化学者からのメッセージ
委員会名  化学研究連絡委員会
報告年月日  平成15年6月24日
議決された会議  第995回運営審議会
整理番号 18期−26

作成の背景

 化学は物理学、生物学と並ぶ基幹的科学であり、その健全な発展がなければ、科学全体の進歩はありえないし、人々の福祉の向上も望めない。環境問題を解決するための重要な手段を提供するのも化学的知識である。
 化学的知見に基づく新技術の開発は、これまで多くの面で人類の福祉に貢献してきた。たとえば、空中窒素を化学的に固定する技術がなければ、農業生産の増加はなく、60億人を超える地球上の人口を養うことはできない。また、医薬品の発展がなければ、病気からの解放は考えられない。
 資源に乏しいわが国は、科学技術基本法に謳われているように、科学技術創造立国を基本方針として進むほかに道はない。化学を含めて、わが国の科学技術の水準を高く保ち、有能な人材を養成し、技術革新を通じて持続可能な発展を図り、世界に貢献しなければならない。

現状及び問題点  

 わが国における化学研究の水準は、3年続けてのノーベル化学賞受賞に象徴されるように、世界的にみても高い。しかし、教育、研究の多くの面において、わが国の化学関係の現体制と環境はいまだに多くの問題を抱えており、欧米における水準をかなり下回っている。今後の国際競争において不利になる面が多く、大幅な改善が必要である。
 最近は、国立大学の法人化問題を始めとして、わが国における大学制度の根幹に関わるような検討が進行している。これまでの体制のうちでも、良い面は残されなければならないが、このような変化への機運が熟している時機は、今までできなかったような改革を進めるチャンスでもある。
 われわれは、化研連において、現在の大学における教育・研究における問題点を討議し、その解決策を検討した。われわれが直面する問題のなかには、われわれ化学関係研究者、技術者の行動によりある程度解決し得る問題と、外部的な理解がなければ解決できない問題がある。化研連ではその検討結果を「化学者からのメッセージ」として発表することにした。

改善策・提言等

 第1部では、立法、行政機関に対する提言を「政府へのメッセージ」としてまとめた。また、一般社会の理解を求めるアピールは第2部「社会へのメッセージ」として整理した。さらに、化学者および化学関係産業人に向けて「化学者、化学技術者へのメッセージ」をまとめた。
 この報告は、化学者の立場から見た現状の問題点を指摘し、一部の問題について改善を提案したものである。ここの内容についての検討には不十分な点が残っているが、ここで扱っている事項は、化学特有の問題のほかに、化学他分野にとっても共通の問題を多く含んでいる。他の研連および日本学術会議以外の諸組織がこのメッセージを受け、それぞれの問題点の改善を考慮されるよう希望する。

報告書原文  全文PDFファイル(6202k)

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1.米国の大学への寄付総額−25兆円2.奨学金と留学生3.初等中等化学教育からイオンがなくなる
4.日本の化学の水準5.人間生活に対する化学の貢献

関連学会など
各省庁、日本化学会ほか化学関連学会


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