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代表派遣会議出席報告
(添付資料1)

第2回IUGS-IGC統合評議会報告

松本 良
IUGS評議員(2004-2008)
日本学術会議IUGS分科会委員
東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻

 第33回万国地質学会議 (33rd IGC、2008年8月6日~14日)開催中のオスロで、IUGS(国際地質科学連合)とIGC(万国地質学会議)の統合評議会が開かれた。第33回万国地質学会議については別に小川勇二郎氏の報告があるので、ここでは評議会(Council)で議論された重要な事柄について報告する。重要な第1は会議の形態である。4年前まではIUGSとIGCで別個の評議会を開いていたが、前回フィレンツェの第32回IGCにおいて、(1)IGC-CouncilとIUGS-Councilを統合すること、および(2)IGC-総会を廃止することがそれぞれの評議会で決定され、第1回の統合評議会が開かれている。今回はIGCの冒頭8月6日と中日の8月10日の2回開かれ、役員改選、IGC開催都市などが審議された。また評議会に先立つ8月5日にはIUGSの執行委員会(Executive Committee)が開かれた。

■執行委員会(Executive Committee Meeting)8月5日 午前9時―12時
 会長Zhang Hongren、事務局長、副会長、財務、評議員により、6日の評議会の進め方、アジェンダの確認、会長等のメッセージの確認を行った。

■評議会 (Council Meeting) 8月6日 午前10時―14時
 第1回目の会議は昼をはさんで約4時間、国際会議場で開かれた(議長:IUGS副会長Eldridge Moores)。IUGSのメンバー国はIUGSへの拠出金の額に応じて8つのカテゴリーにランク分けされ、財務や直接IGCに関わる事柄ではカテゴリーに応じて1票から8票を、IUGSの役員選挙では各国は等しく1票を行使することになっている。今回、日本からは8人の代表団(斉藤靖二(団長)、佃 栄吉、西脇二一、小川勇二郎、加藤碵一、北里 洋、奥村晃史、松本 良)が出席した。前回議事録の確認の後、アジェンダについて議論。「定款と附則の改訂」が後半に回された。始めに会長Zhang Hongren、事務局長Peter Bobrowsky、財務Antonio Brambatiの報告があった。その後IUGSの初代会長James M. Harrison氏に、Outstanding Achievement Awardが贈られた。IGCとIUGSの統合強化が提案されているオスロで、”the IGC’s inability to act effectively between Congresses”を理由としてIUGSを設立したJ. M. Harrison氏に賞が与えられることは象徴的である。午後は副会長と評議員からの活動報告、国際IYPE Corporation代表のEduardo de Mulde氏からIYPE活動報告、事務局長からIUGS-Committees, Commissions, Task Groups の活動報告があった。
1. 会長報告 Zhang Hongren(中国)
 始めにIUGSが密接に関わる問題として、IYPEへの支援をあげ、現在までに68カ国に国内委員会ができ様々なアウトリーチ活動を展開していることが報告された。IUGSが重視している科学プロジェクトIGCPが地質科学の発展に寄与してきたことを述べたあと、アメリカがUNESCOへの醵金をカットした事がUNESCOからの資金削減という困難を生んでいると指摘した。次に今回の会議の中心課題の一つであるIUGSとIGCの統合強化の必要性についその歴史的経緯も含め時間をかけて訴えた。途上国支援についても触れたが、具体的には、途上国からIUGS役員/理事会メンバーになった場合の旅費等の支援について述べるにとどまった。理事会メンバーは当該国が原則として全ての経費を負担することになっているが、このことが途上国の研究者が会長や副会長になる上で障害となっていたことに触れたものである。最後に、昨今の油価の上昇やエネルギーや資源一般への強い需要増や北海道サミットで宣言された環境基金の設立に触れ、今後、地質科学への期待や様々な要請が拡大し地質学者の雇用環境も改善するだろう、との明るい見通しを述べた。
2. 財務報告概要 Antonio Brambati(イタリア)
 IUGSの財務状況は学術会議との関係において重要なので報告の要点を記す。
 2004年フィレンツェにおいて、財務に関しては(1)収入増、(2)管理運営経費の削減、(3)サイエンス経費の長期的増額を図ることが2004年-2008年期の課題とされた。この事を踏まえ以下の報告があった。
① 非活動メンバー国からの拠出金が回収された: (8,072USD)非活動国が正規メンバーに戻る際は支払いが滞っていた期間の年会費も支払うことが義務づけられていたが、1度だけの例外として、Botswana, Cameroon, Congo, Jordan, Malawiniにはこのペナルティーなしに回復を許した。Ivory Coast, SenegalはRoyal Society of Londonが年会費を支払ったためメンバーシップを回復した。
② メンバー国の新規加入:(4,473USD) 2005年にLatvia, 2006年にMozambiqueが加盟した。LesothoはR.S.L. が会費を支払って新メンバーとなった。この結果、会員組織は119カ国となり、投票権を停止されている“比較動会員”は2004年の37カ国から26カ国に減少した。
③ カテゴリー上位への変更:(41,997USD)これでカテゴリー8は日本、アメリカ、ロシア、イギリスの4カ国となった。
  Crotatia, Cyprus, Estonia    1 to 2
  Czeck Republic, South Korea  2 to 3
  Denmark              3 to 4
  Canada               5 to 6
  UK                 7 to 8

