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代表派遣会議出席報告
1 会議概要
1)名 称 (和文)第38回国際アジア・北アフリカ研究会議
      (英文)The 38th International Congress of Asian and North African Studies
2)会 期 2007年9月10日~15日
3)会議出席者名 岸本美緒 第1部会員
4)会議開催地 トルコ アンカラ市   
5)参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)62か国、約2000名うち日本人20名前後 
            
6)会議内容
・日程及び会議の主な議題

9月10日 午前 開会式
9月10日の午後から15日の昼過ぎまで個人発表とパネルが行われた。全体は、以下の13のグループに分けられていた(カッコ内は各グループのセッション及びパネルの数である)。
1 語学・文法・語学教育(45/5)、2 歴史と諸文明の歴史(57/3)、3 宗教(18/0)、4 哲学(9/0)、5 物質文化(18/1)、6 東洋学(9/0)、7 環境と都市化における問題と解決(20/0)、8 文化変容、成長と流動性(20/0)、9 経済(6/0)、10 国際関係(29/0)、11 科学と文学における問題と解決(35/3)、12 博物館、文書館、図書館、出版と版権の問題(5/1)、13 音楽文化と音楽教育(16/2)
9月15日午後 閉会式
会議の総合テーマは"Peace at Home, Peace in the World"であったので、宗教・思想と平和との関係を論ずるものが比較的多かったが、アジア・北アフリカを対象とする人文社会科学全般が対象であった。
・会議における審議内容
各国での研究状況、新史料の紹介など、広範な問題が論じられた。
・会議において日本が果たした役割
運営に関しては、本会議の開催準備のための国際諮問委員会には、高崎直道IUOAS会長および粂川光樹氏の両氏が日本から参加し(諮問委員は全体で28名)、本会議の準備に尽力された。 また、会議の内容面では、伊原弘氏の組織した、中国史を中心とする比較史のパネルがあり、各国からの参加者(日本、オランダ、USA、台湾)による報告がなされたが、これはトルコ人研究者以外が組織したパネルとしてはおそらく唯一であり、国際会議にふさわしい内容のものであった。さらに一般報告においても、日本人研究者の報告は概して、①研究内容の先端性、②フルペーパーの準備などの配慮、などにおいて高い評価を受けるものであったと考えられる。
・その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)   
トルコでは、政府が本会議にかなり力を入れており、マスコミも会議場に多数入っていた(特に開会式)ので、新聞やテレビで大きく報道されたものと思う。
2.会議の模様
 トルコ語・ロシア語の発表が多かったこと、岸本の専門とする中国史の報告がほとんどなかったことなどから、内容がよく理解できたとはいえない。全体の傾向としては、
(1)具体的な新史料の提出といった形(これは日本人の報告に比較的多かった)よりも概説的なものが多い。
(2)会議全体のテーマが"Peace at Home, Peace in the World"であったことから、宗教・思想と平和との関係を論ずるものが比較的多かった。
(3)フルペーパーのコピーを配るといったことは、日本人以外はほとんどなかったが、パワーポイントはかなり使われていた(管見の範囲では3割くらい)。  
 本会議の長所は、アジア・北アフリカの多くの地域から研究者が集まってきているため、それぞれの地域で行われている研究の動向を知ることができる、ということであろう。報告テーマそのものに止まらず、送迎バスや食事の際の会話から、様々な情報を得ることができた。各国・各地域には、現在の政治情勢ともからまる複雑な研究潮流が存在し、それが世界のアジア・アフリカ研究の大きな裾野を形成している。「当該分野の学術の動向」といっても、本会議のカバーする領域は広く、一言で述べることはできないが、日本のアジア・アフリカ研究の今後の方向として、現地の研究者の問題関心に即した内発的な研究の発展と連携していくことが必要であることは明らかであり、本会議はそのような交流の場となりうるものであると考えられる。
 本会議では、若手研究者の参加を促す努力をしたようであり、若い研究者の発表が多く見られた。女性の比率も高く、印象ではあるが半数近くが女性であったのではないかと考えられる。  
 ただ一方で、管見の範囲では、著名な第一線の研究者による皆が注目するような報告がなく、会議全体が個別報告の集積というやや散漫な印象を呈していたことも否定しがたい。
 次回はオランダで開催される予定であるが、開催時期は未定(3年から5年以内)


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