学術の社会的役割
委員会名  学術の社会的役割特別委員会
報告年月日  平成12年6月26日
議決された会議  第936回運営審議会
整理番号 17期−66

作成の背景  

今日学術は知的体系の創造・伝承という固有の使命を超えて,人々に「行動規範の根拠」を提供するなど,社会に「開いた学術」であることを求められている。日本学術会議では,この要請に応え,「俯瞰的な科学的知見を行政や社会に提供する」ことを主軸に「自己改革」の実施を声明した。この報告は,現代における「学術の社会的役割」を多面的に省察し,また多様な社会的取組の経験を総覧して,学術と社会の新しい相互関係のあり方を示すことを課題とする。

現状及び問題点  

現代では,学術とくに科学技術の圧倒的な成果が社会の隅々にまで浸透し,同時にまた,核兵器,地球環境問題,クローン人間誕生の不安など,困難な問題を生起させることになって,学術に対する人々の期待と不安が高まっている。科学者が社会の負託を受け,社会に対する説明責任を負うという「負託自治」の理念と倫理が重視され,専門家・細分化が著しい学術の在り方の反省が提起された。また,市民や政府に「行動規範の根拠」を提示するという学術の新しい役割に関連して,科学と実践との関係があらためて問われている。

改善策・提言等

1. 俯瞰型研究プロジェクトの本格的な推進。
実践的・課題的専門化,理論的・領域的総合化を目指す俯瞰型研究様式の推進は,領域を越えた「広域の俯瞰」のほか「本質の俯瞰」,「負の効果への挑戦」を可能とし,「負託自治の実践」に不可欠な課題である。
2. 基礎研究の重視
俯瞰型研究プロジェクトを振興する日本学術会議は,「俯瞰型」の長所である「負の効果」への予測的警告者の立場からも,基礎研究の重視を推進課題とすべきである。
3. 教育の再構築
「俯瞰」する視点は,研究だけでなく,「俯瞰的な教育」の問題としても注目され始めた。「科学立国」「教育立国」の危機は,「科学者の代表機関」である日本学術会議として座視し難い事態である。危機意識とそれを反映した教育改革プログラムが必要とされている。

報告書原文
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1.学術の現代的使命2.俯瞰型研究プロジェクト3.本質の俯瞰4.文科系基礎研究の現代的意義5.俯瞰型教育


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