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代表派遣会議出席報告
1 名 称   第25回国際測地学・地球物理学連合学術総会
        (XXV General Assembly of the International Union of Geodesy and Geophysics)
2 会 期  2011年6月27日~7月8日(12日間)
3 会議出席者名  今脇 資郎(IUGG分科会委員)、中田 節也(IUGG分科会委員)、末広 潔、竹内 邦良、佐竹 健治ほか多数
4 会議開催地  メルボルン市(オーストラリア連邦)
5 参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)
  参加国数 91ヵ国から3,607名が参加、日本人参加者は582名
6 会議内容

   ・日程及び会議の主な議題
     今回の学術総会は“Earth on the Edge: Science for a Sustainable Planet”のテーマで開催された。6月28日から7月7日にかけて,IUGGユニオン傘下のIACS(雪氷),IAG(測地),IAGA(地球電磁気),IAHS(陸水),IAMAS(気象),IAPSO(海洋),IASPEI(地震),
    IAVCEI(火山)の8国際協会(Association)が,協会独自のシンポジウムや,複数の協会による合同シンポジウムなど,合計190件を開催したほか,IUGGのユニオンシンポジウム12件とユニオン講演9件が行われた。各国代表によるIUGG評議員会(Council Meeting)
    とIUGG執行委員会は,6月27日から7月6日にかけて,それぞれ3回開催された。その他,8国際協会が,それぞれの総会と執行委員会を開催した。

   ・会議における審議内容・成果
     8国際協会によるシンポジウムでは,地球物理学に関する今日的な問題があらゆる角度から議論された。ユニオンシンポジウムでは,核実験禁止モニタリング,自然災害,地球深部,大陸岩石圏,データ同化,ジオエンジニアリング,地球物理モデリング,海水位上
    昇,水文学的循環,気候変化,アフリカでの地球惑星科学,地球科学と地球の将来,などをテーマに活発な議論がなされた。
     IUGG評議員会では,4年間の,IUGGの諸活動と傘下の8国際協会の活動が報告されたほか,若干の規則改正と次期IUGG役員の選出,4年後の総会開催地の選定などが行われた。8国際協会の総会では,次期協会役員の選出などが行われた。

   ・会議において日本が果たした役割
     自然災害に関するユニオンシンポジウムは,GeoRisk委員会の主査を務める竹内邦良氏(水災害・リスクマネジメント国際センター)のコンビーナーの下で開催され,3月11日に発生した東日本大震災について,佐竹健治(東京大学),今村文彦(東北大学),入倉孝
    次郎(元京都大学),竹内邦良の各氏が講演した。また,津波シンポジウムは,津波委員会主査の佐竹健治氏の企画で開催された。IAVCEI(火山)会長の中田節也氏(東京大学)は,当国際協会の会議をリードしたほか,IUGG執行委員としても務めを果した。末広潔
    氏(IODP-MI)は,次回IUGG総会開催地の選定委員長を務めた。その他,多くの日本人研究者が,シンポジウムのコンビーナーを務めたり,招待講演を行った。6月28日午後に開かれた開会式では,ICSU副会長の黒田玲子氏(東京大学)が来賓として挨拶した。

   ・その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)
     プログラム作成の最終段階であった3月11日に発生した東日本大震災を受けて,急遽強化された自然災害に関するユニオンシンポジウムには多くの参加者があった。日本からの上記の各氏をはじめ多くの研究者の講演があり,活発な議論が行われた。津波シンポ
    ジウムでは,今回の東北地方の津波に関して,日本からの5件を含む,世界中の研究者による17件の発表があり,今後の被害軽減に向けた対策などが討議された。また東日本大震災に加えて,ニュージーランドやハイチの地震災害や,アイスランドとチリの火山噴火
    による航空機への火山灰災害を受けて,自然災害や原子力施設設置に関する地震・火山の複数のセッションにおいて,多くの研究者が参加し活発な意見交換を行ったのが今度の総会の特徴であった。
     IUGG評議員会は第3回会合で以下のことを決議した。
     (a)雪氷学関係者が,氷河の質量収支と積雪の雪質分類の用語について標準化されたスキームを使用することを勧告する。
     (b)衛星重力ミッションを今後も継続することが重要であり,そのために各国関係機関には今後も新たな衛星重力ミッションについて努力されることを要請する。
     (c)国際天文学連合(IAU)が定める国際天球座標(ICRF2)を,天文学・測地学において標準とすることを勧告する。
     (d)海洋研究者が,新しい海水の状態方程式(TEOS-10)を使用することを勧告する。
     (e)第25回IUGG学術総会を科学的成功裏に納めたオーストラリア科学アカデミー,ニュージーランド王立協会,地元組織委員会等に感謝する。

