公開シンポジウム「脱タバコ社会の実現を脅かす加熱式タバコ消費拡大の問題点」

 喫煙関連疾患の中で歯周病はあらゆる年齢層にみられ、有病率が高く、かつ慢性に経過するため、その予防・治療・保健教育の場は、絶好の喫煙防止・禁煙支援の場を提供している。WHOは「口腔保健・医療従事者・専門家は、多数喫煙者に接することができるので喫煙者の禁煙誘導に関し重要な潜在的可能性を持っている」と指摘し、さらに、「日常的に喫煙による口腔への影響を観察しているため、喫煙の害を強く懸念している」とも述べている。
 このような背景を受けて、たばこ対策の先進成功国では、生涯喫煙をしない世代の国家目標が設定されようとしている。わが国のたばこ対策は、未だ世界最高水準には及んでおらず、喫煙率は、男性では漸減の状態、女性では横ばいの状態がこの数年続いている。東京オリンピック開催を契機として、受動喫煙防止の規制強化が進んでいるが、当初の期待ほどには喫煙率の低下に反映されていない。その理由の一つに、加熱式たばこの普及が急増していることがあると推察される。加熱式たばこの普及により禁煙のメッセージが弱まり、効果的な禁煙治療の利用が進まないことが危惧されており、禁煙意思の低下・再喫煙や喫煙開始が喫煙率低下への効果が限定的となった理由の一つとされている。加熱式たばこ普及後発国からは、わが国の対策の遅れが指摘されており、加熱式たばこ普及が先行したわが国の責任は重い。
 そこで、禁煙活動に逆行して社会に広がりつつある加熱式タバコが、今後我々の健康にどのような悪影響を及ぼす可能性があるのかを市民とともに広く情報共有するために、本公開シンポジウムを企画した。

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イベント概要

開催日時 2023/5/21(日)13:00~15:40
開催地 大阪国際交流センター(第72 回日本口腔衛生学会学術大会併催)
対象 どなたでもご参加いただけます
プログラム
13:00 ~ 13:10 開会の挨拶
天野 敦雄(第72 回日本口腔衛生学会学術大会大会長・日本口腔衛生学会理事長 大阪大学大学院歯学研究科教授)
13:10 ~ 13:40 セッション1
座長 山下 喜久(日本学術会議連携会員、九州大学名誉教授)
「脱タバコ社会の実現を脅かす加熱式タバコ消費拡大の問題点 ― 脱タバコ社会の実現分科会の検討から」
演者 埴岡 隆(日本学術会議特任連携会員、宝塚医療大学保健医療学部教授)
13:40 ~ 14:10 セッション2
座長 井上 真奈美(日本学術会議連携会員、国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部長)
「新型タバコ・新型コロナ時代の脱タバコ」
演者 田淵 貴大(大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部部長補佐)
14:10 ~ 14:40 セッション3
座長 永田 知里(日本学術会議連携会員、岐阜大学大学院医学系研究科教授)
「加熱式タバコがはらむ社会的課題」
演者 片野田 耕太(国立がん研究センターがん対策研究所予防検診政策研究部長)
14:40 ~ 15:10 セッション4
座長 村上 伸也(日本学術会議会員、大阪大学大学院歯学研究科教授)
「歯科からみた加熱式タバコの健康影響」
演者 小島 美樹(梅花女子大学教授・日本口腔衛生学会禁煙推進委員会委員長)
15:10 ~ 15:35 全体討論
座長 山下 喜久(日本学術会議連携会員、九州大学名誉教授)
   埴岡 隆 (日本学術会議特任連携会員、宝塚医療大学保健医療学部教授)
15:35 ~ 15:40 閉会の挨拶
山下 喜久(日本学術会議連携会員、九州大学名誉教授)
 問い合わせ先 第72回日本口腔衛生学会学術大会 運営事務局
( 一財) 口腔保健協会 コンベンション事業部 〒170-0003 東京都豊島区駒込1-43-9 駒込TS ビル
TEL 03-3947-8761 / FAX 03-3947-8873 / E-mail jsoh72*kokuhoken.jp(*を@へ変更してください)
備考 主催:日本学術会議健康・生活科学委員会・歯学委員会合同脱タバコ社会の実現分科会
共催:日本口腔衛生学会
後援:歯学系学会合同脱タバコ社会実現委員会、日本歯科医学会連合、日本歯学系学会協議会、日本生命科学アカデミー、公益財団法人国際医療財団、花王株式会社、ライオン歯科材料株式会社、正晃株式会社、ロッテ株式会社