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代表派遣会議出席報告
1 会議概要
1)名 称 (和文) 地球倫理学国際セクション
      (英文)  The International Section on Geoethics
2)会 期 2009年10月12日?16日(5日間)
3)会議出席者名 西脇二一・中嶋順子
4)会議開催地  プリブラム(チェコ) 市
5)参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)  6カ国、18名、2名 
6)会議内容

・日程及び会議の主な議題
 このセクションはプリブラム採鉱シンポジウムに含まれる4つのセクションの一つとして開催された。開会式および社交プログラムはシンポジウム全体で行われたが、セッションおよび巡検についてはこのセクション独自に行われた。以下の日程表で(共通)とあるもの以外は、このセクションのみの日程である。

1日目 午前:セクションの登録
      午後:WGの会合(1回目)
      セッションA:地球倫理学の一般的問題
2日目 午前:開会式および全体セッション(共通)
     午後:セッションB:地球倫理学と鉱物資源
     夕方:懇親会(共通)
3日目 午前:セッションC:環境保全と地球倫理学
     午後:セッションD:地球倫理学の惑星視点
     夕方:鉱山学校入学セレモニー見学(共通)
4日目 終日:巡検
5日目 午前:WGの会合(2回目)
     最終セッション
6日目 午後:WGの会合(3回目)
・会議における審議内容・成果
 地球倫理学は地球の資源・環境・災害などに関わる地球科学的判断を行う際の倫理学的視点について研究を行う学問で、20年ほど前から注目されるようになった。
 今回の会議で特に議論された点は、米国・ロシア・中国などの大国の行動規範をどのように制御していくか、経済格差のある国の間での考え方の違いをどのように埋めていくか、環境変動、特に地球温暖化の抑止のために地球科学者はどのような働きができるか、現実の環境汚染およびその危険性に対してアセスメントの結果をどのように活かしていくか、国際プロジェクトを進める際の国際的平等性をどのように確保するか、IYPY(国際地球惑星年)やジオパークなどの中で全地球的な視点をどのように確保していくか、地球倫理学を普及するための教育をどのように行うか、などである。
 地球倫理学に関する研究は徐々に増えてきているが、地球科学の中では未だ小さな分野でしかなく、独自の学会を作るまでの大きな流れにはなっていない。地球倫理学の普及を図るための国際的基盤としてAGIDの地球倫理学ワーキンググループを保持すると共に、各国毎に地球倫理学に関わる国内委員会を組織するように働きかけ、国際・国内を問わず、地球倫理学に関わるセッションをできるだけ多く開催できるように努力することとなった。
 これらの活動を続ける中で、国際的同意を形成し、UNESCOあるいは国際地質科学連合(IUGS)の中に地球倫理学に関するTask GroupあるいはCommissionを設立し、地球倫理学を国際的に定着させるための公的活動を強化することを目指していくこととなった。
・会議において日本が果たした役割
  今回の会議では、地球倫理学を国際的に普及させるために国際プロジェクトあるいは国際機関の中での委員会を立ち上げることが検討され、コンビーナの要請を受けてIUGSにおけるTask GroupやCommissionの役割、制約、設立手続き、運営方法などについて出席者に紹介し、今後の方針を決めるための手助けを行った。
・その他特筆すべき事項
 特になし
2.会議の模様
 プリブラム採鉱シンポジウムは隔年毎(但し初期は毎年)に開催されるもので今回が第48回に当たる。このシンポジウムは元々はチェコの国内シンポジウムで、初期は近隣の諸国から一部の研究発表が加わる程度であったが、1989年のチェコ解放後はその中にいくつかの国際セクションを組み込んで多くの国からの研究発表が行われるようになった。今回は4つのセクション(鉱山登録、採鉱の歴史、採鉱の科学と技術、地球倫理学)があったが、そのうちで国際セクションは地球倫理学のセッションのみであった。全体の参加者は約300人で、そのうちチェコ国外からの参加者は1割程度であった。
 地球倫理学セクションはIUGS(国際地質学連合)傘下の学会であるAGID(国際発展地質学者協会)との共催として行われ、実際の企画はAGIDの中の地球倫理学ワーキンググループ(WG)が行った。1992年からほぼ2年毎に開催され、万国地質学会(IGC)の一部として開催されたものを含めて、今回が10回目である。
  4日目に行われた巡検では世界遺産の町ピーセックを訪れた。ここでは2002年に東欧から中欧をおそった大洪水で破壊された歴史的な石橋が、EUが経費の90%を負担することで完全に修復され、これが地球倫理学の一つの例として紹介された。
 今回の会議期間中、チェコは寒波に襲われ、季節外れの雪で移動が大変であった。最終日5日目のワーキンググループの会合は午後まで続く予定であったが、雪による交通混乱が予想されたため、当日中に帰国する人の便宜を考え、開始時間を早めて午前中に終了し、全員が昼にプリブラムからプラハへ移動した。みぞれがひどかったが、幸いバスが大幅に遅れることはなかった。
  なお、コンビーナの希望で、翌日6日目、プラハで追加の会合をもつことになった。参加できたのは4名にとどまったが、前日残った問題について方向性を決め、コンビーナから全参加者にメールで報告された。
次回開催予定 
 2011年10月
   
プリブラム採鉱シンポジウムの開会式の模様。
季節外れの雪に覆われたプリブラム。遠方山頂にあるのが修道院Svata Hora。
EUの支援で完全修復されたピーセックの石橋。
  

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