7 会議の模様
     IUGG総会は4年に一度開催されており,前回の2007年はイタリアのペルージャで開催されている。今回はオーストラリアとニュージーランドの合同実行委員会が世話をした。南半球での開催は,1979年のオーストラリアのキャンベラに続いて2回目,欧米以外での開
    催は,2003年の札幌以来の3回目である(ちなみに第1回は1922年にローマで開催)。
     6月上旬に始まった南米チリのプジェウエ火山の噴火による航空交通の混乱で,参加を断念させられた人が少なからずあったのが残念であるが,実行委員会の発表では,91ヵ国から3,607名が参加し,4,757件の発表(口頭2,831件,ポスター1,926件)があった。日本
    からの参加者はオーストラリアとアメリカについで3番目に多い582名であった。
     総会に合わせて,フランス,ロシアなど数ヵ国から,各国のIUGG関連の活動を記したNational Reportが提出された。日本からも,IUGG国内委員会(日本学術会議の地球惑星科学委員会IUGG分科会)が作成したReportを提出した。近いうちに,IUGGのウェブサイト
    ( http://www.iugg.org/members/nationalreports/index.php )に掲載される予定である。
     IUGG評議員会で,新しいIUGGメンバーとして,ギリシャ,アゼルバイジャン,マケドニアの加入を,準メンバーとして,ジョージア,コスタリカの加入を承認した。また,ブルガリアは準メンバーから正メンバーとなり,インドの分担金のカテゴリーが5から6に上がったことが
    報告された(ちなみに日本はドイツ・イギリスと共に8,アメリカは11)。現在69ヵ国がメンバーとなっている。
     会則・細則を改正し,連携メンバー制(Affiliated Membership)を導入した。
     これは,現在の加盟メンバーが各国の科学アカデミーであるのに対して,各種の国際組織の代表を連携メンバーとして受け入れるものである。また,フェローシップを導入し,測地学・地球物理学の分野で国際的な共同研究に顕著な貢献があった個人を選んで名誉メ
    ンバー(Honorary Member)として受け入れることになった。
     次期IUGG会長には,前副会長のHarsh Gupta氏(インド)が,副会長には,前IAG会長のMichael Sideris氏(カナダ)が選出された。事務局長のAlik Ismail-Zadeh氏(ドイツ)は任期が継続中であり,出納係はAksel Hansen氏(デンマーク)が再選された。ビューローメンバ
    ーとして,佐竹健治氏(東京大学)がフランスと南アフリカの2名とともに選出された。また,ユニオン委員会の一つであるGeoRiskの主査に竹内邦良氏が再選され,SEDIの主査に田中聡氏(海洋研究開発機構)が選ばれた。さらに,竹内氏はIUGGのリエゾンとして,ICSUの
    IRDRコミッションのメンバーに指名された。傘下の国際協会では,IAGA(地球電磁気),IAMAS(気象),IAPSO(海洋),IASPEI(地震),IAVCEI(火山)で日本人が執行委員を務める。
     IUGG評議員会では,2015年に開催される次回のIUGG総会の開催地についても議論し,6立候補地から投票の結果,チェコのプラハを選んだ。
     IUGG執行委員会では,IUGGの事務局(Secretariat)の場所を,事務局長が選ばれるたびに変更するのではなく,IUGSなどのように,一カ所に固定する案が出されたが,次期執行委員会に検討が持ち越された。候補地としては,ドイツGFZと中国(CASTなど五つの組織が
    サポート)が,事務所の大きさやスタッフ案も含めて具体的な提案を上げている。
     会議が開催されたメルボルン・コンベンション展示センターは,メルボルン市の南部を流れるヤラ川の南岸に新しくできたウォーターフロントにある(●写真1)。ここは2009年に出来たばかりで,コンベンション施設,展示場とヒルトンホテルを併設した施設である。会期中は
    展示場ではモーターショーが行われていた。会場の近くには20分程度で通える距離にレストランや宿泊施設が集中しており便利な場所である。コンベンションセンター(●写真2)は,3階建のモダンな建物で,一部は3階まで吹き抜けになっている。1階では,ポスター発表が
    行われたほか,展示ブースやインターネットスペースが置かれた。5,000人が収容できるメインホールは三つに仕切られ,開会式や閉会式のほか,複数協会による合同シンポジウムが開催された。2,3階にある大小様々な大きさの講演会場でのシンポジウムでは,ガラガラ
    であったり,狭すぎて壁際に立ち見が出たり,入りきれない会場があったりというアンバランスが見られた。講演申込数と人気のあるセッションとが一致しなかったために生じたものと思われるがやむを得ないだろう。また,ポスター発表が行われた場所は,1階フロアーの広
    大さに比べて異常に狭い範囲に限られており,屏風状の折りたたみのポスターボードが使われたため,内側で,隣り合った一方が議論している間は,反対側のポスターが隠れて議論できなくなるなど,参加者が十分な議論を行えなかった(●写真3)。同じフローには,2013
    年のIAVCEI(火山)学術総会が開催される鹿児島市と日本火山学会が出展したブース(●写真4)があり,好評を博していた。
     今回の会議の登録料は日本円で9万円近く,ホテルの宿泊費も朝食付きで1万5千円以上と大変高いために,日本からの参加者だけでなく多くの国の参加者から不満が出ていた。主催者によると様々な機能を持つ新コンベンションセンターを丸抱えで借り切ったために起
    こったことであるが,それでも,会期をこれまでの2週間から10日間近くに短縮し経費的にも縮小できたとしている。ただし,オーストラリアドルが,最近の経済危機以降,他の通貨に比べて強くなったことがもう一つの高くなった理由である。無料の500 mlのペットボトルの水が
    最初の数日は会場のあちこちに並べられていたが,すぐに消費されてしまったためか,後半では紙コップで汲む貯水タンクに入れ替っていた。
     そのほか,配布されたProgram Handbookが(上質紙で立派であるが)とても重いとか,USBに納められたアブストラクト集が機能的でない,などの不満があったが,全体として総会は極めてスムーズに進められた。前回2007年のイタリア・ペルージャでの総会に比べて格
    段の差を感じた参加者も多かったようである。
     なお,自然災害と津波に関するシンポジウムおよび8国際協会の報告は,日本地球惑星科学連合のウェブサイト( http://www.jpgu.org/info/iugg/the25IUGG_GA_report.html )に掲載されている。

