市民公開を中止した。市民フォーラムで企画されていた講演およびロボットデモンストレーションは、会議参加者を対象に開催された。
 
           (インダストリアルフォーラムで講演するルドガー・ディルマン教授)
4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
 日本は、産業用ロボットのシェアが世界一であり、ホンダのASIMOをはじめとして、ヒューマノイドロボット等の最先端の技術においても世界をリードしており、今後大きな産業の一分野を築くものと期待されている。ロボティクス・オートメーション科学技術について、日本で他学会と共同で国際会議を開催し、世界の研究者、技術者と議論や意見交換の場を持つことは、この分野で今後の進歩に大きな学術上、技術上の影響を与えるとともに、学会だけでなく、政府からも理解を得られていることを世界にアピールすることは非常に有意義であった。

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