International Cooperation for Development
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会議概要

セッション1:開発戦略と人間の安全保障

共同議長

藤田 昌久 甲南大学教授
小泉 潤二 大阪大学副学長
大阪大学グローバルコラボレーションセンター(GLOCOL)・大学院人間科学研究科教授

 人間の安全保障の概念はダイナミックな形成の途上にある。「恐怖からの自由」と「欠乏からの自由」を組み合わせる人間の安全保障アプローチは、紛争予防と開発協力のための本質要件とは何かを総合的に理解する上で役に立つ。国際協力のための新しい政策の枠組みは、最も貧しく最も脆弱な立場にある人々が経験する〈不安全〉に注意を払い理解することを基本としなければならない。持続的な発展は貧困を軽減し政治的安定をもたらす上で必須であるが、グローバリゼーションが進む現代においてはその「発展」の質自体を再検討し、個別社会それぞれに適した社会的保護の制度をつくり出し、農業と産業を結びつける実際的な開発戦略を展開することによって、政治面での安全、社会面での安全、雇用の安全、食物の安全、環境面での安全など、さまざまな局面における人間の安全保障を同時に目指さなければならない。ここでの課題とは、〈北〉と〈南〉のあらゆるコミュニティーが、ともに持続的安全と持続的発展を享受できるような未来社会のかたちを描き出すために、グローバルな次元での対話の場を構成することである。

講演者

  1. Sakiko FUKUDA-PARR
    米国 ニュースクール大学大学院教授
  2. 大塚 啓二郎
    国際開発高等教育機構GRIPS/FASID国際開発プログラムプログラムディレクター
  3. 山形 辰史
    JETROアジア経済研究所開発研究センター開発戦略研究グループ長
  4. David HULME
    英国 マンチェスター大学教授・慢性貧困研究所所長
  5. 峯 陽一
    大阪大学グローバルコラボレーションセンター(GLOCOL)准教授

セッション2: 国際開発のための科学技術

共同議長

春日 文子 国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部室長
山形 俊男 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授

 われわれの惑星、地球上の生命は、長い間地殻変動と気候変動の影響を受ける過程で、その結果としての進化を遂げてきた。しかし、近年の人間活動の爆発的な増大は、地球環境に対し、修復しきれないほどの急速な変化を与えている。今や、地球システムは、その反応としてわれわれの生命と社会が絶滅の危機に晒されるほど重大なストレスを受けている。最新の科学技術を以って自然の変化を冷静に分析し、また科学と技術に関する国際協力を通じ持続可能な世界を実現するための方策を探ることは、急務である。
国際発展のための科学と技術に関する本セッションでは、われわれの社会と健康を脅かす最近の自然の変化と、それらの脅威に立ち向かう人間の英知としての科学と技術について議論する。まず、地震災害、地球規模の気候変動、そして気候変動にも影響を受ける感染症の動向について講演いただき、それらの自然災害に対する戦略について討議する。気候変動は人間の産業活動によっても加速されると考えられるため、次の話題では中国の石炭産業と環境への影響について考察する。労働衛生は基本的に産業界の責任であるが、時には周辺の住民にも影響を与える場合もある。最後の話題では、国際的な労働衛生の現状について学ぶ。

講演者

  1. 目黒 公郎
    東京大学教授・生産技術研究所都市基盤安全工学国際研究センター長
  2. Antonio NAVARRA
    イタリア ユーロ地中海気候変化センター所長
  3. 岡部 信彦
    国立感染症研究所感染症情報センター長
  4. 堀井 伸浩
    九州大学経済学研究院准教授
  5. 井谷 徹
    国際労働機関(ILO)労働保護福祉局長

セッション3: 能力構築とガバナンス

共同議長

黒崎 卓 一橋大学経済研究所教授
末廣 昭 東京大学社会科学研究所教授

 1990年代初頭以降、国際開発協力を考える上で、能力構築とガバナンスの問題が重視されてきている。この背景には、経済や社会の発展には、地域に根ざした制度や適切なインセンティブの賦与が不可欠であるとの認識がある。持続可能な能力構築に注目するこの新しいアプローチは、開発や発展が地域のオーナーシップに基づいたものであること、国民が政府と同等のパートナーとして開発に関与することの重要性を強調する。国家、市民、コミュニティ各レベルでの能力開発はまた、今日のグローバル化の進んだ世界において科学・技術を適切に活用するためにも重要である。すなわち、効果的で持続性に富む国際協力のためには、グッド・ガバナンスに基づいた能力構築の推進が鍵となるのである。
近年、先進国、発展途上国を問わず、能力構築とガバナンス改革のための調査研究と援助プロジェクトが数多く実施され、成果を挙げてきた。これらから得られる知と教訓を共有し、今後の国際協力に役立てるための政策面、学術研究面両方でのインプリケーションを引き出すことが、本セッションの目的である。
セッションの最初の2報告では、経済発展における分権化と地方政府の役割について議論する。それぞれパキスタン(Sarfraz K. QURESHI報告)と中国(袁鋼明報告)の事例が中心となるが、共通の論点として、国家、市場、制度、コミュニティそれぞれの能力の限界が制約条件となることが示される。この能力の限界を克服するための方策について考察するのが続く4報告である。国際協力機構(JICA)の経験に基づいた、能力構築とガバナンス改革にむけた様々なアプローチの展望(桑島京子報告)に始まり、タイにおけるNGOを活用した社会投資基金計画(SPFプラン)によるコミュニティ開発の事例(重冨真一報告)、政府の監視能力を高め、コーポレート・ガバナンスを改善させたタイの金融改革の事例(Kanit SANGSUBHAN報告)、アジア諸国に対する日本の技術協力による法制度支援の事例(島田弦報告)が議論される。

講演者

  1. Sarfraz Khan QURESHI
    パキスタン Innovative Development Strategies社CEO
  2. 袁 鋼明

    中国社会科学院経済研究所教授

  3. 桑島 京子

    国際協力機構(JICA)社会開発部第一グループグループ長

  4. 重冨 真一

    JETROアジア経済研究所地域研究センター主任研究員

  5. Kanit SANGSUBHAN

    タイ財務省財政政策研究所所長

  6. 島田 弦

    名古屋大学大学院国際開発研究科准教授

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