公開シンポジウム「Soil Healthとは? 土壌の健康の理解・維持向上・共有」
土壌は陸域のすべての生態系を支える基盤です。すなわち、食糧生産の場であるとともに、土地利用を支える植物栄養の供給と循環、生物多様性、水の浄化、気候制御など環境を調整し、地域の景観の基盤として文化を支えるサービスを提供しています。長い間、人類は土壌が供給するこれらのサービスを当たり前の存在として無意識に享受してきました。さらに、良質な作物を多量に安定的に収穫するための農業生産技術を開発し、土壌が提供するサービスを過剰に搾取し続けてきました。しかし、食糧安定供給の代償として、生物多様性の喪失、土壌有機物の消耗、水質汚濁や富栄養化、温室効果ガスの排出、アンモニア揮散、NOxやSOxの排出、土壌侵食や土壌圧縮、塩類化などの土壌劣化が世界中で顕在化しています。すなわち、日本を含む世界中のさまざまな地域で土壌の健康が損なわれています。
本シンポジウムでは、この事実を認識し、将来の土壌の健康の維持向上のための道筋を次の3つのテーマにおいて議論します。
- 土壌の健康とは?: FAO(国連食糧農業機関)では、2020年に土壌の健康を「土壌が陸上生態系の生産性、多様性、環境サービスを維持する能 力」と定義しています。生態系サービスは、環境条件や土地利用によって異なります。日本は、地形は急峻で火山があり、気候はモンスーンで亜寒帯から亜熱帯の範囲にあり、土壌は火山性を含む堆積性です。また、水田という特徴的な土地利用がもたらす生態系サービスも重要です。日本の土壌が健康である状態や土地利用に応じた土壌の健康診断基準について検討します。
- 土壌の健康を向上させるイノベーション:健康な土壌が最大限の生態系サービスを生み出す要は、有機物として存在する土壌炭素です。土壌炭素を消耗させない、土壌炭素の蓄積を促す技術開発は、土壌の健康回復のためだけでなく、地球温暖化対策としても重要です。適切に土壌炭素を維持した土壌は、様々な環境インパクトを柔軟に受け止め、生態系サービスを維持する回復力と持続性に優れた土壌となります。土壌の健康回復と健康維持のため、土地利用に応じた管理技術について検討します。
- 土壌の健康を共有するために:地域レベルで土壌の健康を維持するためには、すべての市民が土壌からのサービスの恩恵に浴していることを認識し、その土壌の健康状態を知り、管理をサポートできることが望まれます。現在小学校の理科の教科書には土壌の文字そのものが無い状態です。このような事態において、土壌の健康に気付くことは非常に困難です。正当な知識、正確な情報、適正な管理技術を共有できる連携の構築について検討します。
イベント概要
開催日時 | 令和7年(2025年)7月26日(土)10:00 ~ 17:00 |
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開催地 | 日本学術会議講堂(東京都港区六本木 7-22-34) および Zoomウェビナーによるハイブリッド開催 Zoomウェビナーへのリンク(※ 会場・オンライン共に講演内容の撮影や録画はご遠慮ください) |
対象 | どなたでも参加いただけます。 |
定員 | 現地参加 約300名、オンライン参加 500名(どちらも当日先着順) |
プログラム |
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申し込み | 参加費無料・事前申込不要 |
問合せ | 下記のリンク先お問合せフォームより送信ください。 お問合せフォームへのリンク |
備考 | 主催:日本学術会議農学委員会土壌科学分科会・Soil Health小委員会 共催:(一社)日本土壌肥料学会 後援:日本土壌微生物学会, 日本ペドロジー学会, 日本土壌動物学会, 農業農村工学会, 日本第四紀学会, 日本地理学会, 日本森林学会, 土壌物理学会日本農作業学会, 環境科学会, 日本作物学会, 根研究学会, 森林立地学会, 日本沙漠学会, 日本腐植物質学会, 日本熱帯生態学会, 日本熱帯農業学会, 日本生態学会, 日本農学会, ムーンショット型農林水産研究開発事業循環型協生農業プラットフォームコンソーシアム |