公開シンポジウム「芸術としての風土」

 風土は古来、水土と言われたが、では風土を自然と見なしても差し支えないのだろうか。和辻哲郎によれば、風土は自然環境や自然現象ではない。つまり和辻は、風土を私たち人間に対する対象、人間生活を規定するものではなく、人間存在の自己了解の仕方、あるいは自己客体化、自己発見の契機であると捉えたのだ。
 風土の現象は、文芸、美術、宗教、風習のような人間の生活におけるさまざまな表現に見出すことができるという。フランス人地理学者・東洋学者のオギュスタン・ベルクは、和辻の風土論を発展させ、人間存在とその風土との相互関係を積極的に導き、これを通態と規定した。現実は、主客の理論的二極間の往復運動として通態的なのである。ベルクにとって、風土とはまた、人間と地球の生態・技術・象徴的な関係をも意味する。
 このような風土の動態的関係に、私たちは芸術が求める自然美、芸術の創造的行為、その技術性を読み取ることができるのではないだろうか。このシンポジウムでは、登壇者の皆様とともに、「芸術としての風土」について考えてみたい。

イベント概要

開催日時 2022年11月26日 9:50~18:00
27日 9:50~18:30
開催地
    ハイブリッド開催:
  • 対面:京都大学国際科学イノベーション棟シンポジウムホール
  • オンライン:Zoom
対象 どなたでも参加いただけます
定員 対面200人、オンライン200人
プログラム

<11月26日(土)>

9:50-10:00 開会挨拶
佐野 みどり(日本学術会議連携会員、学習院大学名誉教授)
趣旨説明
阿部 健一(日本学術会議特任連携会員、人間文化研究機構総合地球環境学研究所研究教授)
上原 麻有子(日本学術会議連携会員、京都大学文学部・文学研究科日本哲学史専修教授)
10:00-10:50 講演『科学する詩人たちの旅 ゲーテの「イタリア紀行」を手掛かりに』
石原 あえか(東京大学大学院総合文化研究科教授)
10:50-12:05 対談『風土に宿るカタチ』
鞍田 崇(明治大学大学院理工学研究科准教授)
須田 悦弘(多摩美術大学彫刻学科客員教授、木彫アーティスト)
昼食(12:05~13:10)
13:10-14:40 基調講演『古典元素の芸術――倫理と美学の問題』
アレクサンドル・ポノマリョフ(アーティスト、南極ビエンナーレ・プロデューサー)
14:40-15:30 講演『アートと越境――日本・ロシア・東欧・南極』
鴻野 わか菜(早稲田大学教育総合科学学術院教育学部教授)
休憩(15:30~15:40)
15:40-16:50 基調講演『風土から自然学へ:自然科学と芸術の間で学ぶ新しい環境学』
山極 壽一(日本学術会議連携会員(第24期会長)、大学共同利用機関法人人間文化研究機構総合地球環境学研究所長)
休憩(16:50~17:00)
17:00-17:40 総合討論
17:40 閉会挨拶
山極 壽一(日本学術会議連携会員(第24期会長)、大学共同利用機関法人人間文化研究機構総合地球環境学研究所長)

<11月27日(日)>

9:50-10:00 開会挨拶
佐野 みどり(日本学術会議連携会員、学習院大学名誉教授)
趣旨説明
阿部 健一(日本学術会議特任連携会員、人間文化研究機構総合地球環境学研究所研究教授)
上原 麻有子(日本学術会議連携会員、京都大学文学部・文学研究科日本哲学史専修教授)
10:00-10:50 講演『気候変動の時代における芸術と環境美学』
伊東 多佳子(富山大学学術研究部芸術文化学系准教授)
10:50-11:40 オンライン講演『ユーラシア動物闘争文と生命循環:生きとしいけるものの造形と風土』
鶴岡 真弓(多摩美術大学美術館館長、芸術人類学研究所所長、ケルト芸術文化研究家)
休憩(11:40~11:50)
11:50-13:10 基調講演『サイトスペシフィック・アートー美術は土地に根差すー』
北川 フラム(アートフロントギャラリー代表、「大地の芸術祭」「瀬戸内芸術祭」総合ディレクター)
13:10-13:30 総合討論
昼食(13:30~14:30)
14:30-15:45 対談『芸と老い』
高橋 睦郎(詩人、日本藝術院会員)
村上 湛(明星大学人文学部日本文化学科教授、演劇評論家)
15:45-16:35 講演『風土としての「筆墨」と「書画」』
島尾 新(学習院大学文学部哲学科教授)
休憩(16:35~16:45)
16:45-17:55 オンライン基調講演『芸術としての風土』
オギュスタン・ベルク(フランス国立社会科学高等研究院退職教授)
17:55-18:30 総合討論
18:30 閉会挨拶
 申込み 参加費無料・要事前申込
以下のリンク先にある申込フォームより、お申し込みください。
申込みフォームへのリンク
 問い合わせ メールアドレス:geijyutsubunkakankyo25*gmail.com(*を@に変更してください)
備考 主催:日本学術会議哲学委員会芸術と文化環境分科会
共催:総合地球環境学研究所
後援:京都大学文学研究科日本哲学史専修