公開シンポジウム「東北マリンサイエンス拠点形成事業と今後の水産研究のあり方」

2011年3月11日に発生した地震と津波は、東北地方太平洋沿岸域における陸域の破壊、さらに破壊された家屋や重油などのあらゆる物質の海洋流出により、広い範囲で甚大な被害をもたらした。当初、海洋環境・海洋生態系の変化は沿岸域から沖合域、表層から深層までに及ぶと考えられたが、具体的な予想すらできない状態であった。
震災復興を果たすためにはその基幹産業である漁業復興が重要になる。そのためには漁業の基盤となる海洋環境・海洋生態系の変化を正確にとらえる必要がある。このために多くの海洋科学研究者がそれぞれの分野で広い地域にわたって調査研究を行ってきた。文部科学省も震災復興を目指して東北マリンサイエンス拠点形成事業を設置してその一翼を担い、それらの成果が蓄積されてきている。
これまでに震災による海洋環境・海洋生態系の変化が科学的に明らかにされてきた。この過程で漁業者も科学的調査研究に理解を示し、科学に対する考え方にも変化をもたらした可能性がある。さらにSDGsの理念を受けて科学的調査研究の結果をもとに、新たな水産業のあり方が考えられてきつつある。
東日本大震災から10年の歳月が経過しようとしている。日本政府は、震災後5年間を「集中復興期間」と位置付け、被災地の一刻も早い復旧・復興を目指し、それに続く5年間を「復興・創生期間」と位置づけ、10 年間の復興期間の「総仕上げ」に向かうとした。復興とは震災前に戻ることだけではなく、国連防災世界会議の仙台宣言にあるようにBuild Back Better(より良い復興)を遂げることと考えられる、本シンポジウムにおいては、震災後に行われた震災復興にかかわる多くの科学的研究を基に、今後の水産研究の在り方について議論を行い、科学が社会にもたらすインパクトと貢献について思考することを目的とする。

イベント概要

日時 2020/11/13(金)13:00-17:00
開催地 オンライン開催
対象 どなたでも参加いただけます
定員
参加費 無料
プログラム

開会の挨拶

13:00
渡辺 美代子(科学技術振興機構、日本学術会議 前副会長)
長野 裕子(文部科学省大臣官房審議官(研究開発局担当))

第1部 東北マリンサイエンス拠点形成事業(TEAMS)

座長:大越 和加:日本学術会議連携会員・東北大学農学研究科)
13:10 プロジェクトの設立
福井 俊英(文部科学省海洋地球課長)
13:20 プロジェクトの組織と活動概要
木島 明博(TEAMS代表機関代表・東北大学農学研究科)
13:30 震災瓦礫・環境汚染物質の長期モニタリングから見えてくるもの
藤原 義弘(海洋研究開発機構地球環境部門)
14:00 サケにとっての震災、そしてこれから
兵藤 晋(東京大学大気海洋研究所)
14:30 漁業復興支援から、環境に調和した養殖へ
原 素之(東北大学農学研究科)
15:00 水産業の持続的な発展のための海洋生態系モデリング
石川 洋一(海洋研究開発機構地球環境部門)

第2部 今後の水産研究のあり方(豊かな海へ、科学の力で)

座長:藤倉 克則(TEAMS副代表機関代表・海洋研究開発機構地球環境部門)
15:45 ベントスから見た利用と保全 
木村 妙子(三重大学生物資源学研究科)
16:00 TEAMSで生まれた新たな水産研究の萌芽をいかに育てるか?
松田 治(広島大学・文部科学省拠点委員会
16:15 水産研究の東北水産業への貢献と期待
杉崎 宏哉(水産研究・教育機構 水産資源研究所)
16:30 科学的知見の社会実装と水産業の復興
中田 薫(日本学術会議連携会員・水産研究・教育機構)
16:45 全体の総括と閉会の挨拶
古谷 研(日本学術会議第二部会員・創価大学理工学研究所)
17:00 閉会
 申込み 参加費無料、事前参加申込み必要
参加申し込み
 問い合わせ先 木島 明博(実行委員会事務局)
e-mail:agr-marin*grp.tohoku.ac.jp(*を@に変更)
備考 主催:日本学術会議食料科学委員会水産学分科会・農学委員会
共催:東北マリンサイエンス拠点形成事業(TEAMS)・文部科学省