日本学術会議 トップページ > 代表派遣 > 代表派遣結果等
 
代表派遣会議出席報告
1 会議概要
1)名 称 (和文)第23回国際地図学会議及び第14回国際地図学協会総会
      (英文)The 23rd International Cartographic Conference and the 14th General Assembly of the International Cartographic Association
2)会 期 2007年8月4日~10日
3)会議出席者名 代表:森田喬(連携会員)、副代表:熊木洋太(連携会員)、そ の他12名
4)会議開催地 ロシア・モスクワ   
5)参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)63カ国、参加者数:1280名、日本人参加者:14名
     
6)会議内容
・日程および会議の主な議題
初日と最終日に総会が開催され、過去4年間の経過報告、次期新執行部役員の選出および予算の承認があった。また、総会にはさまれて総合テーマ「みんなの地図そしてあなたの地図」会場のもとに137のセッションに分かれて研究発表が行われ、あわせてロシア地図展および各国からの出展による国際地図展、国際子供地図展、国際技術展が開催された。
・会議における審議内容・成果
 会長挨拶次期執行部は、会長がオーストラリア、事務局長が英国、副会長が南アフリカ、オーストリア、チリ、オランダ、中国、フランス、米国からと地理的分布および大会開催予定国を配慮したものとなった。次期予算額は前期と変わらないが通貨単位が米ドルからユーロに変更となった。加盟国数は新規加盟が3カ国あり83カ国となり漸増である。また、新たに5つの委員会の設置が認められた。 執行部からの基調報告やセッションテーマの傾向から、地図は地理情報の視覚化を基本的な拠り所としているが、デジタル化および情報・コミュニケーション技術の発展により地図の作り手と使い手の区別が曖昧となってきている。専門家ではない作り手が増えている一方で、安全・安心対策や土地や施設の管理、ナビゲーションなど社会的需要は増大している。更に、地球温暖化対策など地球レベルでの問題解決にも地図の機能は期待されている。また、これからの地図はいつ・どこでも・だれでも利用目的に応じて提供されるようになると予想され、このためには、利用者および社会からの要求仕様を明らかにし、地図技術の円滑な社会化を図る必要がある。地図分野は、このように社会的位置づけが変化しつつあり、地図構築・利用に関する新たな社会制度の提案を含む研究開発を推進すべきとの方向性が示された。
・会議において日本が果たした役割
 開会式における会長の基調報告のなかで今後の地図学について日本提案のユビキタスマッピングの概念が大きく取り上げられた。 研究発表の第13テーマの「位置情報サービス・モバイルマッピング・ナビゲーションシステム」は、4つの口頭発表セッションと一つのポスターセッションで構成されたが、これは日本が主導しているユビキタスマッピング委員会がプログラム構成の段階から関与しているもので、日本から4名の座長や7件の発表者を送り込み中心的な役割を果たした。なお、ユビキタスマッピング委員会は次期も継続することが総会において承認された。 国際地図展においては7名の審査員のうちの一人として日本から森田喬が指名され審査に参加した。この国際地図展において10分野のうちレクリエーション・案内地図部門で日本出展の「ビスタマップ旭川」(北海道地図株式会社)ビスタマップ旭川が最優秀賞を獲得し日本の水準の高さをアピールした
・その他特記すべき事項
 国際地図展受賞のニュースは北海道新聞9月5日の第1面に報道された。
2.会議の模様(会議のより詳細な状況,宿題,次のステップ,次回開催等)
 ・第14回ICA総会
総会は大会初日の4日(土)と最終日の9日(木)の2回にわたって行われた。日本からは、代表:森田喬、副代表:熊木洋太の2名が参加した。 加盟国数は新規加入としてモンテネグロ、マケドニア、ボツワナの3カ国が承認され83カ国となった。また、賛助会員として新たに7団体が加わった。 Konecny会長およびOrmeling事務局長より、過去4年間のICAの活動について総括的な報告があり、また担当役員より、会計、出版、委員会活動、各国のナショオナルレポート提出状況などについて報告が行われた。