循環型社会について
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循環型社会
博士 落ち葉だけではない。水だって都会の中ではずいぶん違った扱いを受けておるんじゃ。山では雨が降ると、腐葉土がやわらかく雨を受け止める。木の根っこが水を吸い込み、たくさん雨が降ってもゆっくりと地下にしみ込んでいく。直接山の表面を水が流れていくのはよほどの大雨のときじゃ。
都会では
ゆうき 都会じゃ雨が降ったら水溜りがすぐにできるよね。
りか 道路が川みたいになったり、排水溝が詰まったり、あふれた水で車が通れなくなったりするわよね。
博士 都会も遠い昔は自然と一緒に循環するような仕組みを持っていたんじゃ。雨だって最初は地面にしみ込んでいく。それが地下水になって雨が降らずに日照りが続くようなときには地面に向かってしみ出してくる。誰が作ったわけでもないのに、自然に出来上がった仕組みは循環することで、すべての命を育むことができるのじゃ。
   
自然のしくみでは
りか でも人間だって都会の中でいろいろな仕組みをつくっているでしょ。
都会では
ダムと水道
地下水と井戸水
都会のごみ
 
大雨
微生物誕生
博士 確かにそうじゃ。じゃが、例えばコンクリートやアスファルトで地面を覆ってしまっておるじゃろ。住宅にしても庭のある家がめっきり少なくなった。事務所も住宅もみんなコンクリートでできたビルになってしまった。雨が降ったら地面にしみ込む隙間がちょっぴりしかない。
ゆうき 山道みたいに泥んこになったりしなくてすむけど、大雨だと困っちゃうよね。
博士 地面が水を吸い込む代わりが必要じゃ。そこで、コンクリートで排水溝を作ったり下水道を作ったりすることになる。すると、せっかく降った雨は直接川や海に流れていってしまう。つまり、地下水にはならんということじゃ。
りか 昔は何日も雨が降らないとお祈りして雨が降るようにお願いしたのよね。
ゆうき あまごいとかいうんだよね。
博士 都会では雨を川や海に流す代わりに、水道を引いておるわけじゃ。遠く離れた山にダムを作って、ダムにたまった水を利用しておるわけじゃ。山に水不足が起きるとどうじゃ。当然、ダムの水はかれてしまう。都会に雨が降ってもみんな流れてしまう。都会では雨が降っても水不足。不思議なことが起きてしまうのじゃ。
ゆうき おじいちゃんに聞いたんだけど、僕のうちにも昔は井戸があって、水不足のときは近所の人に水を配ってあげたこともあるんだって。
りか 雨が地面にしみ込んで、地下水になっていたから、雨が降らなくても井戸はかれなかったのね。
博士 そういうことじゃな。山の上でも、今は都会になってしまった平野でも、雨が地下にしみ込むことでゆっくりと循環しておったのじゃ。大量に降れば川の流れとなり、海へと下る。それがまた、雨になって地上に降り注ぐ。何万年、何億年という地球の歴史の中には大雨や長い日照りの続く時代もあった。じゃが、草や木などの植物、それを餌にする昆虫や動物が生き延びてきたのは、水の循環する仕組みがあったからなんじゃな。
りか 私たちは下水道や水道を作ってずいぶん無理をして都会に住んでいるのね。
ゆうき そうだよね。都会と山や森の間では同じように見える木が全く違う仕組みで生きてたりするし、水だって全然違う仕組みで流れてるんだ。
博士 きれいに見えるビルや道路でも、作り直そうとすると大変じゃ。
ゆうき コンクリートやアスファルトがみんなごみになっちゃうね。
りか 自然みたいに、壊れたものが腐ったりしないから、どっかに運んで捨てなきゃいけないのよね。
博士 テレビや洗濯機、冷蔵庫なんかの電気製品も同じじゃ。壊れたり、使わなくなったりすれば、そのとたんにごみになってしまう。放ったらかしにしておいてなくなるなんてことはないんじゃ。
りか 食べ物だってそうよね。食べ残しはみんなごみになってしまうわ。
りか 僕の好きなゲームやパソコンもすぐに古くなっちゃう。
博士 問題になるのは、ごみばかりじゃない。例えば、車。ごみにならなくとも、走ればガソリンを使う。使うということは、石油や石炭をどんどん使うってことじゃな。電気だってそうじゃ。テレビや冷蔵庫を使うために、火力発電所や水力発電所、原子力発電所でもどんどん電気を作らなくちゃいけない。つまり、都会ではエネルギーをたくさん使っているということじゃ。
りか でも、エネルギーは使っちゃうとなくなってしまうわけでしょ。
博士 そうじゃ。石油や石炭は遠い遠い何億年という昔に生きていた動物や植物が元になってできたものじゃ。恐竜の化石と同じように深い地層の中に眠っておる。じゃから化石燃料とも呼ばれておる。
ゆうき 石油からはプラスチック、繊維それと車、飛行機などの燃料も作っているでしょう。世界中であわせたらすごい量になるよね。
りか やっぱりなくなりそうよね。
博士 いろいろな説はあるが、21世紀の半ばくらいには石油が底をつくという専門家もおるの。天然ガスの量は石油よりも多いというデータもあるから、すぐに燃料がなくなってしまうという心配はないと思うがの。
ゆうき 燃料があるんだったら、いまと同じように暮らしていくこはできるのかな。
博士 んー、それはどうかな。鉄やアルミニュウム、銅などの金属も、車や電気製品、ビルなどを作ればどんどんなくなっていく。思い出してごらん。鉄の原料になる鉄鉱石だって生物が作り出したものなんじゃ。何十億年という長い循環のなかでできたものを、人間が勝手に使っておる。
ゆうき 循環の仕組みを人間が壊しているんだ。
りか 使った分だけ元に戻してあげなきゃいけないのにね。
博士 今までは地球が大きくて、人間なんかちっぽけなもんだと思っておった。しかし、こんなに人間がたくさんになって、生活もどんどん便利になってみるとどうじゃろ。大きく見えた地球が、繊細な仕組みを持つ壊れやすいものであることがあきらかになってきた。人間がどんどん石油や鉄などの資源を使っていくと、繊細な仕組みが壊れて、地球の体力が落ちていくことがはっきりしたんじゃ。
ゆうき やっぱりこのままじゃいけないんだ。
博士 りかちゃんやゆうき君の子供の時代、孫の時代、もっと先の時代、君たちの子孫の時代ということになるが、石油も資源もないことになったら大変じゃろ。
ゆうき そうだよね。新しい車もできないし、もちろん新しいゲームも楽しめなくなってしまう。
りか お人形もだめでしょ。女の子があこがれるウェディングドレスも作れなくなったら困るわ。
ゆうき りかちゃんの子孫は僕の子孫かもしれないし、真剣に考えなくちゃ。
りか ゆうき君はちょっと気が早いと思うけど、考えなくちゃならないのは本当よね。
博士 わかってきたかな。自然の持つ循環の仕組みを、人間の持つ仕組みの中にも取り入れようといのが循環型社会の基本的な考え方じゃ。詳しく説明したいところじゃが、もう暗くなってきたの。また今度にしようかの。
   
   
   


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