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代表派遣会議出席報告
1 名 称   第30回海洋研究科学委員会(SCOR)総会
        Scientific Committee on Oceanic Research (SCOR) 30th General Meeting
2 会 期  2010年 9月13日~16日(4日間)
3 会議出席者名  日本人:池田元美、田口哲(日本学術会議による代表派遣)
               外国人:Wolfgang Fennel(議長)、Jorma Kuparinen(セクレタリ)、Victor Akulichev(副議長)、Peter Burkill(副議長、)Huasheng Hong(副議長)
               Mary Feeley(新セ クレタリ)、John Volkman(新副議長)、Ilana Wainer(新副議長)他20名、なおSatoru Taguchi(新副議長)も新執行部に参加
4 会議開催地  (フランス・トゥールース)
            Fondation Bemberg(ベンベルグ財団)のHotel d’Assezat
5 参加状況 (参加国数、参加者数、日本人参加者)  参加国数:17、参加者数:30、日本人参加者(2名):池田元美、田口哲(日本のSCOR分科会委員) 
6 会議内容

  ・日程及び会議の主な議題
現存ワーキング・グループの報告と措置
新規ワーキング・グループへの申請選考
大型国際共同研究(GLOBEC、GEOTRACES、GEOHAB、IMBER、SOLAS)の報告
政府間機関(IOC、PICES、ICES、FOO)との共同取組み
非政府機関ICSU(IGBP、WCRP、SCAR、SOOS、SCOPE)とは特に緊密な関係
IUGG付属組織(IABO、IAMAS、IAPSO)
付属プログラム(CoML、iAnZone、IMAGES、InterRidge、IOCCG、Ocean Mixing Processes)およびその他の組織(POGO、AOSB)について報告
フランス海洋科学シンポジウム

  ・会議における審議内容・成果
  本会議の最重要案件であるワーキング・グループの審査においては、科学的重要性に加え、担当者の地域バランス、女性研究者を含めていることも重視され、6申請から1件を採択した。通常は2件を採択するが、今回は財源が足りないことを理由に、1件にとどめることとなった。
  キャパシティ・ビルディングを重視しており、支援活動について報告がされた。学会参加のための旅費支援に加えて、講師を送って開講するなど、積極的な参加とアイデアが要請された。
  財政問題についての報告では、世界的な経済状況など不安な要素があり、資金の確保にこれまでより注意すべきであると報告された。経費節減は難しいと判断されており、各国の支援額を増やすこと、参加国を増やすことを期待するものの、明確な方針は提起されていない。
  ・会議において日本が果たした役割
  次期執行部(Executive Committee)における副議長3名と事務担当を改選し、田口哲委員が副議長として日本から執行部に入ることとなった。
 ・その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)
  特になし

