学習と記憶
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(2)大人の脳の柔軟性
大人になっても、脳には柔軟性があるの?
あるんじゃよ。脳の病気で言葉を失ったものの、リハビリによって回復した大人の例を紹介しようかの。


 ドイツに住んでいる中年男性のBさんは、となりの人の家に招かれて楽しく話をしている最中に、突然体調がおかしくなり、意識を失ってしまいました。目が覚めたときは病院にいて、医師たちに取り囲まれていましたが、彼らが話していることがまったく理解できません。しかも、自分から言葉を話すこともできなくなっていました。
 普通、私たちが言葉を聞いて理解したり、話したりするとき、左脳の「言語野(げんごや)」とよばれる部分を使っています。Bさんは、脳卒中(のうそっちゅう)で左脳の言語野をやられてしまったのです。
 その後Bさんは、一生懸命にリハビリを行い、ついに言葉を取り戻しました。
 Bさんは、どうして言葉を取り戻すことができたのでしょう?

 Bさんの脳を調べたところ、左脳の言語野の機能を、なんと右脳が肩代わりしていることがわかりました。左脳にある言語野が、右脳に移動していたのです。
 Bさんのケースは、大人の脳でもニューロンネットワークが組み変わることができることを示しています。

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