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代表派遣会議出席報告

1 名 称   国際地理学連合2011年国際地理学会議
        (International Geographical Union Regional Geographic Conference 2011)

2 会 期 平成23年11月14日~18日(5日間)

3 会議出席者名 氷見山幸夫(IGU分科会委員)

4 会議開催地  チリ共和国,サンチャゴ市

5 参加状況(参加国数73、参加者数1061、日本人参加者19)

6 会議内容

・日程及び会議の主な議題
 国際地理学連合(IGU) 2011年国際地理学会議は平成23年11月14日~18日、チリ共和国サンチャゴ市にあるチリ陸軍士官学校を会場として開かれました。メインテーマは ”United and Integrated with the World”(世界との団結と融合)。これは世界との学術交流の遅れを挽回しようという中南米、とりわけチリの地理学研究者・教育者の強い熱意を反映しています。

・会議における審議内容・成果
 IGUには37の研究委員会がありますが、それらすべてがセッションを開設し、中南米で初めてとなるこの国際地理学会議を盛り立てました。会議の事前登録者は1,112名、実参加者数は約1060名、実発表数は600余りでした。
 本会議に先立ちIGU役員会が開かれ、筆者は副会長としてそれに参加しました。役員会初日の夜にフィンランド大使公邸で晩さん会が開かれ、役員と現地の組織委員会の幹部が初めて顔合わせをしました。組織委員会幹部はいずれも陸軍地理研究所所属で、会場の雰囲気は当初少し堅い感じでしたが、徐々に打ち解け、相互理解が進みました。この晩さん会は、本国際会議の円滑な運営に大いに貢献しました。
 役員会では財務状況、研究委員会活動、各国国内委員会活動、他分野との連携とアウトリーチ、IYGU(国際地球理解年)計画など多岐にわたる議題が審議されましたが、特に、独裁政権時代の暗いイメージが残る会場施設への拒否感から会議のボイコットを主張する人々への対応に、多くの時間をかけました。
 幸い会議は周到に準備され、しっかりと運営され、学術交流の場としての役割を立派に果たしました。特に、すべての部屋にスペイン語-英語の同時通訳を配置し、チリを含むスペイン語圏からの参加者に配慮していた点は高く評価されます。チリはこの種の本格的な国際会議を開く場としては不利な条件を抱えていましたが、中南米はもとより世界の73もの国々から多くの研究者が集い、大変意義深い会議になりました。

・会議において日本が果たした役割
 日本からの参加者は23名(日本人参加者は19名)と必ずしも多くはありませんでしたが、存在感はかなりありました。春山成子さん(IGU分科会委員長)は災害とリスク研究委員会の委員長として活躍しました。2012年京都国際地理学会議組織委員長の石川義孝さん(IGU分科会副委員長)は閉会式で挨拶し、京都をアピールしました。日本がブースを開設したことも特筆されます。IGU日本国内委員会(IGU分科会)は国際地理学会議の折に毎回日本展示ブースを開設していますが、今回も国内の地理学コミュニティと連携して開設しました。日本からの参加者の多くが交代でブースの「店番」をするのがここ20年程の慣例です。京都会議実行委員長の矢野桂司さんと副実行委員長の小方登さんはブースの責任者として、他の国々の参加者たちとの交流の要となりました。

・その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)
 地理学分野の動向は、ICSUが提唱する「社会のための科学」や 持続可能社会を目指すGrand Challenges などの影響を強く受けており、土地利用・土地被覆変化、大規模災害、グローバル化、都市化などへの関心が高まっています。IGUはICSUやその傘下にある地球環境研究計画などと連携してIYGU(国際惑星地球年)を実現すべく活動していますが、それは Grand Challenges へのボトムアップ的貢献と見ることもできます。元来自然科学と人文社会科学の両方にまたがる複合分野である地理学が、地球環境問題の解決や災害の軽減に果たすべき役割は、今後ますます大きくなるものと思われます。

7 会議の模様
 会議では195のセッションが開設されましたが、その中で最も発表数が多かったのは「土地利用・土地被覆変化」のセッションで、45の発表がありました。このセッションの取りまとめをした研究委員会(IGU-LUCC)は筆者が1996年に創設し、現在も顧問を務めています。2番目は「都市地理学」で、38の発表がありました。3番目は「災害とリスク」で、35の発表がありましたが、このセッションの取りまとめ役は春山成子さんです。東日本大震災への関心が世界的に高まっている今日、それと深く関わる土地利用研究と災害研究において日本の存在感を示すことができたことは幸いでした。
 研究発表の中で特に印象に残ったのは、初日の全体会議で登壇したチリの地理学者 Marcelo Lagos Lopezさんの “Living with the Risk of Tsunami”(津波のリスクと共に生きる)という基調講演でした。東日本大震災の被災地を詳しく調査し、チリの津波被災地と比較し論じた、大変素晴らしい講演でした。
 次回開催予定  2012年8月26日~30日にドイツのケルン市で開催されます。
 なお、2013年8月4日~9日には京都国際会館でIGU 2013年京都国際地理学会議が開催されます。チリでの諸々の成果がケルンに発展的に継承され、京都で大きく花開くよう、微力を尽くしたいと思います。京都会議のメインテーマは”Traditional Wisdom and Modern Knowledge for the Earth’s Future”(地球の将来のための伝統智と近代知)です。ご支援を宜しくお願い申し上げます。


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