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「さあ、少し難しくなるぞ。
えんどう豆の場合も、ゆうき君と同じように母親と父親からゲノムを受け継いで生まれる。 この子どものゲノムの中にある花の色を決める遺伝子は、当然のことながら母親からも父親からも受け継いでいる。そこでメンデルさんは花の色はどちらか強いほうの遺伝子で決まるということに気が付いたんじゃ。
たとえると、赤い色の遺伝子はジャンケンポンのチョキ。白い色の遺伝子はパーを持っておる。母親からもらった遺伝子赤、父親のが白だとジャンケンポンで赤の勝ち。赤い花しか生まれない。しかし、ここで大事なのは赤い花が咲いても、父親から受け継いだ白い花の遺伝子があるということじゃ。」 |
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「赤い花に見えても、白い花の遺伝子も持っているんだ」 |
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「そう、そこじゃ。このえんどう豆同士をいっしょにするとどうなる。
生まれてくる子どもは、赤と赤ならあいこで赤。赤と白なら赤の勝ち。白と白だとあいこで白。赤い花同士の子どもなのに白い花が生まれてくることが見事に説明できる。」 |
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「そうか。白い花の遺伝子が赤い花のゲノムの中にかくれてたんだ。」 |
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「メンデルさんはもっと大事なことを見つけておる。
問題を出すぞ。
父親と母親からゲノムを受け継いだら子どものゲノムはいくつになる?」 |
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「二つだね。」 |
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「じゃ、その子供は?」 |
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「四つじゃないの」 |
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「これじゃと、どんどんゲノムが増えて豆の中はゲノムだらけになって、こまったことになってしまう。そこで、落第生のメンデルさんは必死に考えた。8年間、毎日毎晩悩んだとも言われておる。」 |
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「8年間もー?」 |
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「そうじゃ。そこで考えついたのが、父親と母親がそれぞれ二つずつゲノムを持っていて、どちらか一つを子どもが受け継ぐということじゃ。
そう考えると、子どもが親からもらうゲノムの数は二個になる。つまり親と一緒の数のゲノムじゃ。その子どもも、そのまた子どもも同じように二個のゲノムを持つことになる。
ゲノムの秘密も見事に説明できる。どうじゃ!」 |
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「ふーん、すごいね。メンデルさんは落第生だったんでしょ。」 |
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「教科書に書かれていることとはぜんぜん別のことを考えついたというわけなんじゃ。いまではメンデルさんの考えたとおり、わしらの持っているゲノムは二組で、親から子どもにはゲノムを半分に、つまり一個だけ伝える仕組みが明らかになっておる。
メンデルさんはえんどう豆の花の色を観察するだけで、こんなすごいことを発見したわけじゃぞ。 落第生だから出来たのかもしれんな。100年前に落第生の考えたことが、いまでは教科書になっておるということじゃの。ゆうき君は勉強がすきか?」 |
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「どうかな。生物は苦手かな。でも、メンデルさんみたいになりたいな。」 |
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「よしよし。」 |
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「うーん、もう一度家に帰っておさらいしてみるよ。
じゃ、チコさん・・・あれ?!」 |
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「またなのだ。チコは寝てしまったのだ。ごめんなのだ。」 |
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「これもゲノムのしわざなのかなー?!」 |
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「さあの、それはどうかな。 それじゃの!」 |
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「また、来るね!」 |
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「おやすみなのだ。」 |
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