Q&A

カミオカンデの核子崩壊実験とは?

カミオカンデは,陽子の崩壊という事象を観測することを第一の目標として,1983年に建設された。
その後,陽子崩壊の観測は続けつつも,装置には改良が加えられ,宇宙から降り注ぐニュートリノを検出することも可能となった。
1996年には,蓄えておく水の容積が10倍になるなど大きくパワーアップし,スーパーカミオカンデと名前を変えた。
この18年間,カミオカンデまたはスーパーカミオカンデは,ずっと陽子崩壊を示すシグナルを待ち,探り続けてきた。
しかし,いまだに陽子が壊れたとする実験結果は出ていない。
もし発見できれば,世界で初めての快挙となる。

陽子が崩壊するということは,陽子の寿命が有限であることを意味している。
つまり,陽子は安定に存在しているのではなく,しばらくすると別の粒子に分裂するというわけだ。
例えば,陽子が崩壊して,パイ中間子と陽電子(電子の反粒子)が生まれたり,中間子とニュートリノが生まれたりする。
しかし,陽子が崩壊する現場に立ち会うことは,まずないと言えよう。
なぜなら,その寿命が桁違いに長く,私たちの寿命はもちろん,その私たちが住んでいる宇宙の年齢よりもずっと長いからだ。
実際,陽子の寿命は 1032(=10の32乗)年以上だと考えられている。この寿命が 1032 年という陽子が崩壊する瞬間を見たければ,1032 個の陽子を集めてくればよい。そうすれば,1年に1事象の割合で陽子の崩壊が観測できるはずだ。

18年間も稼動している(スーパー)カミオカンデを使ってみても,まだ発見できないということは,陽子の寿命がもっと長かったのか,さもなければ,最初から陽子は崩壊しないということを示唆する。
世界で最も気の遠くなるような実験であることには違いないだろう。

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星の一生について教えてください。

星が星間物質のガスを集めて,次第にその質量が増大すると,その重力によって,星の内部が高密度で高温高圧になり,まず水素と水素からヘリウムを生成する核融合が点火して星が誕生する。誕生した星は,その質量によって異なる寿命の間,水素の核融合反応で光り続ける。
その後は,燃料となる水素が無くなると,今度は核融合反応で出来たへリウム同士が核融合を起して,炭素を生成する。
その次はネオン,酸素,シリコンというように,次々と核融合反応を繰り返し,最後は最も安定な原子核である鉄のコアができるまで,核融合反応が繰り返される。

これ以上は核融合は進展しないが,大量の質量のため,重力による収縮が急速に進む。この過程で,原子と原子が押されて超高密度状態となり,原子核の回りにある電子が原子核の陽子に捕獲され,陽子が中性子になる反応が進み,中性子過剰の原子核がつくられる。
さらに収縮すると原子核が溶解して,中性子,陽子,電子などから成る流体の状態となる。
このように,星の内部の鉄のコア部分が中心に向かって急激な重力崩壊を起し,重力エネルギ-が解放され,コアの回りの物質を吹き飛ばす爆発が起こる。これが超新星爆発であり,星の進化の最後である。

爆発の後には,元の星の質量に依るが,中性子星やブラックホ-ルが残がいとして残り,周りの物質は宇宙空間に放出され,また,別の星を作る材料物質となる。また、この爆発の瞬間に,種々の反応によって大量のニュ-トリノが放出される。
超新星爆発は,天体望遠鏡による光での観測とともに,このニュ-トリノが実際に観測されたのは,1987年2月23日の大マゼラン星雲の中の超新星1987Aが初めてだった。

岐阜県神岡町にある東京大学の宇宙線研究所の施設:カミオカンデがその観測に成功し,世界から注目された。

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宇宙線って何ですか?

宇宙線とは,宇宙空間に存在する高エネルギ-の放射線のこと。宇宙線に関する研究は幅が広く,その起源,エネルギ-,種類などを調べることは,宇宙そのものを研究することに繋がっている。

われわれが地球上で観測したり,日常浴びている宇宙線は,宇宙空間から飛来する多種多様な放射線粒子が,地球の大気や地球の地殻と相互作用した結果の粒子である。天空からやって来る宇宙線(一次宇宙線)は,まず上層の大気にぶつかり,空気中の窒素や酸素の原子核に衝突し,陽子,中性子,パイ中間子,ミュ-粒子など多数の二次粒子(二次宇宙線)を発生させる。この粒子がまた,大気の窒素や酸素の原子核と次々と衝突し,多数の粒子を発生させ,エネルギ-の高い一次宇宙線ほど,多数の二次粒子を発生させる。

加速器が発展する以前の時代には,この宇宙線が,高いエネルギ-の素粒子反応を研究する手段であったが,今日では,超高エネルギ-の粒子を加速器から得られるようになったため,そのような研究はあまり行われなくなった。それよりも,宇宙線自身の研究が,宇宙物理との関連で,幅広い研究分野と関わりをもって研究されている。

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