公開シンポジウム「地元創成看護学の実装-教育・研究・社会貢献の循環」

 人々の生活や健康に重大な影響を及ぼす課題は、「地元」によって多様な現れ方をする。その課題解決に資する保健医療福祉の資源も「地元」によって異なるため、一律の方策ではなく地元特有の解決が求められる。日本学術会議健康・生活科学委員会看護学分科会は、2020年9月に提言「『地元創成』の実現に向けた看護学と社会との協働の推進 」を発出した。この提言で、「地元」とは「看護の対象集団・組織等が所在する地域、または看護系大学等の組織の理念や趣旨に根差す特定の地域、地理的境界もしくは共通の特性でかたどられる社会集団」とした。また、「地元創成看護学」とは「地元の人々の健康と生活に寄与することを目的として、社会との協働により、地元の自律的で持続的な創成に寄与する看護学」を目指すものとした。これは、地元自らが主体的に活動していくという価値観のもと、地元の人々が課題解決に向けた方策を自ら考え創っていけることを意図しているものである。
 今日、災害が多発し、感染症パンデミックの複数の波を経験していく中で、各都道府県・市区町村、各設置主体・関連組織、あるいは多様なコミュニティを含む「地元」に特異的な課題とその解決策を模索する実践知と学術的知見が、看護系大学の活動の蓄積の中から生まれ続けている。これらを「地元」に特化した取組として終わらせず、地域・組織・時代を超えて社会実装していくという視点と方策を改めて問い直していく必要がある。
 今回は、東日本大震災の後に放射線看護学の分野を創設した青森県の弘前大学の事例、東京都で市民に向けた健康情報サービスを実装した聖路加国際大学の事例、高知県で多職種連携・地域-病院協働・参画型の退院支援体制を構築する事業を展開した高知県立大学の事例を取り上げる。それぞれの取組をご紹介頂き、教育・研究・社会貢献という活動を好循環に導くプロセスは何であったか、そのプロセスにおける課題やポイントが何であったかを共有する。そして総合討論では、災害や感染症パンデミックの先を見据えた次世代に向けて、看護系大学が取り組むべき地元創成看護学の社会実装を加速化させる具体的な方策を、参加者と共に考える機会としたい。

イベント概要

開催日時 2022/12/4(日)14:55-16:25
開催地 広島国際会議場第2会場(広島県広島市中区中島町1-5)
「第42回日本看護科学学会学術集会HP」にてライブ配信(ハイブリッド開催)
対象 どなたでも参加いただけます
プログラム
座長:綿貫成明(日本学術会議連携会員、国立看護大学校看護学部看護学科老年看護学教授)
   菱沼典子(日本学術会議連携会員、前三重県立看護大学理事長・学長、聖路加国際大学名誉教授)
開会挨拶
小松浩子(日本学術会議第二部会員、一般社団法人日本看護系学会協議会監事、日本赤十字九州国際看護大学学長)
「地元から発信する『放射線看護』-弘前大学大学院保健学研究科の取り組み」
野戸結花(弘前大学大学院保健学研究科教授)
「市民向け健康情報サービス『るかなび』」の実装」
射場典子(聖路加国際大学大学院看護学研究科准教授)
「地域・病院・多職種協働型入退院支援体制構築事業-高知県立大学の取り組み」
森下安子(高知県立大学看護学部教授)
総合討論 司会 座長
指定発言 西村訓弘(日本学術会議連携会員、三重大学教授)
閉会挨拶
萱間真美(日本学術会議連携会員、一般社団法人日本看護系学会協議会会長、国立研究開発法人国立国際医療研究センター国立看護大学校長)
 申込み ポスターのQRコード又は以下のリンク先の申込みフォームよりご登録ください。
申込みフォームへのリンク
備考 主 催:日本学術会議健康・生活科学委員会看護学分科会
共 催:第42回日本看護科学学会学術集会、一般社団法人日本看護系学会協議会