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代表派遣会議出席報告
1 名 称   国際科学史・科学基礎論連合(IHUPS/DLMPS)第14回国際科学史・科学基礎論連合(科学基礎論部会)会議  [通称: 第14回国際科学基礎論会議]
        (14th International Congress of Logic, Methodology and Philosophy of Science)
2 会 期  平成23年7月19日 ~ 26日(8日間)
3 会議出席者名  飯田 隆(IUHPS分科会委員)
4 会議開催地  ナンシー(フランス)
5 参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)

   今回の会議の参加国数は55か国、参加者数は約770名であった。
   前回、北京で開催された参加者数はおよそ500名であったのに対して、今回はその1.5倍ほどの参加者があったことになる。
   フランスで開催された会議である以上、フランスからの参加者数が163名と最大であったことはおどろくにあたらない。他に参加者数が多かったのは、アメリカ合衆国(85名)、ドイツ(80名)、イギリス(41名)、イタリア(38名)、スペイン(38名)、
  オランダ(31名)、ポーランド(30名)などであった。論理学および科学哲学の研究が、いわゆる大陸系の哲学が優勢であるとみなされてきたヨーロッパの諸国でも盛んになされていることがうかがえる。
   東アジアからの参加者は、日本からの19名の他には、中国が18名、台湾が15名、韓国が2名を数えるのみであった。東アジア地域での連携を強化することは、相変わらずの課題であることを痛感した。人数は少ないとはいえ、アフリカの諸
  国からの参加者が増えてきているのは歓迎すべき傾向と思われる。
6 会議内容
     会議はすべて英語で行われた。フランスで開催される哲学系の学会で、すべて英語でなされる学会というのは、たぶんそれほど多くないと思われるが、フランスからの参加者がそのことに違和感をもっているようには見えなかった。国際的
    コミュニケーションの手段が英語に限られつつあることを示す事実と感じられた。
     今回の会議の開催にあたっては、フランス政府およびナンシー市からの協力も大きかったと見受けられた。ナンシーの市街の随所、さらには、市電の中にも会議のポスターが貼り出されていたのは印象的であった。また、会期中、地域の住
    民を対象としたフランス語による講演会が毎夕開催されていたことも注目される。
     7月22日の夜に開催された総会(General Assembly)では、これまで副会長を務めて来られた内井惣七氏が4年の任期を終えられるのと交代に、日本からは八杉真理子氏がAssessorに就任されることが承認された。

   ・会議における審議内容・成果
     研究発表およびシンポジウムが、4つの大きな部門に分かれることはこれまで通りであるが、その名称にいくらかの変化もみられた。4つの部門とは、(A) 論理学、(B) 科学哲学一般、(C) 個別科学の方法論的および哲学的問題、(D) 科学技
    術の方法論的および哲学的問題、である。とくに注目されるのは、前回は「科学と社会」という名称であった部門(D)が、科学技術 (technology) に関するものであることが明瞭にされたことである。
     一般発表の他に多数のシンポジウムが組まれたが、それとは別に「特別シンポジウム」として組織されたものは、「アルゴリズムとは何か」、「量子情報」、「数学と新しい科学技術」、「認識論および科学哲学における進化論的モデル」、「一般
    証明論」の5つであった。前回2つであった提携シンポジウムは今回大幅に増えて13個開催された。開催地のナンシーがアンリ・ポアンカレが生まれ育った土地であることにちなみ、ポアンカレについての基調講演ならびにシンポジウムも行われた。
     科学技術が提起する方法論的ならびに哲学的問題の重要性が高まってきていることは、総会の際に「DLMPS」という名称自体を「Division of Logic, Methodology, and Philosophy of Science and Technology」に変更する可能性が議論された
    ことからも知られる。さらに、科学技術と工学の哲学についての委員会も新たに設立された。総会では、他に、DHST と DLMPS 共同の委員会 (Joint Commission) として、科学哲学および科学史教育についてのものを設立することが決定された。
     この委員会のように、DLMPS 内の委員会だけでなく、IUHPS を構成する二つのDivision、すなわち、DLMPS と DHST が共同で設置する Inter-Divisional Commission を設けることを可能とするために、規約の改正が提案され、承認された。他に、
    次の二つの委員会を新たに設置することが承認された。(1) アラビア論理学についての委員会、(2) 科学技術および工学の哲学についての委員会。
     総会において決定された次期(2012年~2015年)の役員は以下の通りである。

     <Executive Committee>
      President:Elliott Sober (USA)
      First Vice-President:Maria Carla Galavotti (Italy)
      Second Vice-President:Cliff Hooker (Australia)
      Secretary General:Peter Schroeder-Heister (Germany)
      Treasurer:Ralf Schindler (Germany)
      Past President:Wilfrid Hodges (UK)

     <Assessors>
      Dennis Dieks (Netherlands)
      Adam Grobler (Poland)
      Gerhard Heinzmann (France)
      Pablo Lorenzano (Argentina)
      Karen Neander (USA)
      Nancy Nersessian (USA)
      Ilkka Niiniluoto (Finland)
      Mariko Yasugi (Japan)

   次回の会議(15th Congress of Logic, Methodology and Philosophy of Science)は、2015年夏にフィンランドのヘルシンキで開催される予定である。



会場入口:「会場になったナンシー大学法学部の入口です。今回の会議の色はこのようなブルーで、プログラムもポスターも、また、参加者に配布されたリュックサックも、同じブルーで統一されていました。」

ポスター:「ナンシー市の公園に掲示されている会議のポスター。市電の中にもポスターが掲示されていました。」

総会:「総会は、世界遺産に指定されているスタニスワフ広場に面した市庁舎の中で開かれました。」

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