   次回開催予定 2015年6月~7月に,チェコのプラハで開催される予定である。

   [略号一覧]
    CAST: Chinese Association of Science and Technology
    GeoRisk: Union Commission on Geophysical Risk and Sustainability (in IUGG)
    GFZ: GeoForschungsZentrum; German Research Centre for Geosciences
    IACS: International Association of Cryospheric Sciences (in IUGG)
    IAG: International Association of Geodesy (in IUGG)
    IAGA: International Association of Geomagnetism and Aeronomy (in IUGG)
    IAHS: International Association of Meteorology and Atmospheric Sciences (in IUGG)
    IAPSO: International Association for the Physical Sciences of the Oceans (in IUGG)
    IASPEI: International Association of Seismology and Physics of the Earth's Interior (in IUGG)
    IAVCEI: International Association of Volcanology and Chemistry of the Earth's Interior (in IUGG)
    ICSU: International Council for Science
    IODP-MI: Integrated Ocean Drilling Program, Management International, Inc.
    IRDR: Integrated Research on Disaster Risk (in ICSU)
    IUGG: International Union of Geodesy and Geophysics (in ICSU)
    IUGS: International Union of Geological Sciences (in ICSU)
    SEDI: Union Commission on Studies of Earth's Deep Interior (in IUGG)
    USB: Universal Serial Bus

             
写真1:会場全景                        写真2:会場入口                          写真3:ポスター発表(提供:坂本天)             写真4:2013年IAVCEI(火山)学術総会の開催を広報する鹿児島市のブース展示

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