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第6回国際動物実験代替法会議 開催結果報告
1 開催概要
(1)会 議 名:(和文)第6回国際動物実験代替法会議
         (英文)6th World Congress on Alternatives and Animal Use in the Life Sciences (WC6)
(2)報 告 者:第6回国際動物実験代替法会議運営委員会委員長 大野泰雄
(3)主   催:日本動物実験代替法学会、日本学術会議、国際動物実験代替法会議連合
(4)協   賛:国際トキシコロジー連合、日本環境変異原学会、日本実験動物医学会、日本実験動物学会、日本実験動物環境研究会、日本組織培養学会、
        日本トキシコロジー学会、 日本環境変異原学会・哺乳類変異原性(MMS)研究会、環境省、経済産業省、厚生労働省、文部科学省、東京都、
        東京観光財団、(独)国際観光振興機構
(5)開催期間:平成19年8月21日(火)~同8月25日(土)
(6)開催場所:ホテルイースト21東京(東京都江東区)
(7)参加者数:1,036人(国外440人、国内596人)、34ヵ国/1地域

2 会議結果概要
(1)会議の背景(歴史)、日本開催の経緯
  
 国際動物実験代替法会議は生命科学研究における動物福祉と動物実験代替法開発を促進するとともに、科学者と動物福祉活動家との間のコミュニケーションを図るために、 1993年より3年ごとに国際動物実験代替法会議連合主催で開催されてきた。日本動物実験代替法学会は、第1回会議から我が国からの参加や研究成果発表を呼びかけるとともに、参加者への旅費支援や運営委員会等への参画等を通じて、 積極的に協力してきた。また、本会議の日本開催に向けた準備を継続的に行ってきた。その結果、2003年11月に開催された国際動物実験代替法会議連合の会議において2007年に日本で開催することが承認された。 なお、今回の会議は、欧米以外では初めての開催であった。
(2)会議開催の意義
 国際動物実験代替法会議は動物実験代替法に関する世界の研究成果の発表や研究者間の交流を通じて、適正な動物実験に基づく生命科学の発展に寄与するものである。 また、我が国の生命科学研究者に世界の科学者や動物福祉に関心を持つ一般市民と直接交流する機会を与えることにより、我が国における実験動物福祉の向上と動物実験代替法開発研究を一層発展させる契機となる。 更に、本会議は我が国における3Rsの精神(Reduction(実験動物使用数の削減)、Refinement(動物の苦痛軽減)、Replacement(動物を用いない方法への置き換え))の普及に役立つとともに、 医薬品開発を初めとする生命科学研究や生産のために止むを得ず行われる実験動物使用に社会の支持を得るのに資するものと期待された。
(3)当会議における主な議題(テーマ)
 今回の会議では「動物実験代替法開発の促進、3Rsのグローバリゼーション並びに科学者と動物福祉活動者との対話」をメインテーマに、最新の情報交換が行われた。
(4)当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割
 海外からの参加者が400名を上回り、主催者が予想した以上の盛会であった。海外の参加者からも会議の質が高く、満足したとの声が多く聞かれた。 適正な動物実験の実施と動物実験代替法開発に向けた我が国の熱意を感じ取っていただいた。また、多くのセッションにおいて日本人のシンポジストが講演し、国際社会の中で日本人研究者の存在感を示すことができた。 また、日本だけでなく、韓国、中国においてもサテライトシンポジウムを開催され、3Rsの精神をアジアに広めるのに役だった。
 なお、会議は日本動物実験代替法学会会員を中心に、多くの学会からの代表者からなる国内運営委員会が計画、運営されたものであるが、科学プログラムの作成に際しては、 欧米の中心的な研究者の支援を得ることによりはじめて達成されたものである。また、我が国内外の多くの支援者によりはじめて達成されたものである。
(5)次回会議への動き
 次回会議は、2009年、イタリアのローマにおいて開催される。メインテーマの一つである「動物実験代替法開発の促進、3Rsのグローバリゼーション」は次回会議に引き継がれ、議論が深まると思われる。
(6)当会議開催中の模様
 レクチャーの総数は10、シンポジウムの総数は47、それらの中で、メインテーマに掲げた「科学者と動物福祉活動者との対話」のための特別シンポジウムを企画した。 多数のシンポジウムを通して、多岐な分野に研鑽を積むことができたとともに、総数256のポスター発表や、若手研究者の一般演題20など多数の発表を見聞きすることができた。
 講演会場が8会場に分かれていたが、同じホテルの1階と3階に集中し、容易に移動できた。これにより参加者が興味あるシンポジウムを渡り歩き、時間を有効に使うとともに、 会場のあちらこちらで参加者が熱い討論を繰り返していた。また、会議初日のウェルカムパーティでは動物慰霊祭、会議3日目の夕刻の都内観光、4日目夕刻の晩餐会などの学術面以外のイベントも含め、 限られた会期ではあったが参加者は学問だけでなく、日本を堪能できたと考えている。同伴者についても、ボランティアの方々の協力を得て、都内観光を手助けしたことから、満足していただいた様子であった。
 その他、国内外の若手研究者の渡航補助を70名近く行うとともに、彼らの中から優れた演題に賞を送った。科学委員の投票により11名の受賞者が選ばれ、若手研究者にとっては励みになったと思われる。
開会式の会場風景若手研究者の授賞式の一場面








