学習と記憶
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(2)消えない記憶の箱
漢字を覚える記憶と、泳ぎ方を覚える記憶って
同じものなの?
記憶には、頭で覚えるものと、体で覚えるものの2種類があるんじゃ。
 記憶には、頭で覚える「陳述的記憶(ちんじゅつてききおく)」と、体で覚える「手続き記憶」(技の記憶)の2種類があります。
 むずかしい漢字を覚えたり、計算のしかたを覚えたりするのが「陳述的記憶」です。「海馬」は、「陳述的記憶」をするときに、大切な役割をはたしています。この記憶は、一度覚えても、けっこう忘れてしまったりします。
 「手続き記憶」は、自転車の乗り方や泳ぎ方などを覚える記憶です。一度しっかり覚えれば、なかなか忘れることはありません。10年間も自転車に乗らなくても体が覚えていて、ちゃんと乗ることができます。
 この2種類の記憶は両方とも、脳を使って記憶している点では同じです。

「手続き記憶」ってどこに記憶されるの?
「海馬」ではなくて、「大脳基底核」と「小脳」じゃ。
 「手続き記憶」(技の記憶)で中心的な役割をはたしているのは、海馬ではなくて脳のずっと奥にある「大脳基底核(だいのうきていかく)」と、後ろ側の下のほうについている「小脳(しょうのう)」です。
 「大脳基底核」は脳が体の筋肉を動かしたり止めたりするときに、「小脳」は筋肉の動きを細かく調整してスムーズに動くために働きます。
 私たちが一生懸命に体を動かし、何度も失敗をくりかえしながら練習するうちに、「大脳基底核」と「小脳」のニューロンネットワークが正しい動きを学び、記憶していくのです。
 こうして体で覚えた「手続き記憶」は、消えることなく、いつまでも私たちの脳に刻み込まれるのです。
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