化学の将来構想
委員会名  化学研究連絡委員会
報告年月日  平成11年11月29日
議決された会議  第929回運営審議会
整理番号 17期−19 

作成の背景 

 第13期日本学術会議、化学研究連絡委員会では化学の将来構想:「全国的視野に立つ化学の新しい研究体制について」をとりまとめた。それから約10年が経過した。この間、化学を含む学術情勢は大きく変化した。この状態をふまえ第16期化学研究連絡委員会は、化学の今後のあり方を広い観点から再検討することが緊急の課題であると判断し、「化学将来構想小委員会」を設置して化学の将来構想をとりまとめることとした。

現状及び問題点

 最近とみに化学周辺分野、特に生物学や材料科学の発展が著しい。来世紀もこの傾向は継続するものと思われる。この事実は、基礎科学としての化学の役割の重要性を物語っている。
 周辺領域との共同研究を推進することは云うまでもなく、
 @それらを支える基礎科学としての役割を見失ってはならない,A従来の研究・教育体制に適切な検討を加えこれを一層堅固でしかも柔軟性に富むものにするよう努力を惜しんではならない,さらに、B社会との接点にも充分な気配りをして基礎学問としての一貫性を堅持するとともに時代の要請に的確に答えていかなくてはならない,など課題は多い。

改善策・提言等

1. 研究体制
 分子科学研究所に続いて錯体、基礎有機、高分子等の大学共同利用研究所設置に向けて一層の努力を重ねるとともに、分子科学研究所に広く化学全体に対する機能的役割を期待する。一方、大学学部、大学院に対して、少子化等の社会構造の急速な変化、限られた資源の有効利用等を念頭においた抜本的な改組を示唆する。基礎学問としての化学の研究には助手を含む若手研究者の確保等基本的な諸条件の充足が不可欠である。
2. 研究環境
 研究費における主要な問題点は配分方式と評価である。化学にとって、さらに重要で緊急な課題は施設である。研究環境の最大の問題といっても過言ではない。
3. 教育
 知識偏重教育の弊害を認識し適正な修得を図ること、また初中等教育における理科担当教師の資質を格段に向上すること、高等学校の課程から入試試験による過剰な圧力を除去しその本来の役割を担保すること。
 大学学部では、リカレント教育等学生の多様化に充分対応した体制が不可欠で、その状況をふまえて大学院の体制を構築しなければならない。博士前期(修士)課程のカリキュラムを一層整備することが喫緊の課題である。専門の教育と同時に広い視野、柔軟な思考力が求められる。
4. 人類社会と化学
 化学の成果が社会の中に一層広く深く取り込まれる。化学についての正しい理解を一般社会人に徹底し、環境・安全の保持を図ることは化学者の重大な責務である。

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化学の将来構想リカレント教育等学生若手研究者養成、教育研究環境、 化学士、
化学教育、人材育成、 研究環境、 理科離れ、 環境ホルモン、 オゾンホール、
教官団、 流動教官

関連研究機関・学協会
分子科学研究所、錯体化学研究所、基礎有機化学研究所、日本化学会




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