表彰委員会の推薦により、カール・マンネフェルト金メダルをJ. Dangermond(米国ESRI社)、ICA名誉会員の称号をH. Kerfoot(カナダ、国連地名専門家)、G. Metternicht(オーストラリア、前ICANews編集長)、K. Shingareva(ロシア、モスクワ大会学術委員長)の3名に授与するとの報告があった。 定款の変更については、定款6条の執行部に設ける機構の項に「地図学および地理情報振興基金管理委員会」を追加、および内規1bの加盟費のカテゴリーおよび単位に「カテゴリー7、10単位」を追加、内規2の通貨単位を1単位250米ドルから1単位250ユーロへ変更することが投票により決まった。 次期(2007-2011)の予算については、通貨単位をドルからユーロに変更し20万ユーロとする原案が可決された。また、同時に加盟各国のカテゴリーおよび単位数の見直し案も提示された。 新執行部は、会長はW. Cartwright(オーストラリア)、事務局長はD. Fairbairn(英国)、7名の副会長にD. Clark(南アフリカ)、G. Gartner(オーストリア)、P. Gran(チリ)、M. Kraak(オランダ)、Z. Li(中国)、A. Ruas(フランス)、T. Trainor(米国)がそれぞれ選出された。 次期の新しい委員会(および委員長)として、デジタル技術と地図遺産(E. Livieratos(ギリシャ))、地理空間分析とモデリング(B. Jiang(スウェーデン))、地図と社会(C. Perkins(英国))、地図利用と利用者の課題(C. Elzakker(オランダ))、恵まれないグループと地図(W. zyszkowska(ポーランド))が承認され、また17の委員会(地図と子供、教育と訓練、総描と多面的表現、地理空間データの標準化、地理空間の視覚化、地図の歴史、地図生産の管理と経営、地図投影、衛星画像を用いた地図作成、目の不自由な人々への地図と図的表現、地図とインターネット、海洋地図、山岳地図、国および地域アトラス、衛星地図、理論地図学、ユビキタスマッピング)の継続が決まった。この他に執行部役員の担当のもとに三つのワーキング、すなわち会長が「アートと地図」、前会長Konecnyが「災害の早期警報と危機管理」、南アフリカのClarkが「アフリカのための地図作成」を推進させることになった。 4年後の総会及び国際地図学会議の開催地としてフランスのパリが投票により決まった。会期は2011年7月4日-9日の予定である。パリはICA第1回総会開催地でもあり50周年の里帰り大会となる。
 ・ 研究発表 研究発表は26テーマのもとに8つの会場で同時進行により542件(口頭発表446、ポスター発表96)の発表があった。発表数が最も多かったテーマは「アトラス」に関するものであり、「理論」、「総描」などがこれに続いた。純粋の地図作製方法に関するテーマとともにデジタル化された地図と社会との接点のあり方を議論しようとする研究発表が多かった。
 ・ ロシア地図展 ロシア地図展がクレムリン近くの国立図書館で行われた。モスクワとサンクトペテルブルグの両国立図書館収蔵の16世紀から20世紀初頭までの代表的な地図およびアトラス約100点が展示された。
 ・ 国際地図展・国際技術展・国際子供地図展 三つの展示会が同時にパビリオン・モスクワ展示場において開催された。国際地図展には1380点の地図およびアトラスが29カ国から寄せられた。出展作品は10部門に分かれて審査が行われた。展示作品は,大判の紙地図が中心であるが、制作工程はデジタル化が進み精緻な表現が多くみられた。 国際技術展は同じ会場において、約50社が測量機器、GIS機器、GISソフト、衛星画像データ、地図データなどを展示していた。ESRI社など国際的に良く知られた名前もあるが地元ロシアからの出展も少なくなかった。但し,ロシア語の資料が多くコミュニケーションが困難な場面も見られた。 国際子供地図展は174点(9歳以下26,9-12歳79,13-15歳69)が36カ国から寄せられた。9歳以下はインドネシアとイラン、9-12歳は英国とブルガリア、13-15歳はカタール、ポーランド、ウクライナ、が優秀賞に選ばれた。なおカタールからは4歳児からの出展があった。
 ・ 次回開催予定 次回第24回国際地図学会議は2年後の2009年11月15日から21日までチリのサンチャゴで開催される予定である。


このページのトップへ
日本学術会議 Science Council of Japan

〒106-8555 東京都港区六本木7-22-34 電話番号 03-3403-3793(代表) © Science Council of Japan