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会議概要

会議概要

 今日、世界は極めて困難な課題に直面している。気候変化に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は、世界的な温暖化などの気候変化が驚くべき速度で進行中であり、しかもその最も重要な原因が、人類の活動――化石燃料の燃焼によって発生する温室効果ガスの大気への放出――であることを明確にした。もし温室効果ガスの放出を減らすために徹底した方策が直ちに取られるのでなければ、気候変化の影響は甚大なものとなろう。人類社会にとっての脅威はこれ以外にも存在する。地震、津波、台風、火山噴火などの自然災害は、特に大都市に重大な被害をもたらしている。また、飲料水や化石燃料は近い将来不足する恐れがある。これまでうまく働いていた社会や経済の仕組みが、深刻な制度疲労や機能不全の兆候を示している。これらのさまざまな問題は全世界的に起こっているが、その悪影響はしばしば発展途上国に対して集中的に現れることが多い。

 こうした状況下で、グローバル化した21世紀の世界が取り組むべき最も重要な問題は、持続可能であり、かつ世界の各地域に対しても異なる世代間でも衡平なやり方で、人類が発展を継続できるための方策を見出すことである。持続可能な人類社会の発展を図る上で重要な問題点の一つは、先進国と発展途上国の間での国際開発協力であろう。言うまでもなく、人文科学、社会科学、自然科学の各分野は補い合うように協力して、これらの問題に対する解決策を考えるという重要な役目を果たすべきである。

 これらの問題に対する方策を検討するために、日本学術会議は「持続可能な社会のための科学と技術に関する国際会議」を毎年開催してきた。これまでの4年間では、この会議はEnergy, Asian Megacities, Dynamism in Asia, Global Innovation Ecosystemを主題に取り上げた。今年の会議は国際開発協力に焦点を当てて9月7日と8日に東京で開催される。この会議の目的は、優れた研究者の参加を求めて問題点を取り上げ、科学の側からこの問題の解決策としてどのような貢献をできるかを検討することで、今日の世界的な課題に対応する戦略や方法を見出すことである。

 2人の高名な研究者――ケンブリッジ大学フランク・ラムゼイ記念経済学教授のサー・パーサ・ダスグプタおよび国際開発高等教育機構顧問の速水祐次郎教授――によって基調講演がなされる。このほか、国際開発協力に関わるさまざまの問題を議論するために、(1)開発戦略と人間の安全保障、(2)国際開発のための科学技術、(3)能力構築とガバナンス、の3つのセッションが設けられている。詳細は各セッションごとに述べられていが、これらの問題に取り組んでいる著名な専門家たちの参加を仰ぎ、現在の状況、現実問題に取り組んで得られた知識、現状を改善するための提案などについて議論する予定である。この国際会議における議論から、政府当局やその他の機関が国際協力を効果的に実施するために役立つ提言にまとめられることを期待するものである。

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