公開シンポジウム「人口減少下の地域福祉と地方自治」

 生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律が2025年4月1日から施行されている。この改正法に至る前段階で、厚生労働省は社会保障審議会に生活困窮者自立支援及び生活保護部会を設け、様々な論点について議論してきた。このなかで、「支援を担う体制づくり及び人材育成等について」「生活保護業務の効果的・効率的実施及び不正受給対策について」などが論点として取り上げられている。具体的には、前者は、専門的支援に関する人材不足について都道府県など広域・他機関の助けを借りて研修を実施すること、後者は、ケースワーカーの負担を軽減することなどが議論されており、生活困窮者自立支援法に絡めて育成した人材を生活保護にも活用したいという方向性が見て取れる。
 しかし、そもそもは、社会福祉法において福祉事務所や社会福祉主事といった福祉行政に携わる人の専門性及び人数は規定されている。つまり、社会福祉主事は福祉行政の専門職であり、昨今の地方自治体では、様々な形で福祉専門職を採用している。常勤・正規雇用で、困窮者に接する人材を安定的に確保できるという意味で、社会福祉法の規定は重要である一方で、その専門的能力をどう育成するのかについて新味のある議論は見当たらず、従前通りの研修や他機関からの援助が期待されているにすぎない。
 こうした問題は福祉行政が抱えている課題の一端に過ぎない。近年、とりわけ生活保護にかかる福祉の現場においては課題が多岐に渡りかつ深刻化しているにもかかわらず、関係する学問領域間で相互に議論する経路を見いだせていないのが現状である。そもそも、論点設定が困難であることに加え、論点設定できる適切な場も見当たらない。
 そこで、本シンポジウムでは、全国的に人口減少と高齢化が避けては通れない与件となっている今、様々な観点から地域における福祉行政にかかる課題を明らかにし、関係する学問領域間での複層的な議論を行うことを目的とする。行政学、社会福祉学、福祉財政、地域福祉に広域的に関わる自治体の現場からそれぞれの論客をそろえ、人口減少下の地域福祉と地方自治について多元的・多角的な検討を試みるものとする。

イベント概要

開催日時 令和7(2025)年11月15日(土)13:30~16:30
開催地 長野県立大学三輪キャンパス 北棟講堂
対象 どなたでも参加いただけます。
定員 100名程度
プログラム
13:30 挨拶
嶋田 暁文(日本学術会議連携会員/九州大学大学院法学研究院教授)
13:35~16:20 報告・質疑
報告1「地方分権後の地方政府の構造的障害再考」
北山 俊哉(日本学術会議連携会員/関西学院大学法学部教授)
報告2「長野県における行政体制最適化に向けた取組について」
関 昇一郎(長野県副知事)
報告3「生活保護行政から考える地方自治」
岩永 理恵(日本学術会議連携会員/日本女子大学人間社会学部社会福祉学科教授)
報告4「地域包括ケアシステムの構築と公民連携」
藤井 えりの(岐阜協立大学経済学部准教授)
16:20 全体総括
森 裕之(立命館大学政策科学部教授)
16:30 閉会
 申込み 参加費無料・事前申込不要
 問い合わせ 日本地方自治学会企画委員長 森裕之(立命館大学)
メールアドレス: hmt23243(a)sps.ritsumei.ac.jp ※(a)を@にしてお送りください。
備考 主催:日本学術会議政治学委員会人口減少下の行政・地方自治分科会、日本地方自治学会