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代表派遣会議出席報告
1 会議概要
1)名 称 (和文) 第2回世界知識対話
      (英文) World Knowledge Dialogue Second Edition
2)会 期 平成20年9月10?13日(4日間)
3)会議出席者名 河野 長
4)会議開催地 スイス共和国クランモンタナ市 (Crans Montana)
5)参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)  参加国数:30、参加者数:約300、うち日本人:13
6)会議内容
・日程及び会議の主な議題

 World Knowledge Dialogueは、スイスにある同名の財団が主催する国際会議で、第1回は2006年9月に開催されている。会議は4日間にわたって開かれ、二つの主テーマ (1. Collaborative behavior, altruism and conflict: From animal to social and economic conduct; 2. Collective network knowledge and human individual intelligence: Convergences and divergences) を中心とした議論を進めた。会議の方式は主に1会場で行ったが、2日目と3日目の午後それぞれ2時間ずつ4つの会場に分かれたDialogue labsを設けて主題を絞った討論も組み入れてある。 
・会議における審議内容・成果
 会議の全体では5件のkeynote speechesがあったが、この中には2人のノーベル賞科学者もいる豪華な顔ぶれであった。John Sulston(2002年医学生理学賞)は、 特に医学や製薬における開発研究が富んだ国の医療目的に偏って進められている現状について述べた。Christine Nusslein-Volhard(1995年医学生理学賞)はES細胞の扱いに関する規制がヨーロッパの中でも厳しい国と比較的緩やかな国に分かれている現状を述べ、 決定するのは社会や政治であるが、科学者が適切な助言をすることの重要性を述べた。あとの3件はJoel de Rosnay(デジタル社会での知的結合)、Edward Wilson(生物科学の将来)、Hubert Reeves(天文学とエコロジー)である。
 主テーマ1についての議論では、蜂の社会(R. Gadagkar)、類人猿(Frans de Waal)、人間社会(Karen Cook)と様々な動物における利他主義の研究発表が続いたのが興味深かったが、最後に戦争や内戦時のひどい話が出て(Jean-Pierre Hocke)人間もあまり威張れないことがわかった。
 主テーマ2では、Semantic webに関する発表が2件(Wendy Hall, Pierre Levy)とWikipediaに関する発表(Florence Devouard)あり、web上で各種の技術開発や共同作業が進んでいることがわかった。
・会議において日本が果たした役割
 実は今回の日本からの参加者の大半はScience and Technology in Society(STS京都フォーラム)の関係者である(吉川産総研理事長、黒川内閣特別顧問、有本JST社会技術研究開発センター長など)。これは2006年の会議のときも同様だったようで、WKDとSTSという性格の幾分似た国際会議の間で相互乗り入れをしているような印象がある。
 第2日午後のDialogue labsのうち一つはSTSフォーラム関係にあてられ、黒田玲子東大教授の司会の下、WKDとSTSの共通点と違いに関する議論が5件、実際の研究機関での学際的な取り組みや国際計画などについての発表が4件あった。報告者はここで"Earth history under the ocean floor"と題する講演を行ったが、その内容はIntegrated Ocean Drilling Program (IODP) における国際協力と様々な科学的発見である。
・その他特筆すべき事項
 World Knowledge Dialogueの目的は、自然科学と社会科学および人文学との間に会話をしようということであるらしい。しかし、現実には参加者の大半は自然科学者のようで、 対話が進んだという印象はない。これが困難な取り組みであることはよくわかるが、ノーベル賞学者など有名人を多数集めたからといって、実質が伴うと限ったものではないであろう。ただ、 財団で民間からお金を集めてこういう会議を運営している主催者の努力には敬意を払うものである。

2.会議の模様
 Crans Montanaは高度約1400mの高原にあり、スキーやゴルフで有名な大リゾート地であるらしい。街には、やたらに高級店が並んでいる印象がある。しかし今回は天候が悪く、ほぼ毎日雨が降るような状況で景色や街を楽しむ余裕はなかった。もっともそのせいで4日間ずっと会議につきあうことができたともいえるが。
 今回の会議では数十人の大学院生やポスドク研究者を招いて、会議の運営(マイクやスライドの管理、ビデオ撮影など)をやらせていた。さらに会議の最後では、彼らのうち数人ずつにこの会議に参加しての印象と、今後の運営についての彼らなりの提言を言わせたが、これはなかなか良い試みだと思った。

WKD2008会場(Le Regents, Crans Montana)STSセッションで後援する吉川産総研理事長。その左にパネリストたち(黒田玲子, F. Waldvogel, J. Higgins, R. Ernst)










 WKD2008会場(Le Regents, Crans Montana)       STSセッションで後援する吉川産総研理事長。その左にパネリストたち(黒田玲子, F. Waldvogel, J. Higgins, R. Ernst)


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