7 会議の模様

  会議の冒頭に次期執行部(Executive Committee)が紹介された。W. Fennel議長は続投するが、副議長3名とセクレタリー(事務担当)は各国の委員会から推薦を受け付け、専門分野、地域と男女のバランスなどを考慮し選考されている。田口哲委員が副議長として日本から執行部に入ることとなった。日本の貢献を明確にできる機会であり、海洋科学分野の専門家が積極的に国際貢献を進める一助となることを期待している。
  本会議の最重要案件であるワーキング・グループについて、まず既存WGに関する報告を受けた。1年に2WGのペースで採択しており、継続中のWGに5年間の支援を続けることは了解された。その期限を越えたWGのうち、取りまとめのために1、2年に限って経費なしで継続するものが約半数ある。この継続期限も越えた2件については、継続しても目標の達成が不可能と判断して解散を決めた。2つとも代表研究者が任務を果たせないとされ、代行の任命も含めて実施体制に問題があったと認識されたものの、根本的な解決は難しく今後も同様の事態が起こる可能性は否定できない。
  次に初日の午後と2日目の午前を費やして、WG申請6件の審査を行った。科学的重要性に加え、担当者の地域バランス、女性研究者を含めていることも重視される。詳細な点まで評価を行い、プランクトンに対する海洋環境変動の影響に関する申請が高い評価を得て採択となった。他に、低温域のサンゴ、海洋物理と古海洋の連携、金属成分による生物地球化学に関する3件はほぼ同等の評価で、委員が白熱した議論を交わしたが、SCORの活動資金が不安視されており、その点を詰めてから会議の最後に決めることとした。財政状況の調査をもとに会議で議論した結果、財源が足りないことを理由に、今回は採択を見送ることに決まった。
  SCORも他の組織、プロジェクトと同様に、途上国のキャパシティ・ビルディングを重視しており、支援活動について報告がされた。学会参加のための旅費支援に加えて、講師を送って開講するなど、積極的な参加とアイデアが要請された。効果的に貢献でき、かつ日本の研究者が自らを向上させることのできる方策を提案し、それを実施する体制を作り上げる段階にきている。支援の選択、実施方法については途上国の意見を尊重するとしても、これからは本当に能力向上につながっていくのかを評価する必要があるだろう。
  プロジェクトからの報告では、GLOBECがPICES、CLIOTOPなどの支援を行ってきたことも含め、影響力の大きなプロジェクトとして成功裏に終わったと述べられた。GEOHAB(IOCと共同支援)、IMBER(IGBPと共同支援)、SOLAS(IGBP、WCRP、CACGPと共同支援)について報告があり、またGEOTRACESが順調に滑り出したことも述べられた。学術的発展への貢献はもちろんであるが、全体としてシンポジウムの開催、出版物が目に見える成果とされている。
  2011年予算を大きな削減なしに承認したが、世界的な経済状況など不安な要素があり、資金の確保にこれまでより注意すべきであると報告された。経費節減は難しいと判断されており、各国の支援額を増やすこと、参加国を増やすことを期待するものの、明確な方針は提起されていない。
  分野間バランスについて、WGへの貢献度を分野ごとに分析すると、近年の傾向として生物が増え、化学が減っている。この傾向は望ましいことではないと考え、WGの申請を提唱するため、いくつかの想定題目を示している。しかしその成果が表れているとは言えず、根本的な方策を講じる時期に来ているだろう。
  フランス海洋科学シンポジウムに参加して、フランスが非常に積極的な海洋観測を全世界で実施していることに感銘を受けた。また女性研究者が多く、発表の仕方についてはむしろ男性研究者より主張がはっきりしている。教育方法と同時に社会体制が作り出した成果と受け取った。
  現在の世界が直面している問題に、地球温暖化と生態系破壊があることは言うまでもない。海洋は炭素循環を担う要素であるとともに、多様な生態系をはぐくんでもいる。ただし海洋が地球規模変化にどのように応答するのか、さらに人類がどう海洋を保全していけばよいのか完全にわかっている訳ではない。気温上昇にともなって植物プランクトンの生長が阻害されれば、二酸化炭素を吸収している海洋が放出源となる可能性もはらんでいる。このように複雑な海洋を協力して解明する推進力となることを目指して活動したい。
  日本におけるSCOR委員会である本分科会は、この1年あまりの期間で、学術会議の主導による大型計画の策定が進んでいる状況に対応するためもあり、マスター・プランを作る作業に入っている。専門家の意識を高め、協力しやすい状況を作り上げる所存である。また、若者の意欲をくみ上げ、奨励するため、ブレーク・スルー研究を題材にしたシンポジウムを開催してきた。昨今のプロジェクト研究の隆盛は社会貢献に直結し、研究推進の基盤を整えるものであるが、その一方で型にはまった研究を強制される側面も否定できない。もし若手研究者が「ブレーク・スルー研究を口に出す」ことをはばかるような雰囲気があるとしたら、打破しなければならない。自由闊達な研究も支援したいものである。

次回開催予定 2011年9月

  2011年幹事会のフィンランド・ヘルシンキと、2012年総会のカナダ・ハリファックスは決定している。2013年幹事会が未定であり、南半球で開催することが望ましいとされた。2014年総会はドイツ・ブレーメンで開催される予定である。


                       


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