■評議委員会 (Council Meeting) 2008年8月10日 午前10時―15時
 リルストロームの国際会議場で30分遅れて始まった。第33回 IGCの中日にあたり一日巡検やワークショップに当てられていたが、IUGS-IGS役員や各国代表団は朝から缶詰の会議である。この日は投票が3つ予定されており、8月6日の第1回目とは違って冒頭からやや荒れ気味であった。
1.規約の改正(カテゴリー数で投票。日本の8票はすべて賛成票)
<経緯>IUGSとIGCの統合を進めるには、それぞれが持つ定款と附則を一本化する必要がある。その改訂作業は2000年-2004年の副会長であった佐藤 正氏を中心に始められ、第32回IGCフィレンツェの統合評議会で初期案が承認されている。さらに条文を詳細に検討するためフィレンツェの統合評議会において、Wolfgang Eder (Chair), Arne Bjorlykke, Jacques Charvet, Eldridge Moores, Alberto Riccardi の5人から成るタスクフォースが作られた。2005年以降のIUGS-執行委員会に随時報告され、2008年5月にドラフトが準備され、IUGSメンバー国の国内委員会およびIGC関係者に回覧された。今回の提案はドラフト案への意見を反映した最終案である。IUGSとIGCの組織的統合を目指す定款と附則の改訂には、イタリア国内委員会(委員長Gian Battista)とBoriani前IGC会長は強く反対しており、タスクフォースでの評決もきわどいものであったと報告された。フロアからはイギリス、イタリアの代表が評決の延期や今後の再改訂の可能性をふくむ提案をしたが議長であるEldridge Moores はこれらを修正案とは認めず評決を強行した。しかし結果は
事務局提案に賛成 111票 反対 72票
で、定款の改訂に必要な三分の二の賛成をうる事は出来なかった。この結果、IUGS-IGCの統合については、当面は前回フィレンツェの定款に従うことになった。
2.IUGS役員の選任(IUGS関係なので各国1票。日本はRiccardi へ1票)
 2012年までの4年任期の会長、事務局長、副会長2名、財務、評議員2名の計7名は今年で4年の任期が切れる。また2年後には残りの2名の評議員の任期も切れる。これら9つのポストについて、Eldridge Mooresを委員長とするNominating Committee(推薦委員会)から候補者リストが提出された。リストは各国の国内委員会等から推薦された候補者を以下の基準に照らして評価されたものである。
<判断基準>①地理的分布と研究分野のバランス、②地質科学全般についての学問的素養、③学術における管理経験、④出身国からのインフラ支援の可能性、⑤男女バランス、⑥IUGSの仕事への熱意、⑦外交的能力と多文化感覚、⑧誠実かつ良心的性格、⑨第2外国語としての英語能力。このうち①~③は附則に明記されている条件であるが他の基準はEldridge委員会の基準である。会長ポストについては2名が推薦リストに掲載された。結果はRiccardi博士がToteu博士の約2倍の票を得て新会長となった。会長以下他の役員は以下の通りである。
 新会長 Alberto Riccardi (Algentina)
 事務局長 Peter Bobrowsky (Canada)
 財務委員 William Cavazza (Italy)
 副会長 Jacques Charvet (France)
 副会長 Ochir Gerel (Mongolia)*
 評議員(08-12) Colin Simpson (Australia)
 評議員(08-12) Ezzora Errami (Morocco)*
 評議員(10-14) Wesley Hill (USA)*
 評議員(10-14) Sampat Kumar Tandon (India)
 非改選の評議員(-2010) Marta Mantovani (Brasil)*
                 Michael Fedonkin (Russia)
 * female
3.Nominating Committee(推薦委員会)の推薦と承認
 2008―2012年の委員として以下の7人が提案され承認された。
 Zhang Hongren (China)
 Ryo Matsumoto (Japan)
 Elena Centeno Garcia (Mexico)
 Peadar McArdle (Ireland)
 Jonas Satkunas (Lithuania)
 Felix Toteu (Cameroon)
 Marita Bradshaw (Australia)
4.第35回IGCの開催地の決定(IGC関係なのでカテゴリー票。日本の8票はインドへ。)
 始めに、IGC招致に立候補したモロッコ、インド、南アフリカ連邦が招致のプレゼンを行った。南アは“南アフリカ圏連合”からの提案と言う形でプレゼンをした。インドはIT産業で最近大きく発展した都市ハイデラバードでの開催を提案した。マラケシでの開催を提案したモロッコのプレゼンは、鉱物資源開発への海外からの投資を促すような内容であった。投票では1回目の1位南ア、2位インド、3位モロッコ。2回目の決戦投票で過半数を得た南アと決まった。 日本は8票まとめてインドを推した。その理由は、1)日本からのアクセスが良く、日本から多くの参加が期待できる、2)アジアを応援することは、今後日本がアジアでのイニシアチブを取ることに繋がる、3)東南アジアや南アジアで日本主導のプロジェクトがいくつかあり会議でセッションを共同提案するなどサイエンスプログラムに貢献できる、4)南アの安全性には懸念があり、遠くて航空券も高いため日本からの参加者が少なくなる恐れがある、5)モロッコは地中海圏でありイタリアで2004年にやったばかりで、地理的バランスから今回は困難と判断。  

以上

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