公開シンポジウム「食・土・肥料-SDGs達成のための基礎科学として-」
現在、世界の食システムは困難な時期にある。気候変動による作物収量低下に加えてコロナ禍とウクライナ戦争によるサプライチェーンの分断は、肥料と食料の高騰を招いている。2022年人口は80億を越え、同時に飢餓人口も増加に転じた。このような世界情勢は,肥料と食料の自給率が低い日本には深刻な問題である。
食は豊かさの象徴であるが、その本質は私たちの生存の基盤であり、数多いSDGsの重要な位置を占める。現在、世界が2030年のSDGsの達成のために努力をしているが、日本は「ジェンダー平等」(目標5)、「つくる責任、つかう責任」(目標12)、「気候変動対策」(目標13)、「海の環境保全」(目標14)、「陸の環境保全」(目標15)、「パートナーシップ推進」(目標17)の6つの目標への取り組みが不十分と評価されている。目標12、13、14、15は食料の生産と消費に直接関わる問題であり、目標5も17もそのあり方の問題と捉えられよう。さらに食料生産はプラネタリーバウンダリーにおける窒素・リンの循環、生物多様性の喪失、気候変動、土地利用変化の問題にも深く関わっている。
このような背景のもと、私たちは食システムにおける土壌科学と肥料科学の貢献と課題を今一度検討しようと考えた。土壌と施肥の管理は、世界各国一様に食料生産の基礎中の基礎である。日本は肥料の原料の多くを輸入に頼りながらも、これまでの豊富な施肥により肥料成分が農地土壌に蓄積している場合も少なくない。この蓄積を維持し、どのように利用するかは食料生産の持続可能性に関わる問題である。一方、世界には土にほとんど肥料成分が含まれていない国もある。また、食料の生産工程は気候に左右され、地形に依存する。広い農地を持つ地域もあれば、傾斜地の狭い棚田や樹園地、放牧地を管理する地域もある。どのような地域でも農地は洪水や土砂流出などの災害防止により環境保全の役割も担ってきたが、反面、水や大気の汚染源にもなっている。従来、地域が持つ土地の生産力と環境保全力が地域の人口を扶養してきたが、現在および将来の気候変動下において、それらをどのように維持し、あるいは、見直すのかが持続可能性のカギであり、それを明らかにするためには地域間の相互理解も不可欠となろう。
本シンポジウムでは、そのような世界の多様性を認識し、責任ある食システムの構築に向き合うきっかけとなることを目標とした。
イベント概要
開催日時 | 2023年7月29日(土) 10:00~16:15 |
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開催地 | 東京農業大学世田谷キャンパス百周年記念講堂(オンライン配信あり) |
プログラム |
第1部「世界の食・土・肥料は今どうなってる?」
第2部「食・土・肥料のサイエンスでSDGs!」第3部「パネルディスカッション食・土・肥料」 |
申込み | 5月25日より受付開始 参加を希望される方は下記リンク先申し込み用サイトURLよりお申込みください。 申し込み用サイトURLへのリンク (会場にお越しいただける場合は当日参加も可能となりました。) |
問合せ先 | iybssd2022foodsoilfertilizer*gmail.com (送信の際には*を@ に変えてください) |
備考 | 主催:日本学術会議農学委員会・食料科学委員会合同IUSS分科会、農学委員会土壌科学分科会、一般社団法人日本土壌肥料学会 後援:日本土壌微生物学会、日本ペドロジー学会、日本土壌動物学会、公益社団法人農業農村工学会、日本第四紀学会、公益社団法人日本地理学会、一般社団法人日本森林学会、土壌物理学会、日本農作業学会、公益社団法人環境科学会、日本作物学会、根研究学会、森林立地学会、日本沙漠学会、日本腐植物質学会、日本熱帯生態学会、日本熱帯農業学会 |