          (開会式の会場風景)                  (若手研究者の授賞式の一場面)
(7)その他特筆すべき事項
 2005年までは3年に一度の開催であったが、社会的な本会議のニーズの高まりから、今回から2年毎の開催に変更された。これも日本が立候補したことが大きく関与したと国際動物実験代替法会議連合の幹部から聞いている。 当初、準備期間の短さから日本での開催を危ぶむ声も聞かれたが、日本学術会議との共同開催を取り付けるとともに、前述のように7つの国内学会や研究会、国際トキシコロジー連合などの多くの学術団体の協賛を得るとともに、 国外の主要な研究者を運営委員に加えることで信頼を得た。また、4つの中央省庁と東京都などの政府機関、東京観光財団や(独)国際観光振興機構等、多数の協賛を得たことも重要であった。
 本分野における日本の取り組みが国際的に理解され、すでに数件、我が国の関係者に今後の国際会議やシンポジウムへの招待が届いている。 本会議の内容が国際的に高く評価された大きな成果であるとも考えており、さらなる国際協調、貢献に発展させていきたいと考えている。

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:平成19年8月25日(土)14:00-17:30
(2)開催場所:ホテルイースト21東京 1階ホール
(3)主なテーマ、サブテーマ:実験動物のためにできること-研究の現場から-
(4)参加者数、参加者の構成:総数214名
(会議に参加していない一般市民が約8割を占めた)
(5)開催意義:
 一般市民の方に大勢集まって頂き、実験動物や動物実験の意義や役割について研究者や動物福祉活動家の意見を聞いて頂くとともに、活発な質疑が行われ、市民公開講座の会場風景 一般参加者からの意見を多数聞くことができた。質疑応答は予定の時間を大幅に上回ったが、参加者に満足して頂ける内容となったと考えている。メインテーマの一つである科学者と動物福祉活動者との対話を実現する意義深い内容であったと考える。
(6)社会に対する還元効果とその成果:
 動物愛護に対する考え方は多様であるが、そのニーズは着実に高まりつつある。時期的にタイムリーなものであるとともに、その社会的な情勢に対応した内容であった。 多くの一般市民と科学者との交流がなされ、相互理解に役だったと考えている。
(7)その他:
リーフレットを作成し、幅広く動物実験に関与する大学、専門学校に配布でき、参加できなかった研究者にも開催の意義、必要性を普及できたと考える。

(市民公開講座の会場風景)

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
(1)開会式:
  開会式において、日本学術会議浅島誠副会長より開会挨拶を頂くとともに、内閣総理大臣のメッセージを頂くことができた。このことにより、日本政府および日本の科学者が動物福祉を重視しているとともに、本分野の研究に大きな関心を寄せているということが、すべての参加者に強く印象付けられた。
(2)学術会議からの支援シンポジウム:
 日本学術会議唐木英明第二部長より、日本学術会議が昨年作成した「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」について講演を頂くとともに、 関連の内容を盛り込んだシンポジウムを開催でき、動物実験における3Rsの尊重に関する日本学術会議の取り組みを具体的にPRできたと考える。
(3)動物福祉と総合的な科学との関連:
 動物福祉や動物実験代替法という分野は、日本においてはマイナーな分野であり、生命科学分野の研究者の関心も低かった。しかし、日本学術会議と共同で国際会議を開催できたことにより、広く一般の研究者の関心を集めることができ、予想以上に多くの研究者の参画を得た。これは、社会に受け入れられる生命科学研究の推進に役立つと考える。また、動物実験代替法研究への日本学術会議のサポートが明確に示されたことにより、本分野の研究者への我が国内外の評価も高まり、国際社会の中で自信を持って対応できるようになったということも本会議の大きな成果であると考える。将来、本分野の進展を振り返った際に、日本学術会議と共同で開催した本会議がターニングポイントであったと言えるよう本会議で得られた成果を更に発展させていきたいと考えている。


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