学習と記憶
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(1)環境刺激
どうすれば脳って、もっとよく働くようになるの?
繰り返し学習すると、脳のネットワークがしだいに大きく成長するんじゃ。
 精密機械の部品を作る熟練工は訓練を続けているうちに、ただ指先で触るだけで、部品のゆがみが1ミリ以下の精度でわかるようになるといいます。
 このようなときに、脳の中では何が起きているのでしょう。
 アメリカの脳生理学者マージェニック教授は、ヨザルという猿を使って次のような実験をしました。
 大人のヨザルに、毎日小さな豆をつかませる訓練を続ける実験です。すると、脳の「体性感覚野(たいせいかんかくや)」の指や手のひらに対応する部分が大きくなったのです。
 熟練工が、すぐれた能力を発揮できるのも同じ理由からです。勉強も同じです。繰り返し脳に刺激を加えると、脳の中のネットワークが大きく育っていくのです。

どんな刺激が、いちばん脳を大きく育てるの?
多種多様な環境のほうが、脳の成長を進めるんじゃ。
 アメリカの生物学者ゲイジ博士は、ネズミで次のような実験をしました。
 一つの飼育箱は何も入れていないがらんとした環境、もう一つの飼育箱はハシゴや回り車などたくさんの遊び道具を入れた環境にして、それぞれの中でネズミを育てます。こうした中で成長したネズミの脳を調べてみると、遊び道具を入れた環境で育ったネズミの脳の「海馬(新しいことを学ぶときに使われる部分)」がよく発達していることがわかりました。豊かな環境のネズミのほうが、海馬のニューロン(神経細胞)の数が15%も多く、ニューロンの「増殖能力」も2倍以上にまで上昇していたのです。
 海馬がこのように大きくなり、活性化すると、当然学習する能力も高くなります。この結果は、ネズミが子どもでも大人でも同じように現れていました。
 つまり、多種多様な環境のほうが脳の成長をうながすということがわかったのです。
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